• 本館
    • 奇抜で力強いデザイン

      厚板 藍萌黄段槌車鱗模様

      (あついた あいもえぎだんつちぐるまうろこもよう)

      江戸時代・18世紀

      奈良・金春家伝来

      • 9室 能と歌舞伎 能「土蜘」に見る面・装束
      • 6月24日(火)~8月24日(日)

       三角形を連ねた模様は龍の鱗を表しているといいます。その上に大きくデザインされた車輪のような模様は、六方の先に槌(つち)のような器物をつけています。本来、この模様は田圃(たんぼ)などに水をくみ入れる水車の模様だったと考えられます。水をくむ「柄杓(ひしゃく)」の部分が杭を打ちつける「槌」へと変化した模様なのです。槌車は実際には存在しませんが、強力なイメージが、武将や鬼神などの役の衣装に用いられる厚板の模様に好まれるようになったのでしょう。

      (小山弓弦葉)

    • 心の目でみる禅の教え

      布袋図

      (ほていず)

      興牧(こうぼく)筆

      室町時代・16世紀

      • 3室 禅と水墨画―鎌倉~室町
      • 8月19日(火)~9月28日(日)

       「この指と〜まれ」とばかりに指を立てているのは、七福神(しちふくじん)でおなじみの布袋(ほてい)さん。かわいらしい絵ですが、じつは禅の深い教えを表した作品です。布袋が指を差しているのは、絵の外にある上空の月。そして月は仏の教えそのものを、布袋の指はそれを説いた経典を示しています。つまりこの絵では、指ばかりみて月をみないこと、経典ばかり読んで仏法の真髄(しんずい)を理解しないことを批判的に表しているのです。ぜひ心の目で、布袋が指差す月を思い浮かべながらご覧ください。

      (高橋真作)

  • 東洋館
    • 妊娠と出産を守る神

      タウレト女神像

      (たうれとめがみぞう)

      エジプト 末期王朝時代末~プトレマイオス朝時代初頭・前4世紀頃

      百瀬治氏・富美子氏寄贈

      • 3室
      • ~12月21日(日)

       古代エジプトのファイアンスとよばれるやきものの女神像で、細部をよくみていただきたい一品です。カバの顔、ライオンの手足、ワニの尻尾(しっぽ)がついており、猛獣のパーツをつめ込むことで力強さが表現されています。そして重要なのが、大きな乳房と張り出したお腹。妊娠中の女性の姿を表しています。タウレトは妊娠と出産を守る女神として、古代エジプトの家庭で信仰を集めました。この女神像は、子宝(こだから)に恵まれたいという願いが込められた御守りだったと思われます。

      (小野塚拓造)

    • 霊力を宿した鉄剣

      クリス

      インドネシア ジャワ島東部 17~18世紀

      J.C.ベイレフェルト氏寄贈

      • 13室 アジアの民族文化 クリス 神秘なるインドネシアの武器
      • 6月24日(火)~11月16日(日)

       東南アジアの島々にはクリスとよばれる剣があります。この展示ではインドネシアのクリスを、ジャワ島やスラウェシ島などの地域ごとに紹介します。クリスの剣身は真っ直ぐであったり、蛇行していたりして、幾重もの刃文が表されています。クリスには神秘的な霊力があり、持ち主である男性を守護して、その人の威信を象徴すると信じられています。現代でも、インドネシアの男性が伝統的な正装をする際には腰帯にクリスを挿す風習があります。

      (猪熊兼樹)

  • 平成館
    • 埴輪のように使われた壺

      広口壺

      (ひろくちつぼ)

      香川県高松市 石清尾山猫塚(いわせおやまねこづか)古墳出土

      古墳時代・3~4世紀

      香川県寄贈

      • 考古展示室
      • 通年展示

       高松市の西にそびえる石清尾山塊(いわせおさんかい)には、石を積んで築かれた古墳である積石塚(つみいしづか)が多く所在します。そのなかで最大規模を誇るのが猫塚古墳です。
       この壺は焼く前に底に孔(あな)が開けられており、実際に壺として使うことはできません。儀礼のために、いわば埴輪のような役割で古墳の上に置かれました。
       四国地方における3~4世紀の古墳文化の広まりを示すものとして長らく展示してきたものですが、今回が修理完了後の初めての展示の機会となります。

      (山本亮)

  • 法隆寺宝物館
    • 平安貴族に流行した朗詠の楽譜

      朗詠要集

      (ろうえいようしゅう)

      鎌倉時代・正応(しょうおう)5年(1292)

      • 第6室 書跡―古今目録抄と朗詠要集―
      • ~7月13日(日)

       平安時代、貴族たちのあいだでは、漢詩や和歌に節(ふし)をつけて詠う朗詠(ろうえい)が流行し、ふさわしい詩歌を選んだ「朗詠集」が編まれました。宮廷歌謡の源家流(げんけりゅう)・藤家流(とうけりゅう)によって発展した朗詠は、中世以降に一時衰微しつつも伝承されました。法隆寺伝来の「朗詠要集」は藤家流朗詠の楽譜です。『和漢朗詠集』などから抄出(しょうしゅつ)した70首を漢字・片仮名まじりで記し、右側に博士(はかせ)とよばれる節の記号をつけています。この正応5年の古写本(こしゃほん)は、中世に受け継がれた朗詠を今に伝えています。

      (六人部克典)

  • 黒田記念館
    • 強烈な色彩表現

      昼寝

      (ひるね)

      黒田清輝筆 明治27年(1894)

      • 黒田記念室
      • 7月1日(火)~9月28日(日)

       目に飛び込んでくるのは、色の束。草原でまどろむ女性の上半身が描かれています。彼女の肌や着物は、赤、青、黄といった原色を混ぜずにリズミカルに隣りあわせることで表現され、地面の草も、たたきつけるような筆致で描かれています。ところどころに浮かぶ黄色い斑点(はんてん)が、降り注ぐ強烈な日光を表します。筆触分割を過激な形で採(と)り入れたこのような作品は、黒田がフランスから帰国した直後の一時期にのみ描かれました。

      (吉田暁子)

  • 特別展紹介〈平成館特別展示室〉
    • 特別展「江戸☆大奥」
      • 7月19日(土)~9月21日(日)

      絵画や漆工、歴史資料など、さまざまな作品から大奥の歴史を解き明かします。大奥にまつわる、華やかな染織品も見どころのひとつです。五代将軍綱吉が側室の瑞春院(ずいしゅんいん・お伝の方)に下賜した刺繡掛袱紗(ししゅうかけふくさ)をはじめ、武家女性の着物、大奥で演じられた歌舞伎の衣装などを展示します。フィクションではない、本当の大奥の華やぎをおみせします。

      搔取 萌黄紋縮緬地雪持竹雀模様

      (かいどり もえぎもんちりめんじゆきもちたけすずめもよう)

      天璋院(てんしょういん・篤姫(あつひめ))所用

      江戸時代・19世紀

      東京・公益財団法人 德川記念財団蔵

      展示期間:8月5日(火)~8月17日(日)

      小忌衣 浅葱天鵞絨地菊水模様

      (おみごろも あさぎビロードじきくすいもよう)

      坂東三津江所用、高木キヨウ氏寄贈

      江戸時代・19世紀

    • 特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
      • 9月9日(火)~11月30日(日)

      幾度となく災禍に見舞われ、その都度復興されてきた奈良・興福寺。藤原不比等(ふじわらのふひと)追善のために建立された北円堂諸像の復興を担当したのは、日本を代表する仏師・運慶とその一門でした。本展は、奇跡的に残る国宝仏像7軀(く)を一堂に会し、運慶彫刻の頂点である鎌倉復興期の北円堂の内部を再現する初めての試みです。どうぞお見逃しなく。

      ●弥勒如来坐像

      (みろくにょらいざぞう)

      運慶作

      鎌倉時代・建暦2年(1212)頃

      奈良・興福寺蔵

      (注)会期中の展示替えはありません。
      撮影:佐々木香輔

      ●無著菩薩立像

      (むじゃくぼさつりゅうぞう)

      運慶作

      鎌倉時代・建暦2年(1212)頃

      奈良・興福寺蔵

      (注)会期中の展示替えはありません。
      撮影:佐々木香輔

(注) ●は国宝、◎は重要文化財(重文)、○は重要美術品(重美)を表します。特に表記のないものは東京国立博物館蔵です。