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1089ブログ

東京国立博物館長 銭谷眞美より、皆様へ

新型コロナウイルスの感染が世界中に広がり、我が国でも大きな脅威になっています。未知の感染症の犠牲となった方々のご冥福をお祈りするとともに、謹んでお悔やみ申し上げます。また、現在なお闘病中の皆様には、一日も早いご回復をお祈り申し上げます。

東京国立博物館(トーハク)も、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、2月27日より臨時休館しています。これは、何よりも来館者の皆様と私たち職員の健康・安全を守るため、また私たちの社会を守るためのものです。臨時休館からひと月以上が経過しましたが、残念ながらまだ開館できる見通しが立ちません。さらに4月7日には政府より緊急事態宣言が発令され、外出等の自粛がさらに強く要請されました。

トーハクでは、先行きが見えないなかで、各部署多くのスタッフや関係者が開館を見据えながら一所懸命努力してきました。同時に、貴重な文化財を大切に守り、未来へ繋いでいくという、我々の重要な使命を全うすべく尽力してきました。そして、臨時休館中に博物館をどうやって楽しんでいただけるかについても、真剣に考えています。
ここに改めてご紹介したいと思います。

 

まず、研究員による展示解説「オンラインギャラリーツアー」を、トーハクのYouTubeチャンネルにアップしました。時を超えて大切に保管され、研究員の熱い想いによって展示された作品が、お客様の目に触れることなく展示期間を終えてしまうのはとても悲しいことです。現在3回分の動画をアップしておりますので、少しでも展示の雰囲気を味わっていただければ幸いです。

毎年恒例の「博物館でお花見を」という企画では、展示とさまざまな教育普及事業とともに、ぬり絵コーナー「春らんまん 桜ぬりえ」が予定されておりました。本当は印刷した紙をお客様にお配りする予定でしたが、ご自宅で印刷してお楽しみいただけるよう、ぬり絵のデータを公開しました。私も何十年かぶりにぬり絵に挑戦しましたが、集中できて気分がリフレッシュしました。ぜひお子様とご一緒にお楽しみください。

Google Arts & Cultureでは、博物館内のバーチャルツアーをご覧いただけます。本館と法隆寺宝物館内のストリートビューだけでなく、代表的な所蔵品の画像や解説も掲載されています。国宝「観楓図屏風」は、70億画素の超高解像度で鑑賞いただけますので、つい時間を忘れて見入ってしまいます。ぜひご覧ください。

ColBase(コルベース)国立博物館所蔵品統合検索システムもおすすめです。国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)の所蔵品の画像や解説、音声ガイドなどをお楽しみいただけます。掲載画像につきましては、複製、個人のSNSでの発信、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由にご利用いただくことができます。オンライン授業の題材にするなど、学校でのご利用も大歓迎です。ぜひ、この機会に国立博物館の所蔵作品をお楽しみいただきたいと思います。

NHK WORLD JAPANのサイトThe Magic of Japanese Masterpiecesでは、英語など17言語の音声で当館の所蔵品をご紹介しています。日本語はございませんが、海外の方にもぜひお聞きいただきたいですし、リスニングの材料としてもご活用いただけます。

この機会に改めてご紹介したいのは、保存と修理のページです。展覧会もさることながら、非常に重要な事業のひとつである保存・修理について、文化財の健康診断、予防、修理、そして当館における保存の歩みについて、わかりやすくご紹介しています。普段は皆様の目に触れる機会が少ない事業ではありますが、年に一度開催される特集展示「東京国立博物館の保存と修理」では、修理を終えた作品を展示し、修理のポイントや工程、その過程で得られた情報などをご紹介します。展示室で配布予定のリーフレットのデータをウェブサイトに掲載していますので、ぜひご覧ください。

出版・刊行物のページでは、東京国立博物館ニュースの最新号や、2003年度以降の博物館ニュースのデータを掲載しています。また、SNS(TwitterFacebookInstagram)のフォローや、メールマガジンのご登録も随時受け付けております。

最後に、いまご覧いただいている1089ブログをご紹介します。館のスタッフがそれぞれの想いをしたためてきたこのブログも、投稿開始から約10年が経過し、今やたくさんの読み物が揃うコンテンツとなりました。改めて読み返してみますと、思い出の展示や、それにまつわるストーリーがよみがえってきます。なかでも、「研究員のイチオシ」というカテゴリは、研究員ならではの視点で書かれていておすすめです。

本来、このような不安と混沌の時こそ、私たちは美しいものに触れ、歴史に学ぶことが必要です。臨時休館中にも、ぜひ上記にご紹介したようなコンテンツをお楽しみいただき、お一人お一人に、それぞれ新たなストーリーが生まれ、この危機に立ち向かう静かな、粘り強い力につながることを祈っています。

そして、展示は、何年も前から入念に準備を重ねてようやく実現する努力の結晶です。皆様に展示をご覧いただける日が一日も早く訪れることを、館員一同心待ちにしております。今後とも、東京国立博物館の活動を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

東京国立博物館長  銭谷眞美

 

カテゴリ:news

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posted by 銭谷眞美(館長) at 2020年04月08日 (水)