2022年6月から、銭谷眞美前館長より館長職を引き継ぎました藤原誠です。
銭谷前館長は、長きにわたり当館をけん引し続け、着実に成果を上げてこられました。その後を引き継ぐことは非常に重責と感じておりますが、トーハクと一緒に一歩ずつ歩んでまいりたいと存じます。

当館は、明治5年に、旧湯島聖堂の大成殿で開催した博覧会を機に文部省博物館として発足し、今年、創立150年の大きな節目を迎えました。
これまで、10年を周期に、記念の展覧会などを行って来ました。平成24年の創立140年からの10年間は、当館が時代と共に大きく変革した10年となりました。
訪日外国人の数は、平成24年は年間836万人だったものが、令和元年には過去最高の3,188万人となりました。この間、「日本に来たら東京国立博物館へ」を合言葉に、多言語対応の充実を図り、外国人にもわかりやすい展示と解説に取り組んで来ました。
また、当館の常設展示である総合文化展においては、年間300回を超える展示替えを計画的に進めながら、いつ来ても新しい作品に出会える博物館として、魅力的な特別展と合わせ、多くの来館者をお迎えして来ました。平成24年度の総入館者数は155万人、令和元年度には過去最高の259万人となりました。総合文化展だけを見れば、42万人から103万人と2倍以上の来館者数となり、社会の変化を踏まえつつ、将来を見据えた中長期的な取り組みが好循環を産み出したと言えます。
平成31年には、創立150年に向けて、従来の業務課題の解決に挑戦し、ナショナルセンターとしての機能を充実させるため「トーハク新時代プラン」を発表し、今日まで着実に成果を上げて来たところです。

ご承知のとおり、令和2年以降は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、臨時休館、入場者数の制限、夜間開館の自粛など、これまでの博物館運営を継続することが困難な状態が続いています。
新しい生活様式による社会の変容の中にあって、当館が大きな節目を迎えることは、博物館の在り方を再確認し、人々にとって、博物館が何故必要なのかを考える機会であると受け止めています。
そこでまずは、創立150年にあたり、「新しい一歩を、あなたと」という思いで、誰にとっても身近な博物館として、また歩み出したい、そして歩み続けたいと思います。
東京国立博物館の150年目の歩みにご期待ください。

2022年6月
東京国立博物館長
藤原 誠