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(左から順に)
経営企画室 清原 里菜(きよはら りな)
東京国立博物館 参与 工藤 拓真(くどう たくま)
国際部 国際交流課 ミウォシュ・ヴォズニ
創立154年目を迎えた東京国立博物館では、現在リブランディングを進めています。なぜ今、リブランディングなのか。そして未来に向けてどんなパーパスをつくろうとしているのか。昨年から続く職員へのヒアリングやワークショップ、分科会での議論を通じてみえてきた課題や可能性について、3名が語りあいます。
リブランディング:社会の変化にあわせて組織の価値や魅力を再構築する取り組み
パーパス:組織が存在する意義や社会に果たす役割を示すもの
分科会:部署横断で構成されたリブランディングを検討するチーム
- なぜ今 リブランディングなのか
その背景と課題意識とは -

工藤 東京国立博物館のリブランディングを考えるにあたって僕が職員の皆さんとお話しして感じたのは、一般的な企業や組織と比べると、長い歴史のなかで当たり前のように存在してきたことで、「変わる」という感覚が持ちにくい、むしろ「変えたらいけないのではないか」という意識のほうが大きいという印象でした。
清原 私も「当館は外を向き切れていないのではないか」と感じることがありました。展示をご覧いただいた先に、どうなってほしいのかという視点がみえにくく、収集する、展示する、守る、ということだけではなく、今回のリブランディングでさらに一歩踏み込んで「当館は人々に、社会に何を提供していくのか」を考えていく必要があると思っています。
ヴォズニ そうですね。世界的にみても博物館や美術館は開かれた場所になってきていますが、当館はまだ美術や歴史に詳しくないと入りづらいイメージがあります。もっと開かれた場所となり、多様な人々が楽しめるようになれば、社会における価値も上がる。社会に求められている組織にならないと、存在し続けることが難しくなりますよね。そういう意味でもリブランディングは当館にとって絶対に必要だと思います。
工藤 国際社会における日本のポジショニングも、経済で世界上位にいた頃とは違ってきているので、博物館や美術館、日本の文化や歴史が背負うものも相対的に大きくなっています。このタイミングで東京国立博物館がリブランディングをする意味のひとつには、そういうこともあるのではないかと思います。国内外から来館された方に、「さすが日本だ」「日本ってすごい!」そんな感動をいかに伝えていけるか。そこが5年後、10年後に試されますね。
- 調査や議論のプロセスを通じて
何がみえてきたのか -

ヴォズニ 最初の頃の分科会では、「東京国立博物館とはどういうところか」を話していましたが、そこにこだわると現状維持になってしまうことに気づき、工藤さんからのアドバイスもあり、私たちが何者であるかではなく、これからどう変わっていくべきか、「進化へのアクションを起こすパーパスをつくろう」と方向転換しました。
清原 確かに、議論のなかではどうしても歴史や収蔵品数が当館の強みだという話に終始しがちで、これにとどまらない当館の価値をみいだし、共有することには難しさがありました。ただ、職員の皆さんがそれぞれ「こういう理由で私は東京国立博物館が好き」としっかり考えを持っていて、それは当館のとてもいいところだということにあらためて気づかされました。
工藤 そうですね。ピュアに作品が好きという方が純度高くいることこそ、強みだと思います。というのも、伝統と革新という言葉がありますが、今残っている作品はできた当時は「革新」で「ぶっとんだもの」であったはずで、職員の皆さんはそうした作品が好き、つまり本来イノベーティブなことが好きということですから、「作品を愛する気持ち」と「どう変えていくのか」はじつはかなり近いところにあると思うのです。それがこれからもっともっと近づいていくことで、よりアクティブな進化につながっていくのだろうなと皆さんの議論をお聞きしながら感じていました。
- パーパスについてのこだわりと
未来に描く想い -
ヴォズニ 海外の博物館・美術館のパーパスは長い文章ですが、当館のパーパスはもっと簡潔で、オリジナリティがあってキャッチコピーとしても響くようなものにしたいと考えました。でもとても難しく、工藤さんと一緒に必死に考えているところです(笑)。

清原 入りづらい、敷居が高いといった声に対して、社会に対して何ができるのかを伝えるパーパスをつくって公開することで、当館のこれからの姿勢を表明したいです。そのためには皆が反対しない見解にまとめるのではなくて、博物館は何のためにあるのかとか、なぜ大事なのかを突き詰めてさまざまな異なる意見を集約していくことが鍵かなと思って取り組んでいます。
工藤 東京国立博物館のこれからを言語化する難しさ、ですね。そうして無事にパーパスが決まった後にも、ヴォズニさんや清原さんたちには各部署に広げていく役割もあると思いますが、今後何かを実施する過程で迷った時に、パーパスが判断基準に資するかがポイントですね。「私たちこうやって決めたよね、だったらこうやるべきだよね」という基準になっていることが、パーパスが絵に描いた餅ではなくしっかり現場に根づいている状態だと思います。
清原 そうですね。新たな取り組みをはじめる時にパーパスの要素を入れるとか。数か年計画をつくる際にパーパスに合致した内容かチェックしていくことができればいいなと思っています。
ヴォズニ 私は、来館者と非来館者が何を求めているか、どのような価値を提供すれば社会にとってもっと意義ある存在になれるかを徹底的にリサーチして、それをベースにパーパスに照らした戦略をつくるようなこともしていきたいなと考えています。
工藤 外野席にいる僕がみても、東京国立博物館は今こんなにもさまざまな変化があるのかと驚くほどなので、組織のなかではそれに伴うご苦労も非常に多いと思います。変化への恐怖も高まってくるでしょうが、これからも積極的により多くの議論を続けていくことで、変化を止めることなく進んでいけるのではないでしょうか。来館者の皆様には「これからの東京国立博物館にぜひ注目してください。大いに期待してください」といいたいです。僕自身とても期待しています。