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トーハク「スペシャルありがとうデー」速報!

皆さま、9月21日(金)のトーハクについてはチェックしていただいておりましたでしょうか?
今日は東京国立博物館140周年「秋の特別公開」の中でも、さらに特別な1日「スペシャルありがとうデー」なのです。

どのようにスペシャルなのか?当日の模様を速報いたします!

15:00、関係者が出席する記念式典が行われました。トーハクにゆかりの深い歴代館長や副館長などが出席、
140年の節目を迎え、改めてトーハクの使命である、日本を中心とした東洋の考古物、美術作品の収集、保護、修復、公開を通じて、世界のなかでもすばらしい博物館を目指すことが、館長より表明されました。


お昼過ぎからの激しい雨が、いつの間にかウソだったかのように止んで、青空が見える夕方、
トーハク140周年を音楽でお祝いするイベントが、始まりました。

リニューアル準備で休館中の東洋館の前は、ビアガーデンスペースに。


17:30からは、国際的に活躍する和太鼓集団「鼓童」のパフォーマンスです。


本館を背景に、勇壮で迫力のあるリズムが響き渡りました。


一方、法隆寺宝物館はキャンドルでライトアップ。キャンドルで書かれた「TNM140th」が見えますか?


とっぷり日も暮れてキャンドルの灯りがさらに美しくなる18:30に、「WASABI」の演奏がスタート。
WASABIは津軽三味線でメジャーデビューを果たした「吉田兄弟」の兄・吉田良一郎さんのソロプロジェクトで、
津軽三味線、尺八、箏、太鼓という和楽器ユニットです。
幻想的な雰囲気での美しい音色は多くのお客様を魅了しました。



最後を飾るのはジャズピアニストの小曽根真さんとシンガーソングライター植村花菜さんによるライブです。
普段は皆さまの休憩スペースの平成館ラウンジが、今日は贅沢なコラボレーションが実現するコンサートホールに!
そしてお二人がコラボレーションで選んだ曲は、カーペンターズの「Sometimes」は、
日ごろ言えないままだった「ありがとう」の気持ちを歌ったもの。
トーハク140周年のテーマ「ブンカのちからにありがとう」にぴったりだったのです!



本日、お越しいただけなかった皆さまに耳寄りな情報です。
9月23日(日)、22:00よりJ-WAVE(81.3 FM)にて特別番組
「J-WAVE PLUS 140th ANNIVERSARY OF TOKYO NATIONAL MUSEUM」でライブの模様などをオンエア。
また、トーハク「秋の特別公開」は9月30日(日)まで行っております。
ゆっくり名品の数々をご堪能いただいたり、記念撮影や庭園散策をお楽しみください。
もちろん2度3度とお越しいただけるなら、さらに大歓迎!
トーハク140周年を、皆さまの思い出にしていただけるとうれしいです。

カテゴリ:news秋の特別公開

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posted by 林素子(広報室) at 2012年09月22日 (土)

 

江戸時代の和書が面白い!「徳川本の世界」

今回の東京国立博物館140周年特集陳列「徳川本の世界―多様性とその魅力」 (本館16室、2012年9月11日(火)~11月4日(日))は、主に江戸時代から明治時代の和書について展示しています。
展示のページでもご紹介しているように、徳川本は、昭和18年に一橋徳川家第十二代当主であった徳川宗敬氏によって寄贈された資料群です。大部分が江戸から明治時代に刊行・書写されたもので、美術・武芸・学問・風俗・地理など、様々な分野の和書が含まれます。今回はその中から視覚的に特色のあるものを中心に厳選しました。

和書を展示するときに残念だと思うのが、糸で綴じてあるものは1冊の中の見開きしかお見せすることができないことです。
そこで、このブログを利用して今回の展示品のうち、何点かを取り上げて、展示ではお見せできない内容をご紹介したいと思います。

まず、『寛政重修諸家譜』です。江戸時代に編纂された武家の家系図ですが、私が驚いたのはその量です。1530巻もあり、当館には1264冊収蔵されています。全部合わせると収蔵庫の棚を一つ占有してしまうほどの多さです。
展示では有名な清和源氏のうち、源頼朝の頃の系図が開かれていますが他にもたくさんの武家の系譜がこの和書から調べることができます。

次に、『華包』です。明治44年に遠州流華道6代宗家であった蘆田春壽によって著された、贈答の際に花を包む和紙の折方を記した図集です。日本では昔から和紙で贈答の品を包む習慣がありました。
出来上がるとこんな風になるそうです。梅の花がきれいに包まれています。

華包
華包(部分) 蘆田一英著 明治44年(1911)  徳川宗敬氏寄贈

後半に載っていた型紙を利用して実際に折ってみました。向かって右が木の花一般を包む形式、左側が草花一般を包む形式だそうです。(水引の掛け方も書かれていましたが、丁度よい素材がみつからず紐でくくってあるだけです。)初心者の私でも見本通りに出来上がりました。

 
         見本                 型紙から作成したもの

展示では紅葉や菊を包む際の形式が載っている個所をお見せしています。


最後に『鎧着用之次第』です。男性が肌着から徐々に鎧を着用していく様子が描かれています。着始めと完成の姿をお見せすると、こんな感じです。
 
鎧着用之次第
        始め                             完成
(鎧着用之次第 江戸時代・19世紀  徳川宗敬氏寄贈より)

展示ではこの2枚の中間の姿が描かれたページを開いています。着用途中なのだということを頭の片隅にご覧ください。


いくつかご紹介してきましたが、他にも江戸時代の算術の問題集や河童の記事など、本当にいろいろな書物があります。
今回の展示で江戸時代の和書って面白い、と思っていただければうれしいです。

カテゴリ:研究員のイチオシ秋の特別公開

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posted by 三輪紫都香(列品管理課) at 2012年09月18日 (火)

 

秋のトーハクで名品(複製)との記念撮影!

いよいよ明日から、東京国立博物館140周年「秋の特別公開」(9月15(土)~30日(日))が始まります。
国宝・重要文化財指定の優品が並ぶ「秋の特別公開 贈られた名品」などの特集陳列のほか
「見返り美人図」(菱川師宣筆 江戸時代・17世紀)も公開中と、見どころ満載です。
この期間にお越しいただいたら、ぜひ庭園にもご注目ください!

秋の庭園開放(10月27日(土)~12月9日(日))に先駆けて臨時開放をします。
庭園内を散策していただくだけでなく、応挙館で松林図屏風(複製)・洛中洛外図屏風(舟木本)(複製)と記念撮影ができます。
2つの屏風のうち、どちらかご希望の方お選びください。フォトグラファーが撮影、
ベストショットとして選んだ画像を、その場で印刷してお客様にプレゼントいたします(最高3枚まで)


応挙館に設置した松林図屏風(複製)
墨の濃淡で描かれた静かな世界に吸い込まれそう。多くの人々の心を魅了してやまない松林図屏風と、



応挙館に設置した洛中洛外図屏風(舟木本)(複製)
16世紀ごろの京都の町並みを描く洛中洛外図屏風。こちらは当時の賑わいが聞こえるようです。

さて、どちらを選びますか?


一足早く、取材にきたほー。ユリノキちゃんを撮ってあげるほ!


じゃあ、洛中洛外図にしようかしら。トーハクくん、キレイに撮ってね!

いつもよりちょっとおめかしをしてお越しいただいたり(きものなら入館料100円割引です!)
ご家族やお友達とお誘い合わせのうえご参加いただくのもオススメです。

庭園開放中の10:00~16:00、1日限定36組限定で、所要時間は10分程度です。
応挙館にて、整理券を配布します。天候により庭園開放、撮影とも中止になる場合がありますのでご了承ください。

9月21日(金)は、「スペシャルありがとうデー」で、22:00までの特別夜間開館日。
1日限りのライブやビアガーデンなどで夜遅くまで、楽しいイベントをご用意しています。
台東区民の皆さまに、さらに朗報!同日正門で台東区内のご住所を確認できるもの(身分証明書等)をご提示いただくと入館料が無料です。

皆さまのご来館をお待ちしております!



 

カテゴリ:秋の特別公開

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posted by 林素子(広報室) at 2012年09月14日 (金)

 

博物館は寄贈品でできている─その1

現在、11万件以上のコレクションを擁する東京国立博物館ですが、このコレクションももちろん一朝一夕で成り立ったものではありません。明治5年(1872)に博物館が歩みだした頃には、実は何もなかったと言ってよい状態でした。そもそも「博物館とは何だろう」ということを知っていた人は、当事者である博物館職員の他、日本にはまだ数えるほどしかいませんでした。ですから、博物館の最初のコレクションは、まず館員が資料を館に寄贈するところから始まったのです。

創設時の館長である町田久成(1838-1897)の寄贈になる館蔵品は100件以上にのぼります。町田は薩摩藩の高級武家の出身であるためか、寄贈品の中には甲冑や馬具、装束の他に薩摩琵琶などが含まれています。また幕末に英国留学の経験があり、当館の図書のなかには、そこで入手したらしい「町田久成献納」の印がある洋書も見られます。重要文化財の指定を受けている中世の百科事典『塵袋』も町田の寄贈です。

重要文化財 塵袋 印融写 室町時代・永正5年(1508) 町田久成氏寄贈
重要文化財 塵袋(部分) 印融写 室町時代・永正5年(1508) 町田久成氏寄贈
東京国立博物館140周年特集陳列「資料館における情報の歴史」(本館16室、2013年1月8日(火) ~ 3月3日(日))にて展示予定


町田と二人三脚で博物館を作った田中芳男(1838-1916)は、本草学者として幕府に出仕し、フランスに留学しました。田中の寄贈品リストも150件以上になり、国内外の貨幣、考古遺物、民俗的な資料などが含まれます。今回の特別公開では中国陶磁の優品「青花魚藻文壺」を展示します。
博物館初期の功労者の一人である蜷川式胤(1835-1882)からの寄贈も多く見られます。蜷川は京都の出身で故実に通じ、自らも古物の収集を手がけていましたので、博物館創設時から自分の収集品を館に献納していました。
館蔵品を確認していると時々古い札がついており、そこに明治5年に蜷川が献納した旨を自分で書いている場合があります。そんな時に私は、博物館という誰も知らない仕組みを作る仕事に身を投じた当時の職員たちのことに思いをはせ、少し襟を正します。

折形免許目録 江戸時代・18世紀 蜷川式胤氏寄贈
「壬申(明治5年)冬 蜷川式胤」の書き入れと蜷川の印のある札(右拡大部分)
折形免許目録 江戸時代・18世紀 蜷川式胤氏寄贈(展示未定)


博物館という存在とその仕事が次第に見えてくると、資料や作品を寄贈して社会的に役立ててほしいという考え方に基づいて、寄贈を申し出る人が増えてきます。それによって博物館のコレクションは豊かになってゆきます。次回(その2)はその時代のことについてご紹介します。



関連展示
東京国立博物館140周年特集陳列「秋の特別公開 贈られた名品」(本館特別1・2室、2012年9月15日(土)~9月30日(日) )では、数多くの寄贈品の中から国宝・重要文化財の指定を受けた優品を選りすぐって公開します。ぜひご覧ください。

カテゴリ:研究員のイチオシ秋の特別公開

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posted by 田良島哲(調査研究課長) at 2012年09月10日 (月)

 

研ぎ澄まされた鑑識眼─広田不孤斎の茶道具

東京国立博物館140周年特集陳列「広田不孤斎の茶道具」(本館4室、2012年9月4日(火) ~ 11月25日(日))では、 不孤斎(ふっこさい)広田松繁氏より御寄贈を受けた茶道具を展示いたします。

広田松繁氏は明治30年(1897)に「おわら風の盆」で有名な富山県八尾町(現富山市)に生まれました。幼時に父親と死別したことから、明治42年(1909)に12歳の若さで古美術商に奉公に出ます。関東大震災ののち、大正13年(1924)、27歳の時に盟友南天子西山保とともに壺中居(こちゅうきょ)を設立しました。

その当時、中国洛陽近郊の鉄道工事をきっかけにその存在が知られるようになった唐三彩などの出土陶器や、清末の混乱期に流出した明、清時代の官窯器などが古美術市場にあらわれるようになりました。これにともない、客観的な美的鑑賞の視点から、茶道具となっていない中国陶磁や朝鮮、日本陶磁を研究し、鑑賞の対象とする動きがあらわれました。いわゆる鑑賞陶器です。広田松繁氏は大正末期から終戦までの間にたびたび中国を訪れて古陶磁を買い付け、岩崎小弥太、細川護立、横河民輔といった大コレクターに納めました。

広田松繁氏は昭和22年(1947)に5件、昭和42年(1967)に1件、そして逝去の前年の昭和47年(1972)にコレクションのほぼ全て、490件を東京国立博物館に御寄贈されました。その主体が大正末年以降に請来された中国陶磁であるのは、氏の歩いた道に由来しています。

 晩年壺中居を隠退して相談役となり、不孤斎と号するようになってからは、鎌倉の自宅に茶室を設け、茶の湯に親しんでいました。そのため、広田コレクションには墨跡や古筆の床の間の軸をはじめ、水指、茶杓、茶入、茶器、茶碗、向付、鉢、その他高麗物、和物の優れた茶道具が少なくありません。それらは伝来、由来に頼ったものではなく、古美術商らしい厳しく研ぎ澄まされた鑑識眼が貫かれています。彫三島茶碗 銘木村(写真1)は、これほどの茶碗を手に入れることができたとして、不孤斎が茶を点てて先祖の墓前に供えたというエピソードがあります。また、豆彩束蓮文水指(写真2)は清朝雍正官窯の名品に塗り蓋を添えて水指としたもので、不孤斎ならではの大胆な見立てです。また、数々の名品ばかりでなく、小品にも見どころのあるものが多いのが広田コレクションの大きな特色です。青磁杯(写真3)は南宋時代の官窯の青磁ではないかといわれた逸品。小品ながら存在感があります。


左から、
(1) 彫三島茶碗 銘 木村 朝鮮  朝鮮時代・16~17世紀
(2) 豆彩束蓮文水指 景徳鎮窯  中国 清時代・雍正年間(1723~35年)
(3) 青磁杯  中国  南宋~元時代・13~14世紀
いずれも広田松繁氏寄贈


近代を代表する古美術商の鑑識眼を経て形成されたコレクションから、近代の数寄者の眼を感じ取ってみてください。

カテゴリ:研究員のイチオシ秋の特別公開

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posted by 今井敦(博物館教育課長) at 2012年09月07日 (金)