あなたもトーハクボランティアに!ボランティアデーで活動を紹介
12月6日(土)、12月7日(日)の両日、「東博ボランティアデー」が行われました。
この週末は、特別展「日本国宝展」の最終日、それに、庭園公開の最終日にもあたり、館内も大変にぎわいました。
ボランティアによる催しも、例年以上にたくさんの来館者の方々に参加いただきました。
1日ゆっくり滞在し、複数のグループのガイドツアーに参加される方もあり、皆様にお楽しみいただけたようです。
ボランティアも、皆様に楽しんでいただくために、いつも以上に張り切って活動していたようです。
ガイドツアーも、一工夫。
解説するコースを増やしたり、手作りの衣装を着たり、特別な趣向を凝らしたガイドツアーもありました。
また、ボランティアデーだけに行われる「活動紹介ツアー」も、トーハクのボランティア活動に興味を持っている方たちに、多数参加いただけました。
ボランティアは、それぞれ自作の「みどりのライオン」の小旗をもち、活動場所をそれぞれご案内しました。昨年のボランティアデーで紹介ツアーに参加したボランティアが、今年は自分がご案内すると、張り切っていた姿が印象的でした。
直接ボランティアからやりがいや活動内容を聞き、自分もトーハクボランティアになりたいと、応募の決心を固めた方もいたようです。
当館のボランティアは、トーハクが大好きで、その魅力を皆様にも味わっていただきたいと思い、活動しています。
現在、平成27年度から3年間活動するボランティアを募集しています。
応募方法はこちらをお読みの上、郵送でお送りください。1月15日(木)必着で、お待ちしております。
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posted by 鈴木みどり(ボランティア室長) at 2014年12月11日 (木)
2014年11月29日(土)と30日(日)、ファミリーワークショップ「からだが動くエビを作ってみよう」が行われました。
7組ずつ、計14組の小学生とそのご家族37名が参加されました。
このワークショップは、本館1階13室に展示されている「自在置物」(2015年2月8日(日)まで展示)をテーマにしています。
自在置物とは、鉄や銅、銀などで龍、蛇、鳥、甲殻類などをリアルに作り、体の各パーツを自由自在に動かせるようにしたものです。
この日、自在置物についてお話をしてくださったのは、金工を専門とする研究員の伊藤さん。
まず、全員で本館13室に自在を見に行きました。
龍、鯉、伊勢海老、鷲といった、鉄などで作られた本物そっくりの迫力の自在置物を見ます。
そのあと、5室、6室に行き、同じく鉄を材料に作られた刀や甲冑を見ました。
この甲冑を作っていた職人さんが、のちに戦が少ない時代になり、自在置物を作るようになったということです。
そのあと本館地下の教育スペース「みどりのライオン」に戻り、今度は銀で作られた伊勢海老とそのパーツを見せてもらいました。
また、動画で自在置物を実際に動かした様子も見ることができました。
こんなに細かいパーツが組み合わさり、しかも体が動くなんて、すごい技術です。
展示室では見られない、自在に動くさまに釘付けです
そしてとうとう、参加者の皆さんもエビづくりに挑戦。
今日は、さきほど見た銀製の伊勢海老のパーツから型紙を起こしたエビをアルミシートで作ります。
まずは、型紙に沿ってアルミシートから各パーツを切り抜きます。
これを説明にしたがってつなぎ合わせていきます。
作業分担しなくては、時間内に出来上がりません!
全部で64にものぼる細かいパーツを、折り曲げ、貼りあわせ、金具でつなぐのは、忍耐力のいる作業です。
難しいところはお父さんやお母さん、あるいは器用な人が担当。
細かいところは、手の小さいお子さんの方が得意な場合もあります。
自在エビは、家族全員が力を合わせなくては完成しません。
これこそ本当の意味で、「ファミリーワークショップ」と呼ぶべきプログラムかもしれません。
毎年、なかなか時間内に仕上がらないことも多い自在エビワークショップ。
今年参加されたご家族の皆さんは、なんと皆さん時間内に完成させて帰られました!
個性ゆたかなエビがたくさん
最後のパーツである触角をつけ終わり、周りにいたスタッフが拍手で完成を祝福したあるご家族のお父さんは、「このワークショップは、達成感が半端じゃないですねえ~」と一言。
達成感いっぱいの笑顔です
自在置物に込められた作り手の精緻な技を想像し、次に展示室で作品に対面したときには、作り手へのリスペクトなしには見られない、そんな気持ちにさせるワークショップでした。
美しいエビが出来上がりました!
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posted by 藤田千織(教育普及室主任研究員) at 2014年12月10日 (水)
土偶せんぱーい!
こんにちは、トーハクくん。
あ、品川さん! 品川さんは「日本国宝展」の考古資料の担当なんだほ。
だから、土偶せんぱいとも、とっても仲良しなんだほ。
今回の展覧会で出品されている土偶は、思い入れのあるものばかりだから、
今日はぼくが案内しようか?
(さすが、土偶せんぱいのおともだち、親切なんだほ。)品川さん、よろしくお願いしますほ!
早速だけど、ぼくたちが今立っている場所、ここがぼくのおすすめの立ち位置なんだ。
あ! 土偶5体に囲まれているほ!!
第1会場の土偶コーナー。奥に3体、手前に2体の土偶が
展示されています
そう、そうなんだよ! 縄文人の「祈り」が形となったのが土偶。
そんな土偶5体に囲まれた、ここは日本国宝展の会場に生まれたパワースポットなんだ!!
(な、何だかすごく興奮しているんだほ…。)
こうやって見比べてみると、いろんな土偶があるんだほ。
実際は、たくさんのお客様でぐるりと見回すことは難しいけど、
そのかわり1体ずつじっくりと見て、その違いにぜひ注目して欲しいんだ。
品川さんは土偶せんぱいが大好きなんだほ。
「仮面の女神」はいいよね。ぼくが学生の時、「考古学者として生きていくんだ!」って
決意した頃に見つかったのがこの土偶。
今回の展覧会で「昔の馴染みに久しぶりに会ったな」って感じがするんだ。
品川さんの「青春の土偶」なんだほ~!
国宝 土偶(仮面の女神)
縄文時代(後期)・前2000~前1000年
長野県茅野市中ッ原遺跡出土
茅野市蔵 尖石縄文考古館保管
展示期間:11月21日(金)~12月7日(日)
造形も気に入っていて、顔のかわいさに、ぜひ多くの人に気がついて欲しい!
頭の後ろの仮面を結んだような表現も、丁寧に作っているなって感じがして好きだなぁ。
頭の後ろにも注目です。展示ケースの横からどうぞ
(いきなり土偶愛が止まらないほ…)
それに、土偶の表面のフレッシュさと言ったら! 他の土偶ほど表面が荒れていなくて、
まるで、ついさっき土の中から掘り出したかのようなみずみずしさなんだ。
(さすがにお腹いっぱいだほ…)
それからね…
(カットイン)あー! あそこに「縄文のビーナス」せんぱいがいるほ!
国宝 土偶(縄文のビーナス)
縄文時代(中期)・前3000~前2000年
長野県茅野市棚畑遺跡出土
茅野市蔵 尖石縄文考古館保管
おっ「縄文のビーナス」かぁ。この土偶は、縄文時代のもので初めて国宝に指定されたものなんだ。
「『縄文のビーナス』が国宝への扉を開いてくれたおかげで、多くの人が縄文時代に関心を持ってもらえた」って、
ぼくは感謝しているんだよ!
あれ? お腹がぽっこりしているほ…?
これは妊娠した女性を表現しているんだよ。土偶には、安産や豊穣の祈りが
込められていたんだろうね。そしてこっちが「合掌土偶」。
国宝 土偶(合掌土偶)
縄文時代(後期)・前2000~前1000年
青森県八戸市風張1遺跡出土
八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館蔵
まさに祈りの姿って感じがするでしょう? しかも、この土偶には補修の痕があるんだよ。
壊れた土偶をわざわざ直したってこと?
そう、縄文時代の人たちはこの土偶を大切にしていたんだ。
「縄文のビーナス」や「合掌土偶」からは、土偶に込められた祈りの気持ちがよく伝わってくるね。
「合掌土偶」せんぱいも女のひとって聞いたけど…本当なんだほ?
「縄文のビーナス」せんぱいと比べると、かなり違って見えるほ。
トーハクくん、いいところに気がついたね。じゃあ、この「縄文の女神」を見てごらん。
(左)国宝 土偶(縄文の女神)
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山形県舟形町西ノ前遺跡出土
山形県蔵 山形県立博物館保管
展示期間:11月21日(金)~12月7日(日)
(右)横から見るとスレンダーさがわかります
わ、”すれんだー”なせんぱいだほ!「縄文のビーナス」せんぱいとはまったく違うんだほ。
でも、「縄文のビーナス」と「縄文の女神」は、ほぼ同時期のものなんだ。だけど、こんなに違う。
なんでかな…???
ポイントは土偶の出身地。オーバーなほどに女性らしさを強調する「縄文のビーナス」に比べると、
あまり女性っぽくない「合掌土偶」や「縄文の女神」は、東北の土偶なんだ。
実はね、東北の土偶はもっと古い時期のものから一貫して、女性っぽい表現は控えめなんだよ。
なるほー! 控えめなのは、東北地方の土偶の特徴なんだほ!
そうそう。東北の人は、はにかみ屋さんなんだ。
(ちなみに品川研究員は東北の出身です。)
それにしても、「縄文の女神」せんぱいは、とってもシンプルにできているんだほー。
「縄文の女神」は削ぎ落とされた美しさ。それに対して、「中空土偶」はとっても凝っているんだ。
(左)国宝 土偶(中空土偶)
縄文時代(後期)・前2000~前1000年 北海道函館市著保内野遺跡出土
函館市蔵 函館市縄文文化交流センター保管
展示期間:11月21日(金)~12月7日(日)
(右)頭部の破損箇所をのぞいてみてください。その薄さがわかります
いろんな文様があるほー!
この文様の緻密さ! 文様のあるところと無いところのバランス!
ちゃんと考えて、計画的に作られたと思うんだ。
それに、中が空洞でありながらこの薄さ! 技の粋が詰まっているよね。
土偶って見どころがいっぱいだほ。奥が深いんだほ。
そうだね。ぼくたち考古学者は、目の前の資料だけを見るんじゃなくて、
その背景にあるもののことも考えているんだ。
土偶を見るときも、「これはあの土偶に似ているな」、「同じ時期の土器はこれだな」、
「出土した遺跡はこんな場所だったな」というように、
その土偶に関係のありそうな、たくさんのことを考えながら見るようにしているんだよ。
そんなにたくさん考えているんだほ…!
だから、ぜひ、この5体の土偶たちのふるさとを訪ねてみて欲しいな。
どんなところで、この土偶たちが作られたのか見てきてください。
そうしたら、土偶の魅力が伝わってきて、ますますおもしろくなります。
いつかぼくも見に行くほー! 品川さん、今日はありがほーございました。
もっと活躍して、土偶せんぱいのように品川さんから
熱く語ってもらえるようになりたいと思った、
トーハクくんなのでした
「日本国宝展」の会期は残り1週間をきりました。
現在、国宝に指定されている土偶5体すべてを一度にご覧いただける貴重な機会です。
ぜひ、お見逃しなく!
カテゴリ:研究員のイチオシ、2014年度の特別展
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posted by トーハクくん at 2014年12月01日 (月)
「日本国宝展」(2014年10月15日(水)~12月7日(日)、平成館特別展示室)は、
11月28日(金)に30万人目のお客様をお迎えしました。
多くのお客様にご来場いただきましたこと、心より御礼申し上げます。
30万人目のお客様は、栃木県足利市よりお越しの藤田四郎さんです。
藤田さんには、東京国立博物館長 銭谷眞美より、記念品として特別展図録と、
展覧会のグッズショップ「国宝店」でも人気の
「縄文のビーナス」ぬいぐるみなどを贈呈しました。
「日本国宝展」30万人セレモニー
藤田さんご一家と館長の銭谷眞美(右)
11月28日(金)東京国立博物館 平成館エントランスにて
美術館がお好きだという藤田さんは、当館には数えきれないほど(!)
お越しくださっているとのこと。
前回は特別展「台北 國立故宮博物院―神品至宝―」をご覧になったそうです。
度々のご来館、誠にありがとうございます。
本日は、日本国宝展をご覧になるために、栃木からいらっしゃったそうです。
「国宝が一体どんな基準で決められているのか、興味があります。
実際に国宝の作品を見て考えてみたいと思いました」と、お話くださいました。
ちなみに、お目当ての作品は国宝「善財童子立像」なのだそうです。
ポスター等ですっかりお馴染みですね。
「日本国宝展」は、ご好評につき、本日11月28日(金)~12月7日(日)は
開館時間を延長して20時までご覧いただけます。入館は閉館の30分前までです。
(ただし、12月1日は休館、12月2日は17時まで)
どうぞお見逃しのないように、皆様のご来館をお待ちしています。
カテゴリ:news、2014年度の特別展
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posted by 高桑那々美(広報室) at 2014年11月28日 (金)
「日本国宝展」第3室で展示している「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」は
実に2万点以上の古文書からなる国宝です。
今回の展覧会に出品のはそのうちのわずか12点。文字どおり九牛の一毛です。
もとは、京都駅の南側にひときわ高く見える国宝「五重塔」で有名な
東寺(教王護国寺)に伝わったものですが、現在では京都府立総合資料館が
所蔵しており、目録の作成や修理を行うとともに、釈文(しゃくもん=解読文)
をまとめた書籍の刊行も継続しています。
平安時代から室町時代までの東寺は、荘園領主として全国に寺領の
荘園を持ち、さまざまな貢納物を受け取って寺院の経営をしていました。
新見庄(にいみのしょう)は東寺領の中でも有力な荘園の一つです。
現在の岡山県新見市に含まれます。
今では山の中という印象が強いのですが、河川交通が使われていた時代には、
瀬戸内海との間を船が往来し定期的に市場も開かれる、
人や物の行き来の盛んな土地でした。
室町時代になると、荘園の中では農民の経済力が高まり、
それまでの支配者であった寺院や武家の支配から離脱しよう
という動きが盛んになります。新見庄も例外ではありませんでした。
応仁の乱の少し前の寛正年間(1460~1463)、新見庄ではそれまで
東寺への年貢納入を請け負っていた有力武士の安富(やすとみ)氏が
農民に対して過剰な負担を強いたため、結束した農民によって
追放されるという事件が起こりました。
地元の土豪と農民たちは、より負担の少ない支配を目論んで
東寺による直轄経営を求めたので、寛正4年に京都から
東寺の代官、祐清(ゆうせい)が下向してきました。
ところが祐清は地元の期待に反して、年貢の納入や京上夫(京都での
仕事への徴発)などの負担を増やし、あまつさえ地元の有力者を
死罪に処するという厳しい態度に出ました。
このような代官と農民たちの対立が深まる中で、庄内を巡見していた祐清は
死罪となった人物の縁者によって殺害されてしまいます。
実は祐清は、現在でいう単身赴任で新見庄にやってきたため、
地元有力者の一人であった福本という人物の妹が、その身の回りの世話をしていました。
この女性が「たまかき」です。
たまかきは祐清殺害後「こんな事になってしまって、御いわたしさは
申しようもありません」と悲しみながらも、遺品を処分してお金を工面し、
供養した僧への支払いに宛てるなどして、祐清の弔いを済ませました。
そして一段落ついたところで、手紙を書いて経過を報告するとともに、
残った「白い小袖一、紬の表一、布子一」を祐清の形見として
いただきたいと願い出たのです。
手紙は東寺まで届けられ、一連の事件の経過を示す文書として保管されました。
約550年の時を経て、今回展示している「たまかき書状」がそれです。
国宝 東寺百合文書のうち「たまかき書状」
室町時代・15世紀 京都府立総合資料館蔵
展示期間:11月18日(火)~12月7日(日)
(部分) たまかきが欲しいと願いでた形見の品を含む
祐清の遺品のリスト
たまかきの願いがかなったかどうかを示す史料は残念ながら残されていません。
室町時代以前、公家や武家ではなく地方に住むいわば一般庶民の女性の
筆跡が残ることは稀で、「たまかき書状」はきわめて珍しい例であり、
当時の日本社会における識字(リテラシー)の状況を物語る史料として貴重です。
また、思いがけない事件に遭遇した女性の心情を示し、
現在なお私たちの心をうつものがあります。
このような文書もまた日本の歴史の一側面を明らかにする国宝です。
隣り合って展示している宮廷の女性の筆跡、国宝「後奈良天皇女房奉書」と
比べてご覧いただけると、また興味深いのではないかと思います。
国宝 東寺百合文書のうち「後奈良天皇女房奉書」
室町時代・天文2年(1533) 京都府総合資料館蔵
展示期間:11月11日(火)~12月7日(日)
大好評をいただいている「日本国宝展」は残りあと10日。
どうぞお見逃しのないように!
カテゴリ:研究員のイチオシ、2014年度の特別展
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posted by 田良島哲(調査研究課長) at 2014年11月27日 (木)