• 本館
    • 一族への祈りを込めた晩年の筆

      ◎願文

      (がんもん)

      慈円筆

      鎌倉時代・貞応3年(1224)

      • 2階 仏教の美術―平安~室町
      • 4月8日(水)~5月24日(日)

       関白藤原忠通(ふじわらのただみち)の子で、天台座主(てんだいざす)を務めた慈円(じえん 1155~1225)が、氏神の春日明神に祈願した際の文書です。神仏の前で願いを述べる表白(ひょうびゃく)という形式で、本文には訓点が付されます。「春日大明神に白(もう)して言(もう)さく」とはじまり、13歳で出家して以来、仏道と政道のために歩んできた人生を顧みて、将来の政を担う一族への加護を祈っています。筆致は力強く勢いに満ち、鋭く張りのある線と、自然に移ろう美しい墨色がみられます。慈円70歳、亡くなる前年に立てた願いは、父譲りの雄渾(ゆうこん)な書風で表され、後世に伝えられました。

      (六人部克典)

    • 短冊に思いをはせる可憐な姿

      七夕の短冊を書く美人

      (たなばたのたんざくをかくびじん)

      鈴木春信筆 江戸時代・18世紀

      • 2階 浮世絵と衣装―江戸(浮世絵)
      • 6月16日(火)~7月20日(月・祝)

       旧暦7月7日の七夕の夜には、五色の飾りをつけた竹に願いを書いて飾りました。円窓のなかの若い女性は、短冊や梶(かじ)の葉を並べ、どのような願いごとをしたためようかと思案しています。
       彼女の振袖にあしらわれた鮮やかなかきつばたの模様は、東国へ下る男が三河国でかきつばたをみて、都に残した女を思って歌を詠む『伊勢物語』第九段「八橋」を思わせます。作中にしばしば古典文学の題材を取り入れた春信らしい趣向といえます。この女性も誰かに思いをはせているのでしょうか。

      (村瀬可奈)

  • 東洋館
    • 白磁を彩る爽やかな緑釉

      白磁緑彩龍濤文鉢

      (はくじりょくさいりゅうとうもんはち)

      中国・景徳鎮窯 「大明正徳年製」銘

      明時代・正徳年間(1506~21)比佐隆三氏寄贈

      • 5室 中国の陶磁
      • 4月8日(水)~8月16日(日)

       強大な勢力を誇った明王朝と歩みをあわせるように、生産力を伸ばした15~16世紀の景徳鎮官窯では、多彩な器種が登場し、さらにさまざまに技巧を凝らした製品がつくられるようになりました。本作品は五爪(ごそう)の龍を線刻で表し、その部分だけ透明釉をかけずに焼成して上から緑釉で彩ったものです。これは正徳年間の官窯でさかんに行われた装飾法のひとつで、気品漂う美しい白色の素地と明るく爽やかな上絵具の発色が大きな魅力となっています。

      (三笠景子)

    • 絵画が紡ぐ恋の調べ

      弓を番えながら戯れる男女(ヴィバーサ・ラーギニー)

      (ゆみをつがえながらたわむれるだんじょ ヴィバーサ・ラーギニー)

      ブーンディー派 インド 18世紀前半

      • 13室 インドの細密画
      • 4月14日(火)~5月17日(日)

       インドの細密画には、「ラーガマーラー(楽曲絵)」とよばれる音楽と絵画が融合した独特な表現があります。ラーガマーラーは、インド古典音楽のさまざまな旋律であるラーガを絵画化しています。
       本作品は、月明かりの夜に男性が女性を抱きかかえながら、花の弓に矢を番えています。彼が射落とそうとしているのは屋根の上に止まっている孔雀です。なぜなら孔雀は夜明けを告げるべく甲高い声で鳴こうとしているからです。今宵のロマンスがいつまでも続いてほしいというふたりの思いを描いています。

      (勝木言一郎)

  • 平成館
    • 4月8日からはじまる新たな展示

      深鉢形土器

      (ふかばちがたどき)

      北海道室蘭市祝津町出土

      続縄文時代(前半期)・前4~後1世紀

      渡辺又蔵氏寄贈

      • 考古展示室 縄文時代後の北海道―続縄文文化・オホーツク文化・擦文(さつもん)文化―
      • 4月8日(水)~9月6日(日)

       平成館考古展示室では、4月8日より「縄文時代後の北海道」と題して、これまでご紹介する機会がなかった3つの文化の展示をはじめます。
       寒冷な気候のために水田稲作が定着しなかった縄文時代の北海道では、縄文時代の伝統を引き継ぎつつ、漁撈(ぎょろう)・狩猟・採集を生業にした独自の文化が営まれました。これらの文化を続縄文文化(前4世紀~7世紀)、オホーツク文化(5〜12世紀、北海道では9世紀まで)、擦文文化(7世紀~12世紀)とよんでいます。本例は続縄文時代の土器で、主に煮炊きに使われました。ぜひ展示室でご覧ください。

      (飯田茂雄)

  • 法隆寺宝物館
    • 1300年色あせず輝く飛鳥時代の優品

      ◎蜀江錦帯

      (しょっこうきんおび)

      飛鳥時代・7世紀

      • 第6室 染織―蜀江錦と白氈(はくせん)―
      • 4月14日(火)~5月10日(日)

       連珠をめぐらせた蓮華を、小さな格子に収めた可憐な錦です。奈良・斑鳩(いかるが)の法隆寺に伝えられた飛鳥時代の錦のなかでも、とりわけ長大かつ精緻な織りの優品で、法隆寺では聖徳太子の御妃である膳妃(かしわでのきさき)の帯と伝えられます。江戸時代には、錦の生産地として漢詩に詠われた蜀(中国・四川地域)の名を冠し「蜀江錦」という美称でよばれるようになりました。1300年以上を経てなお保たれる、鮮やかな色彩と絹の光沢にご注目ください。

      (廣谷妃夏)

      法隆寺宝物館中2階
      デジタルコンテンツがリニューアル!
      3月10日(火)にオープン予定です。
      どうぞお楽しみに。

  • 黒田記念館
    • 画家の信心深さを映し出した風景

      稲荷神社

      (いなりじんじゃ)

      黒田清輝筆 大正11年(1922)

      • 黒田記念室
      • 4月8日(水)~7月12日(日)

       麻布筓町(あざぶこうがいちょう 現在の港区西麻布)にあった、黒田清輝の義父清綱邸の稲荷神社が描かれています。明るい光が差し込む画面左側とは対照的に、右奥によどむ濃い緑の影が、木々のなかにひっそりとたたずむ社の姿を際立たせています。自邸(現在の千代田区平河町)の庭にも先祖を祀る社があり、黒田はどんなに夜遅くなっても必ず参拝したと伝えられています。洋画の第一人者の意外にも信心深い一面を伝える作品ですが、この小さな稲荷神社には、どのような祈りがささげられたのでしょうか。

      (吉田暁子)

  • 特別展紹介
    • 前田育徳会創立百周年記念
      特別展「百万石! 加賀前田家」
      • 平成館特別展示室
      • 4月14日(火)~6月7日(日)

      江戸時代を通じて最大の石高(こくだか)を擁した加賀前田家にとって、武家の名門としての権威を象徴する刀剣は特別な存在でした。武家間で流行した茶の湯道具もまた、道具の所持に象徴的な意味がありました。足利将軍家から豊臣秀吉を経て加賀前田家初代・利家(としいえ)に伝わった「大典太」や「富士」など、本展ではその家格を語る重宝の数々をご覧いただきます。

      ◎大名物 唐物茄子茶入 銘 富士

      (おおめいぶつ からものなすちゃいれ めい ふじ)

      南宋時代・13世紀 前田育徳会蔵

      ●太刀 銘 光世作(名物 大典太)

      (たち めい みつよさく めいぶつ おおでんた)

      平安時代・12世紀 前田育徳会蔵

  • 「東博能」を開催します
    4月17日(金)~6月7日(日)

    特別展「百万石! 加賀前田家」と連動して、本展会期中に宝生流(ほうしょうりゅう)による特別公演「東博能」を開催します。本企画では、本館1階に特設能舞台を設置。宝生会所蔵の重要文化財や前田家ゆかりの品々を舞台で実際に使用し、多彩なプログラムを通じて能の魅力を伝えます。

(注) ●は国宝、◎は重要文化財(重文)、○は重要美術品(重美)を表します。特に表記のないものは東京国立博物館蔵です。