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1089ブログ

トーハク仏像選手権始まる!

2012年9月25日(火)より、東京国立博物館140周年特集陳列「館蔵仏像名品選」(本館11室、12月2日(日)まで)が始まりました。
この会期にあわせ、「トーハク仏像選手権」も開催中です!

トーハクでは、日本の江戸時代以前の仏像をおよそ300件所蔵していますが、そのうち67件(法隆寺献納宝物が52件)が重要文化財という、充実したコレクションを誇ります。
展示室では、その中から選りすぐりの仏像13件が皆様をお待ちしております。(注:法隆寺献納宝物は含みません)

足繁く来館してくださる方々にはおなじみの像ばかりかもしれません。
しかし、今回は展示台の高さ、照明に工夫を凝らし、衣の色や模様、鋭い玉眼、優美で繊細な装飾など
これまでは気づかなかった見え方で、細部にも新たな発見が得られるのではないかと思います。


それでは、お気に入りの仏像を探しにいきましょう。


入口で出迎えてくださるのは、おそらく一番人気か?と予想される、この方。

菩薩立像
重要文化財 菩薩立像 鎌倉時代・13世紀

後姿もぬかりない、いわば優等生で美人なタイプ。


そして、入って右手のケースには、かわいらしいサイズの方が。

文殊菩薩像
文殊菩薩立像 鎌倉時代・13世紀

知恵をつかさどる文殊さんだけに、キリっと賢そうなお顔立ちをしています。


そして、この方々。

十二神将立像
重要文化財 十二神将立像 伝浄瑠璃寺伝来 鎌倉時代・13世紀

眼光鋭く、暗闇に浮かび上がる姿は、さながら戦隊ヒーローのよう。


こちらは宋風の阿弥陀如来さま。

阿弥陀如来立像
阿弥陀如来立像 京都・泉涌寺伝来 鎌倉時代・13世紀

つやつやとした不思議な質感は、なんと蒔絵によるもの。
大変珍しい作例だそうです。衣の模様にも注目です。


最後に、筆者イチオシのこの方。

千手観音菩薩坐像
千手観音菩薩坐像  南北朝時代・14世紀

切れ長の目、美しい肌…。壁に映る光背の影までカッコいい…。
ため息がでるほどのイケメンです。


いかがでしょうか。こちらはほんの一例です。

ぜひ、展示室に会いにきてください。
そして、お気に入りの仏像が見つかったら、「トーハク仏像選手権」に投票をお願いいたします!

 

カテゴリ:ウェブおすすめコンテンツ彫刻

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2012年09月28日 (金)

 

特集陳列「動物埴輪の世界」の見方5─番外編

今回は、特集陳列「動物埴輪の世界」(2012年7月3日(火)~10月28日(日))に関連したいくつかのトピックをご紹介します。
特集陳列が行われている考古展示室には、ほかにも動物埴輪が展示されています。


まず、特集陳列の展示ケースから見て奥に、広い展示室の中央を仕切るように設置されている弓なりに弯曲した壁形ケースがあります。

考古展示室見取図
考古展示室見取図(Ⅰ-4~6:古墳時代Ⅰ~Ⅲ[3~5c]、Ⅰ-8:古墳時代Ⅴ[7c]、Ⅱ-7:テーマ・埴輪と古墳祭祀)

左(南)端の3面ガラスのケースには、大阪府伝安閑天皇陵古墳から出土したと伝えられる重要文化財のカットグラス(ガラス碗)が展示され、両面には大小の窓形展示ケースが配置されています。
奥にある人物埴輪などを展示する(前方後円墳をイメージした)ヒョウタン形展示台[テーマ・形象埴輪の展開]と向かいあう位置に、小さな窓形展示ケースがあります(見取図★1)。


現在、ここには特集陳列に合わせて、重要文化財の猿形埴輪を展示しています。
腰部から下と両腕部分が失われていますが、(窓の外を眺めるように?)頸を傾げてこちらを見つめるような愛らしい表情をもち、当館の形象埴輪の中でももっとも人気の高い埴輪の一つです。

この猿形埴輪は100年(!)以上前の1907(明治40)年に当館に寄託されてから、常設展示などで長らく活用させて頂いてきた経歴があり、明治時代からすでによく知られた有名な埴輪です。
平成11年度に購入の機会を得て当館蔵となり、現在、常設展示やウェブサイトなどでも広く公開・活用されています。

猿形埴輪
重要文化財 埴輪 猿 茨城県行方市 大日塚古墳出土 古墳時代・6世紀(12月16日(日)まで考古展示室にて展示)
(左)猿形埴輪展示風景、(中)猿形埴輪全景、(右)猿形埴輪部分(背面)


さて前回、鹿形埴輪には振り返るポーズをもつ例が多いことが紹介されましたが、この猿の振り返るような“仕草”には少々別の意味があるようです。
注目点は、この猿の背中の部分です。出土した時に農具などで付いたと考えられる頭部や胴部の傷痕が痛々しい中で、よく見ると背中には数ヵ所の粘土が剥(は)がれたような痕が見られます。
とくに両肩部後ろ側の対称的な位置には、Y字形に繋がる二つの小ぶりな楕円形の剥離があり、背中の大きな剥離痕と併せて考えると、どうやら子猿が両“手”で親猿の背中に必死にしがみついていた姿を想定することが出来ます。
このように考えると、この猿形埴輪の特徴的な仕草は、子猿の様子を心配そうにうかがう母猿の表情といえそうです。

これまでのブログ(第2~4回)でご紹介してきた鶏・水鳥形埴輪や狩猟に関係した猪・犬形埴輪では、首輪や鈴・紐などの人間とのつながりを示す表現の有無、つまり人間が飼育している動物か野生の動物か否かが、いわば“キーワード”でした。
この猿形埴輪には、首輪や鈴などの表現は見られないようですので、野生の猿の姿を象(かたど)った埴輪と考えられます。
実は、猿形埴輪は大変例が少なくほとんど唯一の例で、比較する材料がないためにその意味はまだよく解っていません。
しかし、おそらく他の動物埴輪にはみられない特徴的な“親子”の表現にヒントが隠されているに違いありません。


ここでもう一度、鳥形埴輪を見てみると、これまで(第2回第3回)に少しだけ触れたツル・サギ形の水鳥形埴輪と鷹形埴輪にも、同じような区別があります。
サギ・ツル形の埴輪はやはり野生の鳥たちを表現していると考えられるのに対し、鷹形埴輪は多くが人物埴輪と一体に表現されるという著しい特徴があります。
また、猛禽類の鷹の特徴である鋭く曲がった嘴(くちばし)や短い頸の表現にとともに、尻尾(しっぽ)に鈴の付いた紐の表現が多いことも顕著な特徴です。


鷹匠形埴輪実測図
鷹匠形埴輪実測図 (左:全体、右:鷹形部分)(群馬県オクマン山古墳出土)(太田市教育委員会 1999『鷹匠埴輪修復報告書』より)

群馬県オクマン山古墳出土の鷹匠埴輪は、鍔(つば)の付いた立派な帽子に上げ美豆良(みずら)を結い、籠手(こて)を着けた腕に、尻尾に鈴が付いた鷹を止らせていて、まさに“王者の鷹狩”を彷彿(ほうふつ)とさせます。
これらの鷹を象った埴輪は、明らかに鷹狩りの鷹と鷹匠(たかじょう)の姿を表現した埴輪と考えられ、明確に人間社会の一部に位置づけられた鳥の姿を伝えています。

8世紀の万葉集にも、人間に飼われた鷹の姿を描いた次のような表現がみえます。
『万葉集』巻17、第4011番歌、放逸(ハナ)せる鷹を思ひて、夢(イメ)に見て感悦(ヨロコ)びて作る歌一首 
「 [前略] 鷹はしもあまたあれど 矢形尾の 吾(ア)が大黒に〔大黒は蒼鷹の名なり〕 白塗りの 鈴取つけて
朝狩りに 五百つ鳥立て 夕狩りに 千鳥踏立て 追うごとに 許すことなく [後略] 」

飼い主はいつもたくさんの鳥を獲って手許に確実に戻ってきた愛鳥の蒼(あお)鷹を「大黒」と名付け、尻尾に銀メッキを施した鈴を付けて可愛がっていた様子が詠われています。
鷹形埴輪にみられた尻尾に鈴を付ける風習との一致も注目されます。
奈良時代には王権の一部としての鷹狩りに加え、貴族階級の人々の間にも鷹狩りの風習が拡がり、愛玩された鷹の姿を伝えています。

(あの“あばれン坊将軍”などの・・・)テレビの時代劇でもおなじみですが、江戸時代の将軍は武勇の嗜(たしな)みとして、しばしば鷹狩りに出掛けたことはよく知られています。
(あまり合戦には役に立ちそうもありませんので・・・)まさに、“王者”のDNAが受け継がれている姿といえます。

鵜や鷹形の埴輪は、鵜飼いや鷹狩りの風習とその性格が古墳時代に遡ることを教えてくれますが、前回紹介された狩猟をモチーフとした埴輪のもつ性格が、中世以降にも引き継がれていることは大変興味深いことです。
これらの鳥形埴輪は、現代にもつながる人間社会とは切っても切れない関係にあった、(もちろん人間の都合ですが・・・)選ばれた動物の姿を表現した造形の典型で、動物埴輪の性格の根本を如実に物語っているといえそうです。


さて、さらに進んで、ヒョウタン形埴輪展示台の向こう側に見える壁付ケースの中にも、馬具展示コーナー[古墳時代IV・地方豪族の台頭]の一部として馬形埴輪が展示されています(見取図★2)。
いわゆる「飾り馬」とよばれる乗馬用の馬を象った埴輪で、金銀色に輝く装飾性の高い鞍や鐙と馬をコントロールする轡のほか、やはり煌(きら)びやかな金銀装の杏葉や雲珠など、各種の飾りが着けられていることが特徴です。

馬形埴輪展示全景

馬形埴輪
(上)馬形埴輪展示風景、(下左)馬形埴輪 群馬県内出土 古墳時代・6世紀 全景、(下右)馬具名称パネル

このコーナーでは、実際の馬具を種類別にまた年代順に展示していますが、それぞれの装着位置を馬形埴輪と馬具の名称を入れたパネルで示しています。
馬具の名称と用途は少々難しいため(すみません…)、図解と実物の馬形埴輪で分かり易く展示しているコーナーですので、本特集陳列と併せて、是非ご覧ください。
なお、馬形埴輪の意味については、馬や乗馬の歴史なども含めて改めてご紹介する予定です。


最後に、クイズをひとつ・・・。
特集陳列の動物埴輪のうち、“一匹または一羽”だけ、実は観覧者のお客様に少々“失礼な”姿勢(ポーズ?)のヤカラが居ます。
ステージや舞台でも、(人間・動物を問わず)出演者の顔は観客席に向いていることが基本ですので、“あさって”の方向や知らんふりはイケマセンね。
埴輪の遺存状態で大きく壊れている部分が大きかったために、このような向きにしか展示出来なかったのが理由ですが・・・(けっして躾(しつけ)が悪かった訳ではありません)。

これまでのブログ(第1~4回)にお付き合い頂いた読者の皆さんは、すでに鶏・水鳥、犬・猪などの動物の種類を見分けるポイントや、習性や役割を踏まえた動物埴輪の仕草や特徴を読み取る眼が出来上がっていると思いますので、すぐに見つかるものと思います。是非、じっくりと探してみて頂ければ幸いです。
ヒントは、お尻と脚の向きにありそうです。

次回は、馬形埴輪についてご紹介します。

これまでの記事
特集陳列「動物埴輪の世界」の見方1
特集陳列「動物埴輪の世界」の見方2─鳥形埴輪・鶏編
特集陳列「動物埴輪の世界」の見方3─鳥形埴輪・水鳥編
特集陳列「動物埴輪の世界」の見方4─犬と猪・鹿の狩猟群像

カテゴリ:研究員のイチオシ考古

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posted by 古谷毅(列品管理課主任研究員) at 2012年09月26日 (水)

 

10月6日(土)は留学生の日

トーハクでは、毎年日本で学ぶ外国人留学生の皆さんをご招待する「留学生の日」を設けています。
今年は10月6日(土)に開催します。

今年のデザインはこちら!


重文の菩薩立像(左)と田舎源氏図(右)の二人をメインにしています

この日は、留学生の方は総合文化展観覧料金が無料です。
トーハクで展示をご覧いただいたり、イベントに参加していただくことにより、日本の文化や伝統に触れいっそうの理解を深めていただければと思っています。

昨年のイベントの様子をご紹介します。


ボランティアによる展示室のガイド
皆さん真剣に聞いています


庭園内にある応挙館で茶道体験をしていただけます

今年も展示室でのガイドやツアー、茶道体験を行います。
イベントは、やさしい日本語で行います。

また、「日本美術の流れ」英語ガイド(10:30~12:00、15:00~16:00)では、
本館2階1、3、4、5・6、7、8、10室でボランティアが待機しており、英語で展示作品のご紹介します。
お気軽にお声かけください。

当日のイベントの詳細は留学生の日のページをご覧ください。当日の館内案内マップもダウンロードできます。

留学生の方はもちろん、ご友人・お知り合いに留学生の方がいらしたらお声をかけお誘い合わせの上ぜひご来館ください。
お待ちしています。

カテゴリ:news催し物

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posted by 江原 香(広報室) at 2012年09月25日 (火)

 

博物館は寄贈品でできている─その2

その1から続きます。

上野に立派な建物も建ち、博物館の経営も何とか軌道に乗って社会的に認知されると、博物館に作品や資料を寄贈しようという人が次第に現れてきます。明治時代のまとまった寄贈の一つは、外国からやってきました。米国・ボストン在住の実業家クインシー・A・ショー氏は美術コレクターとして知られていましたが、そのうち漆工品や刀装具を遺言によって東京帝室博物館に寄贈しました。明治43年(1910)のことです。現在の総合文化展の中でもしばしば展示される質の高いものです。

古墨意匠硯箱
古墨意匠硯箱 伝小川破笠作 江戸時代・18世紀 クインシー・A・ショー氏寄贈
本館12室 漆工にて、10月8日(月・祝)まで展示)



日本国内でも、明治末から大正時代になると近代化によって成長してきた産業資本家や銀行家が美術品のコレクションを蓄積し、現在で言えば「社会への還元」の意味で博物館に寄贈を行うことが広まります。

今回の特集陳列「秋の特別公開 贈られた名品」でも安田財閥の安田善兵衛氏父子の収集からの寄贈品や鐘紡を発展に導いた武藤山治氏からの寄贈品は、このようなものです。ある意味で当時の日本が豊かになった表れとも言えるでしょう。実業家からは、横河グループの創始者、横河民輔氏収集の陶磁器類、電力産業に深く関わった松永安左エ門氏収集の古美術品など大規模なものが戦前戦後にかけて寄贈され、現在の当館コレクションの根幹をなしています。

色絵花卉図大皿
色絵花卉図大皿 伊万里 江戸時代・18世紀 横河民輔氏寄贈
本館13室 陶磁にて、10月8日(月・祝)まで展示)


言うまでもないことですが、ここに紹介した大きな寄贈だけで当館11万の所蔵品が形作られたわけではありません、お名前がわかるだけでも3000人を超える方々の御好意が現在のコレクションを支えており、それぞれの寄贈の裏にはさまざまな思いがこめられています。展示室で作品に添えられた題箋には、寄贈品の場合必ず「~氏寄贈」の一行が入っていることに、目を留めていただければ幸いです。


関連展示
東京国立博物館140周年特集陳列「秋の特別公開 贈られた名品」(本館特別1・2室、9月30日(日)まで)では、数多くの寄贈品の中から国宝・重要文化財の指定を受けた優品を選りすぐって公開しています。お見逃しなく!

カテゴリ:研究員のイチオシ秋の特別公開

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posted by 田良島哲(調査研究課長) at 2012年09月24日 (月)

 

書を楽しむ 第22回「げんえいぼん」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第22回です。

いま、秋の特別公開(本館 特別1・2室、2012年9月15日(土) ~9月30日(日))で、名品が紹介されています!
その中に、書を楽しむ第5回で紹介した、
国宝「古今和歌集(元永本)」が2帖とも、展示されています。
げんえいぼん、覚えていただけましたか?

国宝 古今和歌集元永本
国宝 古今和歌集(元永本) 平安時代・12世紀 三井高大氏寄贈
左:元永本の上より展示箇所
右:元永本の下より展示箇所


左は、上巻から、花襷(はなだすき)の文様の料紙です。
右は、下巻から、孔雀唐草の文様の料紙です。
どちらも、雲母摺り(きらずり)された文様が、
かがやいています!

左と右の、書をくらべてみてください。
どう思いますか?

国宝 古今和歌集元永本 下(部分)
元永本下より拡大

これは、とても細い筆線で、
のびやかに書かれている感じがします。

国宝 古今和歌集元永本 上(部分)
元永本上より拡大

対して、こちらは、線が太く、
ゆっくり書いているようにも見えます。
どう見えますか?

一見すると
違う人の筆跡に見えませんか?
実は、同筆なんです。
元永本は、藤原定実(さだざね、?-1077~1119-?)が
一人で全部書いています。

元永本に使われている料紙は、
13種類もあります。
文様によっては、筆がすべってしまう場合もあり、
それぞれで字の表情が変わってきます。
もちろん、表現を多様化するために
わざと変えるときもあるのです。

最近では、2帖を一度に展示するのは珍しいので、
ぜひ比較して、ゆっくり見てください。

字の配置、
筆のスピード、
いろいろと違いが見えてくると
楽しくなってきます!

秋の特別公開、お見逃しなく!

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2012年09月23日 (日)