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トーハク仏像選手権 途中経過

東京国立博物館140周年特集陳列「館蔵仏像名品選」(本館11室、12月2日(日)まで)にあわせて開催中の「トーハク仏像選手権」。
みなさまは投票いただけましたか?

投票期間も半ばを過ぎましたので、ここで現在の投票状況を確認してみましょう。
現在の投票状況

1~3位は大接戦!
これからも刻々と順位が変化しそうで、目が離せません。

そこで、上位の3作品にについて、みどころポイントをあらためて紹介いたします。


まずは、鎌倉時代に南都諸寺院の造像に携わった仏師善円の作風に近いといわれる菩薩立像です。
こちらは「唇」にご注目ください。まるでリップグロスを塗ったかのように、つやつやした輝きを放っています。
唇に薄い水晶を嵌めているのは大変めずらしい作例です。

 
重要文化財 菩薩立像 鎌倉時代・13世紀
唇にご注目ください。


次に、奈良の内山永久寺(廃寺)に伝来したことが知られる愛染明王坐像です。
像の彩色から厨子の絵画まで、鎌倉末期の造像当初のものを良好な状態で残しています。
特に瓔珞や台座、厨子の天蓋などの装飾の美しさはみごとです。


重要文化財 愛染明王坐像  鎌倉時代 13~14世紀

展示では厨子から出していますが、厨子に納められた状態の写真で天蓋や厨子内部の絵とのバランスをご覧ください。


最後に、京都府加茂町の浄瑠璃寺にあったと伝えられる十二神将像です。
躍動感あふれる姿や個性的な表情に目が行きがちですが、
展示では下から当てている照明により、繊細な衣の模様や彩色もよくご覧いただけます。


重要文化財 十二神将 京都・浄瑠璃寺伝来  鎌倉時代・13世紀
衣の模様や彩色をじっくりご覧ください。


ところで、トーハクの総合文化展で、個人利用にかぎって写真撮影(寄託品など一部撮影禁止マークのついている作品以外)ができることは、意外と知られいていないようです。
今回の特集陳列はすべて館蔵品のため、お寺などではなかなか撮影できない仏像をご自由に撮影いただける貴重な機会となっています。


お気に入りの仏像をみつけたら、とっておきの表情をカメラに収めてお持ち帰りください。
そして、トーハク仏像選手権への投票もお忘れなく!
 

カテゴリ:ウェブおすすめコンテンツ彫刻

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2012年11月06日 (火)

 

トーハク仏像選手権始まる!

2012年9月25日(火)より、東京国立博物館140周年特集陳列「館蔵仏像名品選」(本館11室、12月2日(日)まで)が始まりました。
この会期にあわせ、「トーハク仏像選手権」も開催中です!

トーハクでは、日本の江戸時代以前の仏像をおよそ300件所蔵していますが、そのうち67件(法隆寺献納宝物が52件)が重要文化財という、充実したコレクションを誇ります。
展示室では、その中から選りすぐりの仏像13件が皆様をお待ちしております。(注:法隆寺献納宝物は含みません)

足繁く来館してくださる方々にはおなじみの像ばかりかもしれません。
しかし、今回は展示台の高さ、照明に工夫を凝らし、衣の色や模様、鋭い玉眼、優美で繊細な装飾など
これまでは気づかなかった見え方で、細部にも新たな発見が得られるのではないかと思います。


それでは、お気に入りの仏像を探しにいきましょう。


入口で出迎えてくださるのは、おそらく一番人気か?と予想される、この方。

菩薩立像
重要文化財 菩薩立像 鎌倉時代・13世紀

後姿もぬかりない、いわば優等生で美人なタイプ。


そして、入って右手のケースには、かわいらしいサイズの方が。

文殊菩薩像
文殊菩薩立像 鎌倉時代・13世紀

知恵をつかさどる文殊さんだけに、キリっと賢そうなお顔立ちをしています。


そして、この方々。

十二神将立像
重要文化財 十二神将立像 伝浄瑠璃寺伝来 鎌倉時代・13世紀

眼光鋭く、暗闇に浮かび上がる姿は、さながら戦隊ヒーローのよう。


こちらは宋風の阿弥陀如来さま。

阿弥陀如来立像
阿弥陀如来立像 京都・泉涌寺伝来 鎌倉時代・13世紀

つやつやとした不思議な質感は、なんと蒔絵によるもの。
大変珍しい作例だそうです。衣の模様にも注目です。


最後に、筆者イチオシのこの方。

千手観音菩薩坐像
千手観音菩薩坐像  南北朝時代・14世紀

切れ長の目、美しい肌…。壁に映る光背の影までカッコいい…。
ため息がでるほどのイケメンです。


いかがでしょうか。こちらはほんの一例です。

ぜひ、展示室に会いにきてください。
そして、お気に入りの仏像が見つかったら、「トーハク仏像選手権」に投票をお願いいたします!

 

カテゴリ:ウェブおすすめコンテンツ彫刻

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2012年09月28日 (金)

 

来年1月、飛騨の円空仏100体トーハクへ!

トーハクでは来年、特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」(2013年1月12日(土)~4月7日(日)本館特別5室)を開催します。
2012年9月6日(木)に報道発表会を行いました。

主催者より当館の島谷弘幸副館長と、今回この展覧会で多大なご協力をいただいている千光寺・大下大圓ご住職よりご挨拶申し上げました。

   
左:島谷副館長 右: 千光寺・大下大圓ご住職

そして、この展覧会の担当をしている浅見龍介東洋室長より出品作品の見どころをご説明しました。

  
表面・裏面の彫り方など作品1点1点詳しくご説明しました

当館では、円空の作った仏像いわゆる「円空仏」が展覧会で出品されたことは過去にもありましたが、
飛騨の円空仏を一堂に展示するのは今回が初めてのことです。

それでは、作品の一部をご紹介します。
まず展覧会の目玉の一つであり、ポスター・チラシにも登場する、「両面宿儺坐像」。
「両面宿儺」とは1つの胴体に2つの顔、4本の手足を持つとされる『日本書紀』に登場する飛騨の怪物です。
『日本書紀』は、大和朝廷が編纂した記録なので、朝廷に従わない飛騨の豪族を象徴的に「両面宿儺」としたのかもしれません。
しかし、千光寺ではいつの頃か「両面宿儺」を開山とする伝承が生まれ、円空が千光寺滞在中にその像を造ることになりました。

当館で開催しました2006年特別展「仏像 一木にこめられた祈り」と2008年特別展「対決 巨匠たちの日本美術」では、様々な作品とともに円空仏も展示しました。
この時、「両面宿儺坐像」も展示候補でしたが、その願いはかないませんでした。
大変貴重な機会です。


両面宿儺坐像(りょうめんすくなざぞう)
江戸時代・17世紀 総高86.9cm 千光寺蔵

素朴さと愛らしい表情のこちらは「三十三観音立像」。
33体あったはずですが、現在31体しか残されていないのは近隣の人々に貸し出して戻って来なかったとのことです。


三十三観音立像(さんじゅうさんかんのんりゅうぞう)
江戸時代・17世紀 総高61.0cm~82.0cm 千光寺蔵


そして、この優しい表情と、少し横にもたれている姿の作品は「柿本人麿坐像」

柿本人麿坐像(かきのもとのひとまろざぞう)
江戸時代・17世紀 総高50.2cm 東山神明神社蔵


右手を頬にあて微笑んでいる姿の「如意輪観音菩薩坐像」。


如意輪観音菩薩坐像
江戸時代・17世紀 総高74.8cm 東山白山神社蔵


一木作りが多い円空仏の中で、脇手が別材で作られた「千手観音菩薩立像」。


千手観音菩薩立像
江戸時代・17世紀 総高114.3cm 清峰寺蔵


円空は5cmにも満たないものから2mを超えるものまで様々な仏像を作っています。
一般に可愛らしく、素朴で親しみやすいと言われることが多い円空仏ですが、力強さや木への信仰も感じられ造形も魅力的です。

展覧会では、これまで円空仏を見たことがある方も初めての方にも、
様々な視点から見ていただき、多彩な造形とともに、温かみも感じていただけばと思います。

こちらでご紹介した以外にもまだまだ見どころ満載の円空仏がたくさん出品されますので今後もこのブログでご紹介していきます。
どうぞお楽しみに!

 

カテゴリ:彫刻2013年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2012年09月08日 (土)

 

さらに詳しく!「運慶周辺と康円の仏像」

特集陳列「運慶周辺と康円の仏像」(本館14室、9月17日(月・祝)まで)のみどころについて、前回のブログで3つのポイントを紹介しました。
みなさんに実物を見ていただきたいので、ヒントのみで解説を省いた部分があります。今回は、来館できない方のためにも、隠さずにお話しします。

まず、真如苑の大日如来坐像の後ろ姿です。

 重要文化財 大日如来坐像 平安~鎌倉時代・12世紀 東京・真如苑蔵
重要文化財 大日如来坐像 平安~鎌倉時代・12世紀 東京・真如苑蔵

背中を斜めにわたる帯を条帛(じょうはく)といいますが、一度裏返っています。腰の部分は巻きスカート(裙(くん)といいます)の上端を折り返しています。
スカートをとめているベルトは隠れて見えません。その下のまっすぐな線は腰に巻く帯です。少し厚みがあるのは、端を折り返しているからです。
 

 重要文化財 大日如来坐像 平安~鎌倉時代・12世紀 東京・真如苑蔵

頭の上に結い上げた髻(もとどり)の背面は渦巻きが4つ表わされています。
やはり運慶の作と見られている光得寺大日如来坐像ほか、快慶の作品にもあります。


重要文化財 大日如来坐像 平安~鎌倉時代・12世紀 東京・真如苑蔵

さて、一番注目していただきたいのは、スカートの少し上です。腰回りの肉が少し弛んでいるのがわかりますか?
なかなか写真ではわかりにくいのですが、実際に見ればはっきりわかります。こうした微妙な表現を見ると作者の腕前に感心します。



次に康円の文殊菩薩像の光背に表わされた迦陵頻伽(かりょうびんが)です。横笛を吹く像(左)と笙を吹く像(右)を比べてみましょう。

 
重要文化財 文殊菩薩騎獅像 康円作 鎌倉時代・文永10年(1273)の光背の迦陵頻伽の顔の部分

印象はいかがですか。左は繊細、右は少し鈍いですね。髪の毛の彫り、目の形が違います。
左の方がいきいきして今にも笛を吹きそうです。
 


左の像、口を尖らせて、頬が少しへこんでいます。笛に口を接する直前をみごとにとらえています。
耳の形も違います(笛を吹く像の右耳は下半分欠けています)。右の耳の形は鈍いですね。
左は髪束に押さえられて耳がたわんでいますが、右はそれもありません。
 



翼はどうでしょうか。左が笛を吹く像の右側、右が笙を吹く像の左側の翼です。
色も違いますが、ここでは彫りを見てください。左の翼の骨部分(羽の付け根)の曲線が力強いですね。
骨に沿って鋸の歯のようなものが並び、その外に羽が二段生えています。

右の翼はどうでしょうか。比べてみてください。
全体の輪郭は左の方がゆったりと大きくカーブしています。
右側は一枚ずつの羽の重なる部分が大きく、羽の形がはっきりしません。
左側は重なっていても形は明瞭ですし、立体感もあります。
右は羽は規則的に並び単調ですが、左は羽のいくつかは少し反っていて、変化に富んでいます。
 


左が笛を吹く像、右が笙を吹く像です。
脚、指、蓮華、唐草の彫りもやわらかさ、立体感が違います。
以上、笛を吹く像が康円作、笙を吹く像は後世の補作です。(ちなみに笛を吹く像の左側の翼も後世の補作です)



次にこの文殊菩薩と侍者が中国の聖地五台山から来たことを示す表現です。
 

重要文化財 文殊菩薩騎獅像 康円作 鎌倉時代・文永10年(1273) 台座部分

中国から来るには海を越えなければなりませんね。だから獅子の乗る岩の下に海が描かれています。
この文殊菩薩一行が海上を飛んでいる絵もあります。京都の醍醐寺の絵が有名ですから、本で探してみてください(金子啓明編『文殊菩薩像』「日本の美術」314、至文堂、1992年)。
こうした絵は渡海文殊(とかいもんじゅ)と呼ばれます。
中世以前の像で像と同時に作られた台座や光背が残っていることは稀です。たとえ残っていてもほとんどは色がはがれています。ですからこの海の表現はとても貴重です。

この特集陳列は9月17日(月・祝)までです。実物をご覧になればもっと面白い発見があるかもしれません。
ぜひご来館ください。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ彫刻

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posted by 浅見龍介(東洋室長) at 2012年08月27日 (月)

 

ここに注目!「運慶周辺と康円の仏像」

7月31日(火)から9月17日(月・祝)まで本館1階14室で行なう特集陳列「運慶周辺と康円の仏像」からみどころをご紹介します。

今回の展示で見逃せないポイントは3つです。
第1に、運慶作の可能性が高い真如苑所蔵の大日如来坐像をぐるり全方向から観察することができます。
頭上に太く高く結いあげられた髻(もとどり)の背面はどうなっているか?胸の厚みはどうか?背中まで写実的に作られているか?などに注目してご覧ください。

仏像の背面は光背や後ろの壁に隠れて絶対に見られることはないのですが、さてこの像の背中はどうでしょうか。

重要文化財 大日如来坐像 平安~鎌倉時代・12世紀 東京・真如苑蔵
重要文化財 大日如来坐像 平安~鎌倉時代・12世紀 東京・真如苑蔵


第2は、迦陵頻伽(かりょうびんが)です。上半身は人間、下半身は鳥という姿、美しい声で鳴くという鳥です。美声を象徴する楽器を持つことが多いのが特色です。
今回展示する運慶の孫康円の代表作、文殊菩薩像および四侍者像の文殊菩薩の光背に2羽表わされています。

この光背が間近で見られる機会は滅多にありませんのでお見逃しなく。
実はこの2羽、作られた時代が違います。一方は康円作、他方は後世補ったものです。なかなかうまく作っているのでちょっと見ただけではわからないかもしれません。
楽器で顔が隠れていますから横から見て、顔、髪の表現、目や耳の形を比べてみてください。

また、正面ではあまり気になりませんが、斜めや側面から見ると後補の像は不恰好です。どちらが康円作かは皆さんが実際に見て判断してください。

重要文化財 文殊菩薩騎獅像 康円作 鎌倉時代・文永10年(1273) の光背部分の迦陵頻伽
重要文化財 文殊菩薩騎獅像 康円作 鎌倉時代・文永10年(1273) の光背部分
 

第3は、文殊菩薩が乗る獅子の岩の下です。中国山西省の五台山が文殊菩薩の聖地として信仰されていました。
その五台山から日本にやって来たことを示すなにかが描かれています。これも展示でご覧ください。

重要文化財 文殊菩薩騎獅像 康円作 鎌倉時代・文永10年(1273)
重要文化財 文殊菩薩騎獅像 康円作 鎌倉時代・文永10年(1273)


残念ながら展示を見に来られない方のために、8月下旬のこのブログですべて写真入りで解説します。

カテゴリ:研究員のイチオシ彫刻

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posted by 浅見龍介(東洋室長) at 2012年07月31日 (火)