2026年夏号今号の表紙
紅糸威二枚胴具足
武士の装い―平安~江戸
紅糸威二枚胴具足(べにいとおどしにまいどうぐそく)
江戸時代・17世紀
兜にサザエ!?
変わり兜にみる戦国武将の矜恃(きょうじ)
- 本館15・16室
- 7月7日(火)~9月27日(日)
栄螺(さざえ)形の変わり兜に、西欧の甲冑を模した南蛮(なんばん)胴を組み合わせ、魚の鱗(うろこ)のような袖と佩楯を備えています。さらに、兜、草摺、袖、佩楯を金箔(きんぱく)で飾り、面具は朱漆塗(しゅうるしぬり)で、胴は錆地(さびじ)としています。奇抜なデザインと華やかな色彩により、さぞ戦場で注目を集めたことでしょう。その意表を突いた造形は、現代の私たちがみても驚かされます。
変わり兜とは、その名のとおり変わった形の兜のことで、戦国乱世から天下統一へと向かう安土桃山時代(16世紀末)に登場しました。本作品では、和紙などで栄螺の複雑な形をつくり、漆で塗り固めて金箔で飾り、鉄製の兜本体にかぶせています。この技法を張懸(はりかけ)といい、変わり兜の製作で多用されます。栄螺は古来縁起物であり、丈夫な殻が堅い守りに通じることから戦国武将たちに好まれ、兜の意匠に取り入れられました。
甲冑は本来的には身体を守る実用的なものですが、それと同時に戦いを生業とする武士にとっては自らの活躍をアピールするものであり、生死を懸けた戦場では死に装束にもなります。そしてさまざまな材料と技術を用いて製作され、世界的にみても色彩や意匠が豊かであることもみどころです。まさに究極の勝負服であり、戦う芸術ともいえるでしょう。
日本の甲冑の特質として、実用的な機能性、人目を引く装飾性、武家としての象徴性があげられます。変わり兜は、人智を超えた力を身に宿し、戦場で自らの存在と武威を示すことで、味方を勇気づけ、敵をひるませるという、機能性を超えた装飾性と象徴性を備えています。軍を率い、腕に覚えのある武将は、そのことをよく理解しており、自らの美意識や覚悟を具現化した変わり兜をかぶって、命を懸けた戦いに臨んだのです。だからこそ、勇ましく美しく、私たちは心ひかれるのでしょう。そして、変わり兜に象徴される戦国武将の矜恃は、現代社会において組織を率いるリーダーに求められることと、本質的に同じものではないでしょうか。
- 具足(ぐそく)とは?
- 安土桃山時代に登場した甲冑のこと。「具(そな)わり足る」を意味します。デザインを揃えた防具で全身を防御しているのが特徴です。