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1300年つづく、日本書紀の研究

日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」、もうご覧いただけたでしょうか。
養老4年(720)に元正天皇へ奏上された「日本書紀」は、神代から持統天皇11年(697)までを編年体で記した歴史書で、全30巻あります。
本展では、巻2(神代巻)(じんだいかん)を展示しています。

重要文化財 日本書紀 巻二(にほんしょき まきに) 重要文化財 日本書紀 巻二(にほんしょき まきに)
重要文化財 日本書紀 巻二(にほんしょき まきに) 
南北朝時代・永和元年~3年(1375~77) 愛知・熱田神宮蔵

この場面は、本展の主旨となる第九段一書第二の部分です。右から四行目に、「高皇産霊尊」(たかみむすびのみこと)[▲1][▲1] と、同じ行の下方に「大己貴神」(おおなむちのかみ)[▲1][▲1] という文字が見えます。高皇産霊尊が大己貴神に、「顕露之事」(あらわにのこと)[▲2~3][▲2~3] は我が皇孫が治めるから、あなたは「神事 [▲3][▲3](幽事 [▲4][▲4])」(かくれたること)を治めなさい、と述べています。この時に分けて治められることになった「幽」と「顕」を象徴する場所が、出雲と大和なのです。

この「日本書紀(熱田本)」は、愛知県名古屋市に鎮座する熱田神宮(あつたじんぐう)に奉納され伝わったものです。巻2にはありませんが、全15巻中10巻に奥書(おくがき)があり、永和元年から三年の間に写されたことがわかります。さらに巻9には原本の奥書も記されており、そこから、卜部兼熈(うらべかねひろ、1348~1402)が秘点を記した本を写したことがわかります。

兼熈の卜部氏吉田家は、「日本書紀」の研究を重要視しており、本展の前期(~2月9日(日)まで)で展示した国宝「日本書紀 神代巻(乾元本)」には、卜部氏吉田家の秘点、すなわち解釈や訓点が書き込まれていました。この熱田本にも、その卜部氏吉田家の秘点が継承されていると考えられます。


これは、江戸時代に仮名で書かれた「日本書紀」です。


仮名日本紀 
香河景号写 江戸時代・享保3年(1817)写、30冊のうち、東京国立博物館蔵
※本展で展示はありません

赤線部分に、「あらはにの事」(顕)、「神の事」(幽)が見えます。「日本書紀」は、その読み方や解釈について、鎌倉時代以降に卜部氏が中心になって、研究がさかんに行われました。江戸時代の国学者の間でも研究はつづき、このように読みやすく仮名で記された本も作られたのです。

成立から1300年、さまざまに解釈され研究されてきた「日本書紀」の重みを、ぜひ本展で感じてください。

日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」

平成館 特別展示室
2020年1月15日(水) ~ 2020年3月8日(日)

 

カテゴリ:2019年度の特別展

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posted by 恵美千鶴子(百五十年史編纂室長) at 2020年02月12日 (水)