早いもので本日(8月14日)から、創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」の後期展示が始まりました!

第2会場入り口
絵画と書跡はおおよそ展示替えを行いました。
後期の見どころをご紹介します。
こちらの神護寺展作品リストとともにご覧ください。
まずは作品No23.国宝「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」です。
国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)(りょうかいまんだら、たかおまんだら)の展示風景
平安時代・9世紀 京都・神護寺蔵 【金剛界】 9月8日(日)まで展示
前期の胎蔵界から金剛界へと替わりました。
金剛界は九つの区画に分けられており、整然と並ぶ密教の仏は圧巻です。
区画の中央最上段、一印会(いちいんえ)の大日如来は保存状態も良く、高雄曼荼羅を象徴します。
国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)の大日如来部分
上方にあるのでご覧になりにくいですが、その先の映像コーナーと合わせてご覧ください。
「映像で解説する高雄曼荼羅」コーナーに写る大日如来
続いて平安貴族の美意識にうっとり、作品No43. 国宝「釈迦如来像」、通称「赤釈迦(あかしゃか)」です。
国宝 釈迦如来像(しゃかにょらいぞう)
平安時代・12世紀 京都・神護寺蔵 9月8日(日)まで展示
身体をかたどる朱色の輪郭線は、伸びやかで張りがあり、なおかつ一定の描線で、よほどの鍛錬(たんれん)を積んだ絵師にしか引けないものです。
釈迦如来像の輪郭線
赤い衣の装飾は見事!
截金(きりかね)という、金箔を髪の毛ほどの大きさに切ったものを模様の形に貼る技法が用いられています。
釈迦如来像の衣部分
優雅な彩色文様とのコラボも見事! どこをとっても平安貴族の美意識が感じられます。
その大きさもぜひ会場で体感してください。
そして御本尊、作品No97. 国宝「薬師如来立像」です。
(中央)国宝 薬師如来立像(やくしにょらいりゅうぞう)
平安時代・8~9世紀 京都・神護寺蔵 通期展示
(右)重要文化財 日光菩薩立像(にっこうぼさつりゅうぞう)(左)重要文化財 月光菩薩立像(がっこうぼさつりゅうぞう)
どちらも平安時代・9世紀 京都・神護寺蔵 通期展示
後期からは光背と白い幕を取り、脇侍(わきじ)の日光・月光菩薩とともにその周囲をぐるりとご覧いただけます。
第5章 中央ステージ背面からの風景
「薬師如来立像」は日本彫刻史上の最高傑作です。
国宝 薬師如来立像と十二神将立像(じゅうにしんしょうりゅうぞう)
傑作たるゆえんのひとつに、背中の美しさがあります。図録には掲載しておりますが、迫力ある正面観に対し、背中の丸み、衣文の曲線、腰から下の柔らかな造形など、優美で上品な背面です。
展覧会図録に用いる写真撮影の際、初めて背中を拝見した筆者はその美しさに息をのみました。
木の素材感ではなく、暖かみのある穏やかで気品あふれる背面。ここまで意識をして造形されていることに心が震えました。
展覧会ではぜひ皆様にもご覧いただきたいと思い、神護寺様と相談を重ねてまいりました。
会場では彫刻作品として鑑賞されますが、本来は1200年もの間、国の平和と安寧(あんねい)という人々の願いを受け止めてきた、信仰の対象です。お寺では厨子(ずし)内に安置され、正面から拝観します。したがって、お寺と同じようにご覧いただきたいというのが神護寺様の想いです。一番近くで静かにご本尊を見つめ続けてこられました。
どのようなお姿をご覧いただくのが適当か、開幕後も検討を続けてまいりました。
そしてこのたび、酷暑の中、展覧会にお運びくださる来館者のため、背中を拝見する機会を作ってくださいました!
薬師如来立像の背中部分
おひとりでも多くの方々にご本尊の素晴らしさをより一層感じていただければ、担当者として望外の喜びです。
最後に、改めまして神護寺ご住職様はじめ、関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
第5章 展示風景
後期も引き続き、展覧会をお楽しみください!
カテゴリ:news、彫刻、書跡、絵画、工芸、「神護寺」
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posted by 古川 攝一 (教育普及室) at 2024年08月14日 (水)