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【縄文】装身具の魅力の源は?

連日たくさんのお客様にお越しいただいている特別展「縄文」
本展の副題は「1万年の美の鼓動」です。
縄文の美にスポットをあてた展覧会で、様々な美を紹介しています。
今回は第1章の装身具についてお話ししたいと思います。

第1章 暮らしの美」には、縄文時代の人びとが暮らしのなかで作り出したさまざまな道具を展示しています

装身具には髪飾、耳飾、胸飾、腕飾、腰飾等あります。
縄文人はこれらの装身具を身に着けていました。
このイラストは縄文人をイメージして作りました。

我が身を飾る縄文人のイメージ

誰をモデルにするか悩みましたが、行き着いた先は私自身の妻でした。
妻の写真を撮り、パソコン上でなぞって人の形を作り、縄文時代に着ていたであろう服を着せて、最後に展示している装身具を付けました。

装身具の位置は、土偶や、装身具が装着された状態でみつかった人骨を参考にしています。
例えば埼玉県の後谷(うしろや)遺跡からは、漆塗櫛とともにみみずく土偶が出土しています。この土偶の頭には櫛が、耳には耳飾が装着されています。
このように土偶をみることで、当時のファッションをある程度復元することは可能です。

重要文化財 漆塗櫛
縄文時代(晩期)・前1000~前400年



重要文化財 みみずく土偶
縄文時代(後期)・前2000~前1000年


いずれも埼玉県桶川市 後谷遺跡出土/埼玉・桶川市教育委員会蔵

今回の展示品をみると、土、木、石、骨、貝のように、装身具には様々な素材が使われています。
これらの装身具は赤、白、緑と色彩豊かでもあり、人々を魅了します。

どの装身具もおすすめなのですが、なかでも私が気にいっているのは硬玉(こうぎょく)とも呼ばれるヒスイで作られた胸飾の大珠(たいしゅ)です。
ヒスイは一見すると緑色のきれいな石なのですが、じつは光をかざすことで神秘的な美しい色へと変貌します。
今回の展示では、ヒスイを下から光をあて、縄文人が光でかざし見たように再現しています。
ぜひ展示室にてご覧ください。
 
重要文化財 硬玉製大珠
栃木県大田原市湯津上出土 縄文時代(中期)・前3000~前2000年
東京国立博物館蔵
※右は光を当てたときの様子


ヒスイの大珠は、遺跡からはほとんど出土せず、出土してもせいぜい1個です。
縄文時代の日本列島では、良質のヒスイは新潟県糸魚川市周辺でしか産出せず、大変貴重な石材でした。
それが茨城県の坪井上遺跡からは8個も見つかっています。
この坪井上遺跡では、新潟県の信濃川流域でよく作られた土器も出土しており、新潟県域から人の往来があったようです。
おそらく貴重なヒスイを、坪井上(つぼいうえ)遺跡周辺で採れる瑪瑙(めのう)等と交換をしていたのでしょう。
瑪瑙も装身具に使われた素材です。
このようにヒスイは日本列島各地において、物々交換という形で流通していたと考えられています。


硬玉製大珠
茨城県常陸大宮市 坪井上遺跡出土 縄文時代(中期)・前3000~前2000年
茨城・常陸大宮市教育委員会蔵ほか


ファッション感覚が豊かな縄文人は、ときには装身具の素材を入手するべく、全国各地を歩き求めていました。
装身具の美の背景には、縄文人の絶え間ない努力があったのです。

カテゴリ:考古2018年度の特別展

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posted by 河野正訓(考古室) at 2018年08月10日 (金)

 

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