• 青森県つがる市木造亀ヶ岡出土
  • 縄文時代(晩期)・前1000~前400年
  • 通年展示
重要文化財遮光器土偶
本コーナーでは、読者の皆様から寄せられたお気に入りの作品を取り上げて、担当研究員が解説します。
今回は、「遮光器土偶」。
「想像力をかきたてられる」「不思議な形で古代のロマンを感じる」「縄文美術が好き」「社会科の教科書でみた」「都市伝説的なたたずまいが好き」「とにかく可愛い!」「永遠にみていられる」など、年齢や性別を超えて幅広いファンを獲得している作品です。

品川欣也(しながわよしや)

(日本考古)

地元が同じ青森なので小学生のころからしっていた土偶です。縄文時代や縄文文化を紹介するうえで欠かせない存在であることから、いつも頼りに思っています。そんなこともあって、東博で一緒に働けることに喜びを感じています。

 まず「土偶」とは何か、からお話ししましょう。土偶は、縄文時代に全国各地でつくられた粘土製の人形です。成人女性で妊婦の姿をしたものが多くみられ、豊穣や安産、子孫繁栄などを願う祈りの道具として、まつりなどに用いられていました。

 当館の遮光器土偶は、縄文時代の終わり(紀元前1000年~紀元前400年)につくられたもので、今から140年ほど前に青森県つがる市の亀ヶ岡遺跡から発見されました。このようにかなりデフォルメされた印象的な姿だったこともあって、当時の考古学界でも大きな話題になったようです。遮光器というのは現代のスノーゴーグルのことで、誇張された目の形が似ているために名付けられました。以来現在まで縄文時代を代表する存在となっています。教科書にも掲載されたので、皆様一度は目にされたのではないでしょうか。

 全身を覆う文様もこの土偶のみどころ。文様には地域や時期ごとに厳しい規定があるなかで、この土偶が文様を点対称や線対称で配置するなど、表現に細かな工夫を凝らしている点にもぜひ注目してください。実はX線CT画像をみると、その内部には、少し粗削りな人の手の跡、指の形が現れてくるのです。3000年以上も前に、私たちと同じくこの日本列島に暮らした誰かの手が、一生懸命土を捏(こ)ねてつくったのだなぁと思うと、縄文時代がとても身近に感じられます。

 縄文時代は人々の職業や役割に境目がない、いわば「皆の時代」です。土偶も特別な作家や職人がつくるのではなく、皆が皆のためにつくっていました。ですから、多くの方にみていただきたい。祈りの対象も子孫繁栄や豊穣に限らず、何を祈ってもいいのだと私は思っています。もし、まだこの遮光器土偶の実物をご覧になったことがない方は、ぜひ当館にあいにきていただき、何か願い事をしてみるというのも楽しいかもしれませんね。