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駆け込みでトーハクくんがいく! 黄金のアフガニスタン展


ほほーい!ぼくトーハクくん! 今日は特別展「黄金のアフガニスタン―守りぬかれたシルクロードの秘宝―」を見にきたほ。研究員の井上さんと待ち合わせをしているんだほ。
遅いぞ、トーハクくん!
ほ? 約束の時間どおりだほ。
いや、この特別展は6月19日(日)までだ。トーハクくんは危うく見逃すところだったのだ!
そ、それは、こーほー大使のしごとが…(ごにょごにょ)。それにアフガニスタンって言われてもぴんとこないほ。
だったら、なおのことこの展覧会を見る必要があるな。
東西を結ぶシルクロードの要衝にあったアフガニスタンは、「文明の十字路」といわれ、多彩な文化が栄えた場所だ。今日は展覧会の構成にそって、アフガニスタンを代表する遺跡別に、その多彩な文化を紹介していこう。

第1章 テペ・フロール


テペ・フロールは12個体分の金銀器が出土した遺跡だが、詳しい実態はわかっていない。付近から人骨が出土しているから、金銀器はその副葬品だったかもしれないな。
文様が刻まれているほ。


 
(左)幾何学文脚付杯 (右)杯断片
テペ・フロール出土
前2100~2000年頃


文様には各地域の特徴が表れるから、いい目のつけどころだ。
いや~それほどでも~。
左側の作品の「凸」の字に似た文様は中央アジアでよく見られる文様だが、右側の作品の牡牛像はメソポタミアの影響を受けていると考えられている。
同じ遺跡のものなのに、地域はバラバラなんだほ。
これらは今から約4000年前ものと思われるが、その頃には他地域との交流があったということがうかがえるね。

第2章 アイ・ハヌム



あれ? この顔、どこかで見たような気がするほ?
よく勉強しているじゃないか! えらいぞ、トーハクくん。
この人は、マケドニア王国のアレクサンドロス大王だ。アレクサンドロスはギリシア全土を掌握した後に東方遠征も行ったため、中央アジアにもギリシア、マケドニアの影響が及んだのだ。
アイ・ハヌムはそういった時代に建設されたギリシア都市のひとつなんだよ。
ギリシアといえば、夏に特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」が平成館で開催されるほ。ここでもアレクサンドロス大王のマケドニアの紹介があるって聞いたほ。
トーハクくんも広報大使らしくなったじゃないか。
ふふん♪
よし、キミのその心意気をかって、とっておきの作品を紹介しよう。
 
キュベーレ女神円盤
アイ・ハヌム出土
前3世紀


わわ、人がいろいろ。どれが女神さまだほ?
車に乗った一番左に表されているのがキュベーレ女神だ。キュベーレはトルコの大地の女神で、ヘレニズム世界では都市や国家の守護神でもある。その隣に立つのはギリシアの勝利の女神、ニケ。空に浮かんでいるのはギリシアの太陽神・ヘリオス。右側の壇上に立つ人物と左側の車の下に立つ人物は神官だが、西アジア風の衣装を身に着けている。

会場には詳しい解説パネルをご用意しています

ギリシアと西アジアのまざったものがアフガニスタンで見つかるなんて、どらまちっくだほ!!
「文明の十字路」たるアフガニスタンらしい出土品だと思わないかい?
ほー!

第3章 ティリヤ・テペ


さあ、この章がこの展覧会のハイライト、ティリヤ・テペだ。
ほほー! 展示室がキラッキラしているんだほ。



靴底
ティリヤ・テペ 3号墓出土
1世紀第2四半期


 
(左)牡羊像 (右)メダイヨン付腰帯
ティリヤ・テペ 4号墓出土
1世紀第2四半期



ハート形耳飾
ティリヤ・テペ 5号墓出土
1世紀第2四半期


ティリヤ・テペとは「黄金の丘」という意味だよ。展覧会では6基の墓から出土した黄金製品を展示しているんだ。



1号墓出土品の展示。埋葬時をイメージした展示です

2000年近く前のものなのに、キレイなんだほ~。黄金に酔いそう…。
酔っている場合ではないよ、トーハクくん。私のオススメ作品を見ずしてどうする!
まずは、このドラゴン人物文ペンダントだ。
 
ドラゴン人物文ペンダント
ティリヤ・テペ 2号墓出土
1世紀第2四半期


ペンダントと言っても首飾ではなく、両側頭部につけた垂れ飾の一種だったと考えられる。
頭が重たそうだほ。
試してみるかい?
こういうものはユリノキちゃんにプレゼントするほ!
この墓の被葬者も女性だし、ユリノキちゃんは喜ぶかもしれないな。はめ込まれた石も、トルコ石、ラピスラズリ、ガーネットなどさまざまで、とても美しい。
さあ、中央の人物をよく見てみるんだ。額を見て、気がつくことがあるだろう?

あ、おでこに丸いものが付いているほ!
インドのビンディみたいだろう? ここにも、古代の交流の片鱗が垣間見える。
なるほー。

もうひとつのおすすめがこれだ。


ティリヤ・テペ 6号墓出土
1世紀第2四半期


ほほー。ゴージャスな冠だほ!!!
見てのとおり木がデザインされているんだが、これは生命樹といって、この地域ではよく見られるモチーフだ。
さて、トーハクくんに問題だ。この冠には、ある動物もデザインされているんだが、わかるかい?
……?
冠を裏側から見るとわかりやすいよ。

あった、鳥だほ!
そのとおり。生命樹と鳥を組合せた冠は他の遺跡から出土しているんだが、それは、日本にもあるんだ。
!!!
奈良県にある藤ノ木古墳という6世紀後半に築造された円墳だ。
古墳~~~!!!
(※トーハクくんのモデルとなった「埴輪 踊る人々」は6世紀の古墳から出土した埴輪です。ただし、トーハクくんは永遠の5歳です。)

思わぬご縁にトーハクくんは大興奮!

ティリヤ・テペと藤ノ木古墳、両者に直接的関係があるわけではないが、地理的にも時代的にも遠く離れた2つの冠が同じモチーフを採用していることは非常に興味深いね。
壮大な話で、感動しちゃったほ。今日はスケールの大きな夢がみられそうだほ。

第4章 ベグラム


最後に紹介する遺跡がべグラム。クシャーン朝の夏の都として栄えた場所だ。
井上さんイチオシの、象牙彫刻のキレイなお姉さんもいるんだほ。

マカラの上に立つ女性像
べグラム 第10室出土
1世紀


象牙ではないが、この作品は大変興味深い。

魚装飾付円形盤
べグラム 第10室出土
1世紀


んー?
黄金製品ではないからといって、いきなり興味をなくさないように! この作品には仕掛けがあるんだ。下を見てごらん。

何かぶら下がっているほ。
おもりだよ、トーハクくん。おもりは、円盤の表面に立体的に表された魚のヒレとつながっているんだ。
何が何だかさっぱりだほ。
安心しなさい、このレプリカで疑問は解決するぞ。

円盤をゆすると、表面の魚のヒレが動きます


ヒレを動かしているのはおもり。その様子もご覧いただけます

魚が泳いだ! おもしろいんだほ~!!
よしよし、ようやくテンションが戻ったな。
この作品の用途はわからないが、ぜひ本物をご覧いただき、レプリカで体験してみて欲しい。

第5章 アフガニスタン流出文化財


さて、最後の第5章は、今回の展覧会の開催趣旨とも深く関わっているんだ。
なんでだほ?
アフガニスタンは内戦などで都市が破壊され、首都カブールにある国立博物館も甚大な被害を受けた。これまで見てきた作品は、すべてアフガニスタン国立博物館のコレクションであり、本展覧会はアフガニスタンの文化遺産復興を支援する意味もあるんだ。
第5章の作品も?
いや、最後の展示室にあるのは流出文化財。戦争による混乱の最中、不法に国外に持ち出された文化財だ。

ゼウス神像左足断片
アイ・ハヌム出土
前3世紀



サンダルに雷霆(らいてい、稲妻のこと)が表されていることから、この作品がゼウス神像であることがわかります。
雷霆はゼウスの武器。ギリシア都市、アイ・ハヌム(第2章)らしい出土品です


日本では平山郁夫氏が音頭をとって、こうした流出文化財の保護活動を行ってきた。今回の展覧会を機に、日本で保管してきた流出文化財102件が、本国アフガニスタンに返還されたんだよ。
「自らの文化が生き続ける限り、その国は生きながらえる」
これは、アフガニスタン国立博物館に掲げられた言葉だが、本展覧会はこの信念のもとに開催された展覧会でもあるんだ。

古代のアフガニスタンだけじゃなく、現代のアフガニスタンにも関わる展覧会だったほ。
井上さん、今日はありがほーございました。

アフガニスタンの衣装がよく似合う井上さんに、感心しきりのトーハクくんなのでした

カテゴリ:研究員のイチオシ「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」

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posted by トーハクくん at 2016年06月13日 (月)

 

「黄金のアフガニスタン展」10万人達成!

特別展「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」(4月12日(火)~6月19日(日)、表慶館)は本日10万人目のお客様をお迎えしました。
ご来場いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。
10万人目のお客様は、神奈川県からお越しの石原草紀子(いしはら さきこ)さんと井戸陽子(いど ようこ)さんのお2人連れ。お2人は1ヶ月も前からこちらの展覧会に行こうとお約束されていたとのことでした。ありがたいことです。
お2人には10万人突破のお祝いに駆けつけた映画コメンテーターのLiLiCoさんと、東京国立博物館長 銭谷眞美より、特別展図録や純金箔入り羊羹などの記念品を贈呈しました。
石原さんは、「10万人目ということでびっくりしました。これだけの人が展覧会に興味を持っているということは、それだけ奇跡的な秘宝なのだなと感じました」と、井戸さんは「これから変わらぬ美しさの宝物を見るのが楽しみです。」とお話くださいました。
また、記念撮影には当館広報大使のトーハクくんも登場、LiLiCoさんとともにセレモニーに華を添えました。

 
「アフガニスタン展」10万人セレモニー
左から、トーハクくん、石原草紀子さん、井戸陽子さん、LiLiCoさん、館長の銭谷眞美
5月31日(火)東京国立博物館 表慶館前にて


本展は紀元前2100年頃から紀元後3世紀までに古代アフガニスタンで栄えた文化を、4つの遺跡から出土した名宝によって紹介しています。中でも、アフガニスタン北部のティリヤ・テペから出土したきらびやかな黄金製品の数々は日本初公開!
会期終了まで残り3週間を切りました。約250件の奇跡の秘宝が一堂に会する本展をどうぞお見逃しなく!
 

カテゴリ:news「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」

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posted by 武田卓(広報室) at 2016年05月31日 (火)

 

驚きの黄金製品

アフガニスタン展もいよいよ終盤ですね~。この特別展では企画担当グループ(ワーキング)として参加し、特に展示作業ではティリヤ・テペという遺跡から出土した黄金製品を担当しました。「ティリヤ・テペ」とはウズベク語で「黄金の丘」を意味します。その名の通り、この遺跡で発掘された6つのお墓からは、大量の黄金製品が出土しました。この特別展はその全貌を日本で初公開するものでもあります。
黄金だから価値がある!という考えで調査や研究をやっているわけでは決してないのですが、それにしてもやっぱり金ってすごいな~と、展示をしながら感動した次第です。まばゆく、そして柔らかくもある輝きと存在感!黄金の工芸品には展示空間を支配する「力」が備わっています。おかげさまで連日多くの皆様にお越しいただいており、本物がもたらす感動を持ち帰っていただけたら幸いです。
さて、今回はそんな担当者から、作業中に驚いたお話をしたいと思います。まずはこちらの金製品。ティリヤ・テペ1号墓から出土した「イルカをかつぐ人物文飾板」(作品№36)。



マフラーのように首にまいているのが「イルカ」なんです。ベトベトしそうですね・・・。さて、この作品のうら側ですが、ひっくり返すと形にあわせて凹んでいるのがわかります。



つまり型の上からうすい金板をあて、叩いて打ち出したということですね。法隆寺宝物館で展示している押出仏も同じ作り方をしています。
ところがこちら、「靴留金具」(作品№106 ティリヤ・テペ4号墓出土)は違うんです。



この作品、打ち出しているのではなく、黄金を鋳造しているんです。つまり金無垢!靴につけるにしてはずいぶん豪華な金具ですね~。面白いのは裏側に織物の痕跡がみえていること。それも後からくっついたものではなく、痕跡ごと鋳造されているんです。



どうしてこんなことになったのか?ちょっとイメージするのが難しいですが、次のような手順が想像できます。

1. 平らにのばした粘土の上に織物を敷く(これは型が粘土から外しやすいようにするため)。
2. 布のうえから型を押し当て、金具背面の鋳型を形作る。
3. 布をはがし、凹みに融けた蝋を流して、細かな造形を作る。
4. 上から粘土を被せて熱し、中の蝋を流してしまう。
5. 蝋が流れでた後の空間に金を流し込む。

こうすると、金具の背面に織物の痕が残りますよね?実際にどう作ったのかは分かりませんが、うら側を見ると作り方も想像できて楽しいです。
次に驚いたのが「戦士像留金具」(作品№79 ティリヤ・テペ3号墓出土)の精巧な出来栄えです。



今回展示している作品のなかで、最も細密な出来栄えと感じている作品です。鎧をまとい、槍と楯をもった戦士の姿で、その顔は側面から捉えられています。薄い打出しの作品なので、当然この顔も片面のみと思いきや!実は正面からはパッと見えない反対側の顔まで表現されているんです。



ちょっと見えにくいですが、みなさんも会場で覗き込んでみてください(特にこの作品は見えやすいように、ケース前面に展示しました)。本当にこんな素晴らしい作品に出会えて感動しました。
短いブログではまだまだ話しきれませんが、この特別展には古代アフガニスタンにおける工芸美術の素晴らしさが溢れています。会期終了まであと3週間あまり!残された黄金の機会をお見逃しなく!!
 

カテゴリ:研究員のイチオシ「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」

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posted by 三田覚之(教育普及室・工芸室研究員) at 2016年05月27日 (金)

 

「黄金のアフガニスタン」見逃し厳禁、象牙彫刻

えーっ、これ、象牙でできてるの!?
すごーい!! 
特別展「黄金のアフガニスタン―守りぬかれたシルクロードの秘宝―」の会場ではこんな声も多く聞かれます。

そーなんです。
「黄金のアフガニスタン」展ではありますが、本展で注目すべきは黄金製品だけではないのです。
今回はその象牙彫刻のすばらしさをご紹介しましょう。

第4章「ベグラム」の部屋に入ると、まず目に飛び込むのは、3体の妖艶なる女神像。それぞれ古代インド神話にも登場する怪魚マカラの上に乗り、その豊満な肉体を左右にくねらせています。
  
マカラの上に立つ女性像(左から順にNo.147、148、149)
1世紀


左の1体(No.147)は、体にまとわりつくような薄いギリシア風のチュニックをまとい、ブレスレットをつけ、左手にはブドウの房を持っています。
一方、他の2体(No.148・149)は上半身は裸で、インド風のドーティ(下衣)をまとい、髪飾、胸飾、ブレスレットにアンクレットを身につけています。
これらの像は象牙を丸彫りしたもので、その姿は極めて美しく官能的。思わず見惚れてしまいます。
これらは家具の一部だったようですが、その全体像ははっきりわかっていません。
残念!

次に進むと、まず、No.151の人物・マカラ像の象牙のレリーフがあります。

人物・マカラ像(No.151)
1世紀


中央の人物の両足を2匹のマカラが噛み付いているかのような表現。
この人物はギリシア神話に登場する海の神トリトーンを表現したものといわれています。
しかし、ポセイドンの息子トリトーンは通常、上半身が人間、下半身が蛇の姿で表現されるのですが…? この像は下半身も人間と同じです。
となると、これはトリトーンなのか!? という疑問が湧いてきます。どこかにこの回答のヒントになるものはないか。会場を探してみました。
それは次の部屋にありました! No.212のレオグリフ形腕木です。

レオグリフ形腕木(No.212)
1世紀


マカラの口からレオグリフが飛び出している、あるいはその後ろ足を噛み付こうとしているかのような造形。
そのレオグリフの背には女神が跨り手綱を引き、腹の下から男神がその女神を支えています。
この両神はインド古来の神、女神ヤクシー、男神ヤクシャと考えられています。この構図と比較してみるとNo.151の人物像はトリトーンではなく、ヤクシャではないか!?
これは珍説ですかね。しかし、会場でこんなことを考えてみるのも面白いと思いますよ。

さて、その次には脚台を飾ったと考えられる象牙の装飾板が並びます。
馬やレイヨウなどの動物と「樹下美人図」を思わせる女性像をレリーフで表現。
そして、その隣には象牙を丸彫りした象(No.152)、コブ牛そしてライオンが続きます。
特に象は頭に二つのコブをもつインド象の特徴を良く捉えています。

象形家具脚部(No.152)
1世紀



次の部屋に進みましょう。
先ほど紹介したNo.212のレオグリフ像の裏手にあるケースには二つの象牙の装飾板が並んでいます。



本生話の装飾板(上からNo.195、196)
1世紀


このNo.195・196はちょっと毛色が変わったレリーフ。本生話(ほんじょうわ)の装飾板と呼ばれているものです。
本生話とは仏教説話の中で、釈迦の前生における数々の物語。
No.195 は「ナリニカー姫本生」の一場面、No.196は「もみぬかを腹にもつシンドゥ産子馬前生物語」という本生の一場面を表現したものと推測されているようです。
しかし、このレリーフだけを見ていても、話の内容は良くわかりません。詳細は図録の解説に委ねることにしますが、そこには実に面白い物語が展開されています。ぜひお読みください。
解説でも指摘されているように、インド由来のこうした象牙製品に仏教的な題材が組み入れられているのは興味深いことですね。

さて、最後のケースにはこれまた見事な象牙のレリーフが並んでいます。

楽人と踊子の装飾板(No.194)
1世紀



後宮女性の装飾板(No.210)
1世紀



門下に立つ女性の装飾板(No.211)
1世紀


まず、樹の下で笛を奏でる女性とその曲にあわせて踊る女性が、実に繊細な線でいきいきと描かれている装飾板(No.194)。
次に後宮の女性たちや門下に立つ女性たちを繊細かつ妖艶に表現した装飾板(No.197~211)が続きます。
これらは玉座を飾ったものと推測されていますが、まさに、玉座を飾るにふさわしい象牙彫刻の技と美が融合した見事な工芸品といえるでしょう。

このように素晴らしい象牙彫刻の逸品が、本展では黄金製品の陰で密やかな美を誇っています。
みなさん、こうした作品もぜひお見逃しなく!

※画像はすべて(C)NMA/Thierry Ollivier 

カテゴリ:研究員のイチオシ「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」

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posted by 井上洋一(学芸企画部長) at 2016年05月19日 (木)

 

「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝」は古代バクトリアを知る展覧会

特別展「黄金のアフガニスタン―守りぬかれたシルクロードの秘宝」がスタートしました!連日の展示作業を振り返って感じることが2つあります。
とにかくもの(展示品)がいい!ということ。
そして、なんといっても黄金に囲まれた至福の時間であった・・・ということです(金とはまったく無縁の僕は、研究員になっていなかったら、こんなにも金製品に触れる機会はなかったと思います)。

さて、アフガニスタンの古代美術といえば、仏教関係の遺跡や遺物をイメージする方が多いのではないでしょうか。
会場では平山郁夫氏が描いた在りし日のバーミヤーン大仏のスケッチをご覧いただけます。


ヒンドゥクッシュ山脈海抜二六〇〇メートル バーミアン石窟大石仏 アフガニスタン  
平山郁夫画 1997年 平山郁夫シルクロード美術館蔵

バーミヤーンの大仏や、仏像を生み出したガンダーラ美術は日本でもよく知られており、これらを主題にした展覧会は幾度となく開催されてきました。それに対して、今回の特別展は仏教以前のアフガニスタンを、初めて、そして大々的に紹介するものです。

仏教以前のアフガニスタンにはどんな文化があったのでしょうか?
今回の展覧会の中心は、アフガニスタン北部にある4つの遺跡で発掘された出土品です。その大部分は前3世紀~紀元後1世紀頃の遺物です。この頃、この地域はバクトリアと呼ばれていました。日本の弥生時代に並行する時代です。

紀元前4世紀後半、マケドニアのアレクサンドロス大王が東方遠征を敢行し、その版図はインダス河畔にまで及びました。バクトリアにもギリシア人が移住し、ギリシア都市が建設されるようになります。その結果、ギリシア文化の影響を色濃く反映しつつ、周辺地域の文化を融合させた独特の文明が栄えます。これが仏教以前のアフガニスタン、古代バクトリアの姿です。本展覧会ではバクトリアの文明を象徴する出土物が来日しているのです。

今回のブログでは、バクトリアとギリシア文化との関わりの出発点ともいえる展示品をいくつか紹介しましょう。2章で紹介されているアイ・ハヌムは、アレクサンドロス大王の遠征のあとに建設されたギリシア都市の遺跡。3世紀中頃からグレコ・バクトリア王国の中心都市として栄えました。

 
コリント式柱頭 前145年以前      瓦の端飾 前3世紀

宮殿などの建造物では、中庭に面した回廊やエントランスにギリシア様式の柱が立ち並び、屋根にもギリシア様式の瓦の端飾が並んでいました。目につく場所にギリシア風の装飾を意図的に配していたと考えられます。
また、宮殿の「宝物庫」で出土した銘文から、都市の行政の公用語がギリシア語だったことが分かります。



銘文付アンフォラ断片 前145年頃
(印の部分に掻き消された文字が残る)

「宝物庫」で出土したこの壺には、銀貨が納められていたことを示す銘文が記されています。もともとは地中海地域、おそらくロードス島から輸出されたワイン壺でした。当時のギリシア世界にはロードス島産のワインが広く流通していたことが知られています。よく見ると、表面を引っ掻いて文字を消した痕が残っています。内容物が変わるたびに書き直していたのでしょうか。アイ・ハヌムの役人たちがギリシア世界とのつながりを感じさせるこの壺を愛用していた様子が伝わってきます。

アイ・ハヌムでは劇場や体育場など、ギリシア都市に共通して見られる施設が発掘されています。市民たちは、劇場でギリシアの悲劇や喜劇に親しみ、体育場で自由な時間を過ごすなど、「ギリシア人」らしい暮らしをしていたと考えられます。バクトリアにギリシア文化が根づいたのは、このような都市の繁栄があったからに他なりません。


グレコ・バクトリア王国が前145年頃に滅びると、バクトリアは周辺の遊牧系部族が侵入する混乱期に入ります。ティリヤ・テペでは、この頃に勢力を拡大した遊牧民の王族の墓が発掘され、おびただしい数の黄金製品が出土しました。これらは第3章で展示しています。


4号墓出土の黄金製品 1世紀


その後、1世紀から3世紀にかけて、バクトリアはクシャーン王朝の支配下に入ります。4章で紹介するベグラムでは、この時期に活発化したシルクロード交易によってもたらされた東西の宝物が発掘されました。


ローマ帝国から伝わったガラス器 1世紀

ティリヤ・テペやべグラムの出土物にも、ギリシアの神々やギリシア神話を題材にした作品が多く含まれています。展示室ではバクトリアに根づいたギリシア文化を実感できるのではないでしょうか。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」

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posted by 小野塚拓造(東洋室研究員) at 2016年04月23日 (土)

 

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はじめに

展示のイチオシやバックヤードの出来事など、トーハクスタッフによる最新情報をお届けします。

 

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