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1089ブログ

席上揮毫会を開催しました

1月31日午後、平成館にはいつもと違う香りがたちこめました。
墨の香りです。

そして平成館ラウンジには、大きなスクリーンが置かれ、いつにない黒山のひとだかり・・・

平成館ラウンジ

一体なにがあったのでしょう。


書家の先生方

特別展「書聖 王羲之」(2013年1月22日(火)~3月3日(日)、平成館)を記念しておこなわれた席上揮毫会(書のデモンストレーション)でした。
毎日書道会を代表する書家の先生方が、平成館ラウンジで毫(ふで)を揮(ふる)っていたのです。
多くのお客様が見つめるなか、先生の持つ筆が紙の上に置かれると、それまでざわざわしていた会場が一瞬にして緊張に包まれ、静まります。
皆さん真剣に筆の運びを見つめ、先生が最後の文字を書き終えると、ため息と拍手が会場を包みました。
この間、平成館が特別な空間となっていました。
墨の濃さ、筆や紙の種類など、先生のこだわりもうかがうことができ、気さくなお人柄に平成館ラウンジにも笑い声が響きます。
書、筆、墨と縁遠くなってしまった方も多いことと思います。展示ケースのなかの作品を見てもなかなか、書に向かう書家の姿、空気を感じることは難しいですよね。
こうした機会にぜひ書に親しんでいただければ幸いです。

席上揮毫会のあとは私自身、特別展「書聖 王羲之」をみる目も変わったように思います。
王羲之の作品は、どれだけ人々に日常とは違う心地よい空間を与えてきたのでしょうか。
王羲之はどんな紙や筆、墨をつかっていたのでしょうか。やはり緊張したのでしょうか。
王羲之の作品を写すときにはどうだったのでしょう。
作品をつくるときの姿に興味がわき、作品の前でつい想像してしまうのです。

展示の様子
今回の作品は1月31日の閉館まで平成館ラウンジに展示し、多くの方にご覧いただきました。
先生方、そしてお集まりいただきました皆様、ありがとうございました。
 

カテゴリ:教育普及催し物2012年度の特別展

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年02月05日 (火)

 

特別展「書聖 王羲之」の開会式・内覧会を行いました

ついに本日開幕した、特別展「書聖 王羲之」(~3月3日(日) 平成館)。

開幕前日の1月21日(月)には、開会式・内覧会が行われました。


開会式には多くの方にお越しいただきました。

もっとも注目を集めていたのが、唐時代の摸本を展示したコーナーです。
唐時代の摸本は、王羲之の真跡が失われてしまった今、
その字姿をもっとも忠実に伝えていると考えられる一級資料です。
世界にわずか10点ほどしか残っていない貴重なものですが、本展覧会では
皇帝が愛蔵したことを示す印が、華やかに文字を彩る「行穣帖(こうじょうじょう)」、
本展覧会の作品調査で新発見された「王羲之尺牘 大報帖(おうぎしせきとく たいほうじょう)」
王羲之の書が大成した晩年の書とされる「喪乱帖(そうらんじょう)」(展示期間:~2/11)、と見ごたえ十分。
会期後半には、国宝「孔侍中帖(こうじちゅうじょう)」(展示期間:2/19~3/3)が展示されます。
中でも「王羲之尺牘 大報帖」は、本展覧会が初公開ですので、見逃せません。


行穰帖 (部分) 原跡:王羲之筆 唐時代・7~8世紀摸 プリンストン大学付属美術館蔵 Princeton University Art Museum / Art Resource, NY

王羲之の最高傑作として名高い蘭亭序は、全20件を展示。名家が競って集めたという写本や拓本が一堂に会します。
蘭亭序は、詩会で詠まれた詩の、作品集の序文として作られましたが、自然を愛でつつ、世のはかなさを綴った名文でもあります。
会場では、その誕生の舞台となった詩会の情景を描く画巻を3D映像にして、大型スクリーンで放映しています。
映像でイメージをふくらませて、様々な蘭亭序の作品をご堪能ください。

今後も王羲之の書、そして本展覧会展の魅力をブログでご紹介していきます。
展示とともにお楽しみください。

カテゴリ:news2012年度の特別展

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posted by 林素子(広報室) at 2013年01月22日 (火)

 

新発見「大報帖」 特別展「書聖 王羲之」で世界初公開!

1月22日(火)より開幕する特別展「書聖 王羲之」(~3月3日(日))。
本展覧会は、中国4世紀の東晋時代、従来の書法を飛躍的に高めた王羲之をテーマに、
その書の実像にせまり、歴史的に果たした役割を再検証するものです。


蘭亭図巻─万暦本─(らんていずかん(ばんれきぼん))(部分)
原跡=王羲之等筆 明時代・万暦20年(1592) 東京国立博物館蔵
王羲之の最高傑作「蘭亭序」が生まれた曲水の宴を描いた作品。王羲之の姿も描かれています。


書聖と崇められた王羲之、歴代皇帝も愛好したというその書とはどんなものなのでしょう?
実は、王羲之の真蹟は、戦乱などにより失われているため現存していません。
そのかわりとして、私たちが王羲之の字姿を知るために、もっとも信頼のおける資料となるのが唐時代の摸本です。
とりわけ王羲之の書に魅了され、熱心に王羲之の書を蒐集たことなどで知られる唐の太宗皇帝が作らせたもので、
にじみやかすれ、後世の虫食いの跡まで写し取られた非常に精巧なものです。
それらも世界中で10点ほどしか残されていません。

そんな希少な唐時代の摸本が、本展覧会の出展作品の調査によって日本で新たに発見されました。
「王羲之尺牘 大報帖(おうぎしせきとく たいほうじょう)」です。


王羲之尺牘 大報帖(おうぎしせきとく たいほうじょう)
原跡=王羲之筆 東晋時代・4世紀 唐時代・7~8世紀摸 個人蔵
尺牘とは手紙のこと。つまり、この作品に書かれた3行24字は、王羲之が書いた手紙の一部です。


日本には名筆を集めて台帳に貼りこみ、鑑賞したりお手本にする文化があります。
この台帳を手鑑(てかがみ)といいますが、今回の作品も、そうして長年大切に守られてきた手鑑から見つかったのです。

この作品には、かつて鑑定をした際に小野道風の筆とした極札(きわめふだ・鑑定結果を記す紙片。上の写真の右側についている短冊形のもの)がついており、これまでは王羲之の作と認められていませんでした。
しかし、富田淳列品管理課長らが参加した本展覧会の調査で、
この作品は、極めて精緻な摸本で、唐の宮中で作られた可能性が高いことがわかったのです。
王羲之の筆と判断されたポイントは、次のようなことです。
・文章中に、王羲之の家族の名前や、王羲之がよく使う表現が登場すること
・字の姿が、唐時代に作られた王羲之の摸本に似ていること
・文字の輪郭をとって中を丁寧に埋める「双鉤填墨」(そうこうてんぼく)と呼ばれる技法の跡が認められることや、他の摸本と同じ料紙を使っていること
日本には、遣唐使らによってもたらされたと考えられます。

「王羲之尺牘 大報帖」は今回、世界で初めての公開で、会期中を通してごらんいただけます。
本展覧会では、そのほか4点の唐時代の摸本が出展予定です。(一部の作品に展示替えがあります)
どうぞこの機会に、王羲之の文字を今に伝える作品をご堪能ください。

関連事業
席上揮毫会(書のデモンストレーション)
1月31日(木)  平成館ラウンジ
※どなたでもご覧いただけます。ただし入館料が必要です

ワークショップ「王羲之の複製を作ろう」

2月13日(水) 平成館小講堂
※往復はがきによる事前申込制(1月31日(木)必着)。応募者多数の場合抽選となります
※参加費は無料ですが当展観覧券が必要。半券の場合には別途当日の入館料が必要です

 

カテゴリ:news2012年度の特別展

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posted by 林素子(広報室) at 2013年01月17日 (木)

 

特別展「中国 王朝の至宝」―不思議な形の動物たち―

中国の考古・美術の展覧会といえば、青銅器などの難解なものが並んでばかりで、愛好者でないと親しみにくいという声を耳にすることがあります。
しかし、特別展「中国 王朝の至宝」(2012年10月10日(水)~12月24日(月・休)、平成館)の会場には、誰がみても理屈ぬきであっと驚くような作品がたくさん展示されています。
この世のものならぬ不思議な形をした動物の作品の数々は、その代表的な例といえるでしょう。

まず、この顔をご覧ください。


一級文物 鎮墓獣(ちんぼじゅう)(部分) 
木・漆・鹿角  戦国時代・前4世紀 湖北省荊州市天星観1号墓出土 荊州博物館蔵


首の長い動物が舌を出しています。頭には大きな鹿の角が生えています。
奥にも、やはり角の生えた頭部がみえます。
この動物の全貌はいったいどのようになっているのでしょうか。


鎮墓獣(ちんぼじゅう)全体 
高144cm 長150cm


四角い台座の真ん中からこの動物の胴体がのび、途中で手前と奥に枝分かれしてそれぞれ鎌首をもたげています。
木彫漆塗りのこの動物は、今から約2400年前の大きな墓のなかから出土しました。
魔除けの一種として墓に副葬されたもので、鎮墓獣といいます。
双頭の異様な形、ヘビのようにもたげた鎌首、吐き出した赤い舌、大ぶりな鹿の角は、すべて悪い邪気を墓から追い払うための威嚇だったのです。

余談ですが、閉館後に消灯して真っ暗闇となった会場をある同僚が懐中電灯で点検していたとき、鎮墓獣のケースの前で立ち止まると身の毛のよだつほど怖かったと述懐していました。
もともと鎮墓獣は真っ暗な地下のお墓のなかに置かれていたものです。
その意味で、同僚は本来のとても正しい鑑賞の仕方をしたといえなくもありません…。

さて、会場では恐ろしい怪獣ばかりでなく、こんなにかわいらしい動物にも出会うことができます。


一級文物 犠尊(ぎそん) 
戦国時代・前4~前3世紀 山東省淄博市臨淄区商王村出土 斉国故城遺址博物館蔵

つぶらな瞳に長い耳。足の先端には二股に分かれた蹄があります。
ブタ?それともウシでしょうか?
何の動物を表現したものなのか、専門家のあいだでも意見がわかれています。
恐らくは現実世界に存在する特定の種類の動物ではなく、架空の動物ではないかと考えられます。
では、どうしてそのように考えられるのでしょうか。

この動物は青銅でできた全身に金銀トルコ石などをはめこむことで、文様を華麗に見せています。
文様はところどころ先端が渦を巻き、まるで山間に漂う雲気のようです。
この文様は天上の世界にすむ仙人や動物を表現した作品によく飾られていて、雲気文と呼ばれています。
文様のほかにも、この動物がただものではないことは顔を見るとよくわかります。


犠尊(顔部分)

なんと、動物なのに眉毛があります。
しかも、眉毛にトルコ石を連続してはめこむことで、顔立ちがシャープにひきしまって見えます。
首輪にもご注目ください。
もともとここに楕円形の銀の珠が16個もはめこまれていました。動物なのにこれほど豪華な作りの首輪を着けていたとは、ますますなぞが深まります。
少し開いた口には孔が開いています。
犠尊と呼ばれるこの青銅器は動物の形をしていますが、中身は空洞で酒を供えるための容器でした。
体内の酒はこの口の孔から注ぎ出したと考えられます。
それでは、酒はどこから体内に入れたのでしょうか。

 図5の補足
犠尊(背中部分)  

動物の背中の部分が蓋になっています。つまみをつかんで持ち上げると、前方に蓋を開けることができます。
ここから酒をなかに入れる仕掛けだったのでしょう。
ところで、この蓋は全体でカモのような水鳥をかたどっています。
後ろを振り向き、扁平なくちばしを背中にぺたんとつけた鳥の姿を表しています。
長い首は蓋のつまみになっています。
羽の模様は銀をはめこんで輪郭を際立たせ、そのなかにトルコ石やクジャク石といった緑色の貴石をあしらっています。

ロバのように長い耳やウシのような蹄をもち、全身には雲気文、顔には眉毛まで表し、水鳥を背負ったなぞの動物。
愛らしい顔立ちからは思いもよらない犠尊の不思議さを、会場でぜひ直接お確かめになってください。

カテゴリ:研究員のイチオシ2012年度の特別展

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posted by 川村佳男(保存修復課研究員) at 2012年11月30日 (金)

 

特別展「中国 王朝の至宝」10万人達成!

特別展「中国 王朝の至宝」(2012年10月10日(水)~12月24日(月・祝))は、
2012年11月28日(水)午後、10万人目のお客様をお迎えしました。
多くのお客様にご来場いただき、心より御礼申し上げます。

10万人目のお客様は、埼玉県よりお越しの木村梨奈さんです。ご友人の田中彩香さんと一緒に来館されました。
記念品として、東京国立博物館長 銭谷眞美より、本展図録と展覧会オリジナルの中国茶などを贈呈いたしました。

王朝展10万人セレモニー
左から、銭谷眞美館長、木村梨奈さん、田中彩香さん
2012年11月28日(水) 東京国立博物館平成館にて

木村さんは、大学で受講している中国語の授業で、先生がこの展覧会をぜひ見に行くようにと薦めてくれたとのこと。
「貴重な作品がたくさん展示されていると伺ったので、実際に見るのが楽しみです」とお話いただきました。

特別展「中国 王朝の至宝」は、会期終了まで残り1ヶ月を切りました。
なんとも不思議な形の「羽人(うじん)」や、りりしい姿が印象的な「跪射俑(きしゃよう)」などは必見です。この機会にぜひほんもののパワーを体感してください。
ご来館を心よりお待ちしております。

カテゴリ:news2012年度の特別展

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posted by 小島佳(広報室) at 2012年11月28日 (水)