はじめの一歩

―東洋館インクルーシブ・プロジェクトでの気づき

  •  東洋館で秋に開催した「博物館でアジアの旅」では、「東洋館インクルーシブ・プロジェクト」の一環として、視覚に障害がある方にも展示をお楽しみいただけるハンズオンを設置しました。このプロジェクトをきっかけとして、当館の職員の意識が少しずつ変わりはじめています。

  •  2025年からはじまった「東洋館インクルーシブ・プロジェクト」では、今までにしりえなかった新しい気づきにハッとさせられることがたくさんあります。たとえば、全盲の美術鑑賞研究者の半田こづえさんとのお話のなかで、視覚に障害がある方のなかには漢字を習わない場合もあるということをしりました。そこで、半田さんと書の研究員の対話の機会を設けたことが、ハンズオン「漢字の『手』をさわってみよう」をつくるきっかけになりました。

     また、「おしゃべりフリーな東洋館」のスローガンを掲げるきっかけとなったのは、「当事者の方に展示の説明をする時につい熱が入り、声が大きくなってしまうので、展示室では気が引ける」というアテンドの方からの声でした。展示室は、決しておしゃべりしてはいけない所ではありません。日本ではまだ認知度が低いですが、視覚に障害がある方には、対話による鑑賞のアプローチが必要であることを、もっと多くの方にしっていただく必要があると考えています。

     先日ハンズオンを体験していただいた河合純一さん(現スポーツ庁長官)からは、「課題があるということは、よりよい博物館になる可能性があるということ。取り組みを続けていくことが、東京国立博物館としての価値になる」とエールをいただきました。ゆっくりですが、一歩一歩着実に、視覚に障害がある方も、どんな方もいつでも安心して楽しめる東洋館を目指してまいります。

    (三笠景子)

  • 「おしゃべりフリーな東洋館」で、視覚に障害がある方も一緒に展示を楽しむ様子

  • 河合純一さんがハンズオンを体験している様子

  • ハンズオン「漢字の『手』をさわってみよう」