2012年から耐震工事のため休館していた黒田記念館が、いよいよ2015年1月2日(金)にリニューアルオープンします。
展示室は2階。
アールヌーヴォー調の階段の手すりのデザインも見どころのひとつです。
建築意匠もお楽しみいただけます
階段を上って左手が新たに設けられた特別室。
黒田清輝の代表作「湖畔」「智・感・情」「舞妓」「読書」のみの贅沢な空間となっています。
作品との調和にこだわって生まれた、落ち着いた色調の室内で、ゆったりとご鑑賞いただけます。
特別室は年3回、期間限定での公開となります。
2015年の公開日程は下記の通りです。
第1回:2015年1月2日(金)~1月12日(月・祝)
第2回:2015年3月23日(月)~4月5日(日)
第3回:2015年10月27日(火)~11月8日(日)
反対側で黒田の銅像(高村光太郎作です!)が迎えてくれる黒田記念室は、設立当初より黒田の画業を顕彰する部屋として作られ、作品の公開がされてきました。
天井にもご注目。漆喰の花飾りが特徴的です
リニューアル後は、およそ6週間ごとに展示替えをしながら所蔵作品を公開いたします。
写生帖や書簡など、黒田の人物像に迫る作品にも触れていただけます。
アトリエのイメージも再現
これだけの贅沢空間が、観覧料無料でご覧いただけます。
初もうでや上野公園散策の折にぜひ、お立ち寄りください。
黒田記念館
開館時間:9:30~17:00 (入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日・休日の場合は開館、翌火曜日休館)、年末年始
ただし原則として、ゴールデンウィーク期間とお盆期間は無休
※開館時間、休館日は時期により変動あり。東京国立博物館に準ず。
観覧料:無料
カテゴリ:news
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posted by 奥田 緑(広報室) at 2014年12月24日 (水)
トーハクに多くの貴重な写真アルバムがあるのはご存知でしょうか。
当館の写真資料は質量共に日本有数で、その中には重要文化財2件が含まれており、うち1件が写真アルバム「旧江戸城写真帖」です。写真資料は主に本館15室で展示が行われており、一部はインターネット(東京国立博物館情報アーカイブ古写真データベース)で公開されています。
重要文化財 旧江戸城写真帖装丁 蜷川式胤編 横山松三郎撮影 高橋由一着色、明治4年(1871) ※展示は未定
重要文化財 旧江戸城写真帖より 蜷川式胤編 横山松三郎撮影 高橋由一着色、明治4年(1871) ※展示は未定
私たちにも身近な写真ですが、当館所蔵の写真アルバムは約140年の時を重ねており、その保存には他の美術工芸品同様の注意を払わねばなりません。むしろ環境に敏感なため、より注意が必要な文化財に属します。写真そのものの保存については世界各国で議論され、様々な方法が考案されていますが、写真アルバムの保存については確固たるものがないのです。例えば、「ガラス乾板は縦置きが基本で、状況によっては横置きにする」といった具合に保存計画するのですが、写真アルバムは縦置きが良いのか、横置きがよいのかの基準もないのです。
墺国維府博覧会出品撮影 横山松三郎撮影 明治5~6年(1872~73)
その原因は、写真アルバムが写真資料として、本として、そして美術品としての側面を併せ持つため、分野を横断した保存方法の研究がなかなか進まない現状にあります。
当館の写真アルバムだけみても、和紙に写真が固定されて和綴じのものもあれば、画帖のような装丁をしたもの、洋紙に糊で写真が貼りこまれた洋書のようなものまであります。更には顔料等で著色されていたり、墨による書き込みがあったり、地図が付いていたりしています。また、当館所蔵ではありませんが、漆芸の装飾を表紙に施したものもあります。
このように一筋縄ではいかない写真アルバムの保存ですが、当館では写真アルバムそれぞれの形態や状態に合わせた最善の保存方法を選択しています。しかし、更により良い写真アルバムの保存を目指し、さる11月5日にアメリカ合衆国デラウェア大学から写真保存の世界的権威であるDebra Hess Norris氏をお招きして研究会を催し、欧米の状況を伺うのと同時に当館の写真アルバムの保存方法について意見交換を行いました。
資料を閲覧するDebra Hess Norris氏(右から2人目)
江戸の面影を残す明治初期の日本の姿が末永く見られるように、現状に満足せず、適した保存方法の模索を日々行っています。
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posted by 荒木臣紀(調査分析室長) at 2014年12月22日 (月)
動物好きにもたまらない? 2015年春、「鳥獣戯画-京都 高山寺の至宝-」展開催!
ウサギ。ネコ。
カエル。サル。
いかがでしょう? とある作品のなかから愛らしい動物たちをピックアップしてみました。
この動物たちはすべてこの特別展に出品される作品に登場します。
何の展覧会? どの作品?
え? わかりませんか? もう一度、始めのウサギを見てみてください。
どこかで見たことのあるウサギですよね?
そう! これらはすべて、あの有名な国宝「鳥獣戯画」に出てくる動物たち。
国宝 鳥獣人物戯画 甲巻(部分) 平安時代・12世紀 京都・高山寺蔵
*この場面は後期(5月19日(火)~6月7日(日))に展示
トーハクでは来春、特別展「鳥獣戯画-京都 高山寺の至宝-」(2015年4月28日(火)~6月7日(日)、平成館)を開催します!
開催に先立ち、2014年12月15日(月)、同展の報道発表会を行いました。
当日は主催者を代表し、当館の島谷弘幸副館長と、高山寺の田村裕行執事がご挨拶を申し上げました。
本展覧会は、あの誰もが一度は目にしたことのある鳥獣戯画の全貌をご紹介し、さらに、その伝来した京都・高山寺、そして同寺を再興した明恵上人ゆかりの至宝をかつてない規模で展観するものです。
本展覧会担当の土屋貴裕研究員からは、熱のこもった展覧会概要の説明がありました。
東京国立博物館 土屋貴裕研究員
演台前面にも、鳥獣戯画の切り抜きが! 館内でも人気が高い、烏帽子をかぶったネコ
さて本展覧会、タイトルにもなっている「鳥獣戯画」ばかりに注目してしまいがちですが、それは実にもったいない!
世界文化遺産にも登録されている高山寺は、多くの文化財を守り伝えてきた仏教美術の一大拠点。
鳥獣戯画のほかにも、貴重な聖教・典籍類とともに伝えられてきた多くの仏教美術など、見どころが満載です。
仏教美術、というと硬い印象を受ける?
そんな方向けに、土屋研究員の解説した作品の中から、特に愛らしい作品をご紹介しましょう。
重要文化財 子犬 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵 *通期展示
明恵上人もそばにおいて、愛玩したと伝わるこの木彫りの子犬。この愛くるしさ、たまりません
高山寺には「栂尾開帳(とがのおかいちょう)」と呼ばれる儀礼でも使用された多くの動物彫刻が伝わります
重要文化財 梵天火羅九曜図(ぼんてんからくようず)(部分) 平安時代・文治5年(1189) 京都・高山寺蔵
*前期(4月28日(火)~5月17日(日))展示
仏画のお手本白描図像のひとつ。鳥獣戯画の伝来を考えるうえでも貴重な資料です
また、高山寺を中興した明恵上人も魅力的な人物。
自らに厳しい修行を課しつつ、多くの後進を育て、さらに身寄りを失った女性たちを保護するなど、乱世に救いを求める人々から慕われたことでも知られています。
様々なエピソードで彩られた上人のひととなりや信仰世界が感じられるゆかりの作品は、日本の仏教美術の中でもきわめて個性的といわれており、この展覧会のもうひとつの見どころです。
ん?また難しそう?
では、ここでも動物(?)に注目してみましょうか。
国宝 明恵上人像(樹上坐禅像) 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵 *前期(4月28日(火)~5月17日(日))展示
高山寺の裏山で坐禅を行う明恵上人。上部に自筆の賛がみえます
左上の樹上で上人を見守る一匹のリスにも注目!
国宝 華厳宗祖師絵伝(けごんしゅうそしえでん) 義湘絵 巻第三(部分) 鎌倉時代・13世紀 京都・高山寺蔵 *前期(4月28日(火)~5月17日(日))展示
高山寺に伝わるもう一つの国宝絵巻。明恵上人が慕った新羅の僧・義湘の事蹟を描いています
龍は、義湘に恋心を寄せる善妙という女性が、彼を守護するために変じた姿
もちろん、4年をかけて解体修理され新しく生まれ変わった鳥獣戯画も、甲・乙・丙・丁の全4巻が一挙公開されます。
(会期中、展示場面の変更があります。)
国宝 鳥獣人物戯画 乙巻(部分) 平安時代・12世紀 京都・高山寺蔵
*この場面は後期(5月19日(火)~6月7日(日))に展示
さらには、絵巻から掛け軸に仕立て直されて国内外に伝来する断簡もすべて集結!(一部前期展示のみとなります。)
鳥獣人物戯画 甲巻 断簡 平安時代・12世紀 *通期展示
現存する全ての鳥獣戯画が見られる、まさに鳥獣戯画の全貌をご覧いただける展覧会なのです。
なお、展覧会公式サイトではスペシャルコンテンツとして、鳥獣戯画全4巻全場面を一挙公開中。
前期と後期での展示場面の変更も一目瞭然です。
展覧会前の予習もばっちり
このほかに報道発表会では、国宝「鳥獣人物戯画」の全4巻・全場面を掲載した「豆本セット前売券(1,800円)」が限定2,000枚で販売されることも明らかにされました。
(展覧会公式サイト、セブンイレブン店頭などで2月1日(日)から販売予定。豆本は、会期中の本展会場にて引き換え。)
鳥獣戯画を手元において鑑賞できるスグレモノ!売り切れ必至です。
魅力あふれる作品やイベント情報などは、今後もこの1089ブログでご紹介していきます。
どうぞ来年4月の開幕をお楽しみに。
カテゴリ:news、2015年度の特別展
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posted by 田村淳朗(広報室) at 2014年12月18日 (木)
能面の歴史は不明な点も少なくありませんが、室町時代までは「創作の時代」、安土桃山時代以降は「写しの時代」とおおよそ区分できます。
その分岐点は豊臣秀吉。秀吉は能を熱狂的に愛好しました。そして、大名の間で能を観るだけでなく、演じることが流行しました。
すると能面の需要が大幅に増え、観世、宝生、金春、金剛等の宗家に伝来した古い面を写し、所有するようになったのです。これが「写しの時代」です。
この写しは、能面を鑑賞するうえで重要なポイントになのですが、今回の特集「日本の仮面 能面 創作と写し」(本館14室、2015年1月12日(月・祝)まで)のように創作の時代の面とその写し、あるいは同じ面の複数の写しを展示して、写しのあり様をご覧いただく機会はあまりありませんでした。
いくつか見どころをご紹介します。
例えば鼻瘤悪尉(はなこぶあくじょう)を見てください。
(左) 能面 鼻瘤悪尉 室町~安土桃山時代・16世紀
(右) 能面 鼻瘤悪尉「杢之助打」朱書 江戸時代・17~18世紀
額や眉間の皺もそっくりです。裏面も注目してください(展示では小さな写真で示しています)。
左の面の右上に「文蔵作」とあり、右の面には「文蔵作正写杢之助写」と書いてあります。
つまり、左の面の写しが右の面です。
額の裏のノミ跡、左目の外側と上の2ヵ所にある布の貼り方などまでそっくりです。左の面の布貼りは亀裂か割れを補修したものですが、右の写しは忠実に写すために割れていないのに布を貼っているのです。
能の観客から見えない裏、しかも補修跡まで写されていることがあるのです。
つぎは曲見(しゃくみ)という面です。
(左) 重要文化財 能面 曲見 金春家伝来 室町時代・15~16世紀
(右) 重要文化財 能面 曲見 金春家伝来 江戸時代・17世紀
見分けがつかないくらい似ていますが左が創作、右が写しです。額の左右(右は眉の下、左はもう少し下)に傷があります。この傷も忠実に写しています。傷などない方がいいはずですが、すべてが大事な面と同じであることを求めたのでしょう。
このように能面では傷や剥落の様子も忠実に写すことがしばしば行われます。
今回展示している中に、雪の小面と呼ばれる面の写しが4面あります。雪の小面とは、豊臣秀吉が愛蔵していたと言われる雪月花の三つの小面のうちの一つです。現在は京都金剛家に所蔵されています。
写真は面打・河内の焼印「天下一河内」がある写しです。
(左) 重要文化財 能面 小面 「天下一河内」焼印 金春家伝来 江戸時代・17世紀
(右) 面裏
雪の小面の面裏には二つの大きな特徴があります。一つは両頬のあたりが焦げ茶色になること、
もう一つは鼻裏の刳りの右方にある肋骨状のノミ跡です。
雪の小面を写した、河内の焼印のある小面にはこのほか面白い特徴があります。
鼻の頭に円形の傷です。
この傷は今回展示している「出目満昆」印と根来寺所蔵、二つの雪の小面の写しにも見られます。
(左) 重要文化財 能面 小面(鼻部分) 「出目満昆」焼印 金春家伝来 江戸時代・17~18世紀
(右) 能面 小面(鼻部分) 江戸時代・17~18世紀 和歌山・根来寺蔵
ところが、京都金剛家所蔵の雪の小面にはこれが見当たりません。それがなぜなのかはわかりません。また、今回展示している4面のうち1面にも見当たりません。
京都金剛家の雪の小面は塗り直しをして傷がかくれてしまったのでしょうか。
さらに今回出品していませんが、「天下一河内」の焼印がある「十六」の面裏に「雪の小面」と共通する特徴があるのも不思議です。「十六」は平敦盛の役に用いる男役の面ですから。
参考:能面 十六 「天下一河内」焼印 江戸時代・17世紀 ※今回は展示されていません
不明な点をこれから研究して解決すべく、調査を重ねています。その成果を公開してまいりますので、能面の展示にご注目ください。
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posted by 浅見龍介(京都国立博物館列品管理室長) at 2014年12月12日 (金)
あなたもトーハクボランティアに!ボランティアデーで活動を紹介
12月6日(土)、12月7日(日)の両日、「東博ボランティアデー」が行われました。
この週末は、特別展「日本国宝展」の最終日、それに、庭園公開の最終日にもあたり、館内も大変にぎわいました。
ボランティアによる催しも、例年以上にたくさんの来館者の方々に参加いただきました。
1日ゆっくり滞在し、複数のグループのガイドツアーに参加される方もあり、皆様にお楽しみいただけたようです。
ボランティアも、皆様に楽しんでいただくために、いつも以上に張り切って活動していたようです。
ガイドツアーも、一工夫。
解説するコースを増やしたり、手作りの衣装を着たり、特別な趣向を凝らしたガイドツアーもありました。
また、ボランティアデーだけに行われる「活動紹介ツアー」も、トーハクのボランティア活動に興味を持っている方たちに、多数参加いただけました。
ボランティアは、それぞれ自作の「みどりのライオン」の小旗をもち、活動場所をそれぞれご案内しました。昨年のボランティアデーで紹介ツアーに参加したボランティアが、今年は自分がご案内すると、張り切っていた姿が印象的でした。
直接ボランティアからやりがいや活動内容を聞き、自分もトーハクボランティアになりたいと、応募の決心を固めた方もいたようです。
当館のボランティアは、トーハクが大好きで、その魅力を皆様にも味わっていただきたいと思い、活動しています。
現在、平成27年度から3年間活動するボランティアを募集しています。
応募方法はこちらをお読みの上、郵送でお送りください。1月15日(木)必着で、お待ちしております。
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posted by 鈴木みどり(ボランティア室長) at 2014年12月11日 (木)