五彩鳳凰文皿

五彩鳳凰文皿

五彩鳳凰文皿(ごさいほうおうもんさら)

中国・漳州窯 明時代・17世紀 横河惇氏寄贈

鮮烈な赤が映える鳳凰文皿、

新たに当館のコレクションへ

  • 本館D・E室
  • 10月20日(火)~11月29日(日)

 特集「令和7(2025)年度新収品」では、令和7年度に新たに当館のコレクションに加わった文化財のうち、寄贈品、および購入品のなかから主だったものをご紹介しています。

 「五彩鳳凰文皿」は、径22センチメートルほどの、シンプルな丸い平皿です。見込みには、中央に片足で立つ1羽の鳳凰が、そのまわりには太陽や牡丹(ぼたん)の花、竹、雲などがのびやかに描かれています。絵付けは鮮やかな赤色が中心で、緑と藍色を用いて部分的に色を添えています。

 本作品は、明時代の末、17世紀に現在の中国福建省(ふっけんしょう)南東部に広がった漳州窯(しょうしゅうよう)で焼かれたものです。この地域では、明時代に世界各地へ輸出され、一世を風靡(ふうび)した景徳鎮窯(けいとくちんよう)の模倣品が量産されました。現在の江西省(こうせいしょう)北東部に位置する景徳鎮窯は質の高い白磁の生産でしられていますが、漳州窯の製品は白磁ではなく、鉄分や夾雑物(きょうざつぶつ)を含んだ灰茶色の素地に白い釉薬(ゆうやく)をたっぷりかけており、器に厚みがあって手に取るとずっしりとしています。絵つけも、文様の配置や構成、モチーフは景徳鎮窯の製品に共通するものですが、緻密で精確な表現の景徳鎮窯器と比べて、自由で豪放(ごうほう)大胆な筆遣いにより親しみやすい印象を受けます。

 日本では江戸時代以来、この種の器を「呉州(須)手(ごすで)」とよんできました。「呉州」とは一説に、現在の江蘇省(こうそしょう)あたりに位置した古い国名の「呉」に由来し、南方を意味するものといわれます。日本に伝わった呉州手には、本作品のように懐石(かいせき)に用いられる組物の皿や径40センチメートルほどの大皿のほか、鉢、壺、花入、小さな香合(こうごう)など、さまざまな種類をみることができます。本作品の縁にみられるように、赤く塗りつぶした丸文が配されたものは「赤玉(あかだま)」とよばれて、特に珍重されました。ベンガラ(酸化鉄 さんかてつ)による赤い上絵具の発色は力強く鮮烈であり、江戸時代の日本人の目にも魅力的に映ったことでしょう。

 この皿は、当館を代表する東洋陶磁コレクションの寄贈者としてしられる建築家横河民輔(よこがわたみすけ 1864~1945)の旧蔵品です。茶の湯をたしなんだ下枝(しずえ)夫人のために、手元に残しておいたものとみられます。このたび民輔の孫にあたる惇(じゅん)氏によって寄贈され、世界に誇る横河コレクションに加わることになりました。

工芸部門陶芸班 三笠景子(みかさけいこ)

ワンポイント解説
新収品とは?
新しい収蔵品のこと。
東京国立博物館のコレクションは、寄贈や購入によって一年一年進化をとげています。