• かえるの合唱(がっしょう) 針谷絹代作
  • 平成12年(2000)高円宮コレクション
  • 展示期間:10月27日(火)~2027年1月24日(日)
本館 高円宮コレクション室根付 高円宮コレクション
本コーナーでは、読者の皆様から寄せられたお気に入りの作品を取り上げて、担当研究員が解説します。
今回は「根付 高円宮(ねつけたかまどのみや)コレクション」。
「作品一つひとつにストーリーがある」「超絶技巧でつくられた小さな世界の美しさに魅せられる」「古いものも新しいものも、それぞれのよさがある」など、根付の世界のとりこになってしまったファンも多い人気のコレクションです。

福島 修(ふくしまおさむ)

列品管理グループ 登録チームリーダー(工芸部門漆工班)

「高円宮コレクション」をみて、私ははじめて「現代根付」なるものの存在をしりました。根付には国宝もなく、広く認知されている分野とはいえません。当館の展示室で私と同じように根付の存在をしり、その造形に魅せられる方々が増えるとうれしいです。

 江戸時代初め、巾着や印籠(いんろう)などを着物の帯から提げるスタイルが流行しました。この提げ物の紐に取りつけて、帯に留めるための道具が「根付」です。明治になってからも一部の作家たちは制作を続け、1970年代頃にはそれらが「古根付」の模倣ではなく、現代の独立した作家が生み出す「現代根付」であることが意識されるようになります。

 当館の高円宮コレクションの根付は、故・高円宮憲仁(のりひと)親王殿下が収集された現代根付を中心とするコレクションです。もともとは、久子(ひさこ)妃殿下が学生の頃に海外の美術館で根付をご覧になって関心を持たれ、のちに妃殿下が憲仁殿下を根付の店へお連れしたことがはじまりとお聞きしています。憲仁殿下は収集だけではなく、根付師のところへ足を運び、時に課題を与えることで、根付の発展を支えてこられました。根付師の側でも両殿下をモチーフとした作品を制作しており、右上の「かえるの合唱」では、中央で冠をかぶっている蛙が憲仁殿下、裏側で舌を出しているへびは巳年の妃殿下をイメージされているのだそうです。これについて、妃殿下は「へびはかえるをたべちゃうから」と楽しそうに笑っていらっしゃいました。色漆塗りで、かえるの目は螺鈿(らでん)細工。白漆の使用は現代根付ならではですね。ちなみに、かえるは77匹いるらしいです。私も数えてみましたがいつも途中でわからなくなってしまいます。

 根付は、江戸時代に練り上げられた庶民感覚の発露です。神話からかえるまで、何でもかんでも造形化されるので、芸術性と諧謔(かいぎゃく)を織り交ぜた底のしれない豊かさがあります。特に現代根付は、古根付の「ひねり」に現代の感覚が加わり、身近に感じられるところが魅力です。タイトルをみて「なるほど!」と気づかされるのもおもしろいです。ぜひ肩の力を抜いて楽しんでいただけたらと思います。

  • 仁王鬼角力木彫彩色根付(におうおにすもうもくちょうさいしきねつけ) 線刻銘「法橋宝山作」
  • 江戸時代・19世紀 郷誠之助氏寄贈
    本館20室
  • 展示期間:展示中~11月29日(日)
  • 仁王と鬼が相撲をとっているユニークな作品。高さ15センチメートルと根付としては大きめではあるものの、等身大の彫像のような迫力とスケール感です。双方譲らず、グっと力の入った表情や張り詰めた筋肉、息づかいまでも聞こえてきそうな臨場感が、みごとに表現されています。