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特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」報道発表会!

東京国立博物館では、来年1月16日(水)~2月24日(日)、平成館にて特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」を開催いたします。
7月26日(木)に報道発表会を行いました。

書に詳しくなくても、顔真卿[がんしんけい]と聞いてピンとくる方はいらっしゃるかもしれません。
実は、世界史の教科書やセンター試験にも登場する有名人でもあります。

そんな顔真卿の人物や書の本質に迫り、唐時代の書の果たした役割を検証する本展の概要を、担当研究員である学芸企画部長の富田が解説しました。


6章構成について解説

本展は6章にて構成されています。
まず、第1章「書体の変遷」では、篆書[てんしょ]から隷書[れいしょ]へ、隷書から楷書へと進化を遂げた変遷を紹介します。
次に、第2章「唐時代の書 安史の乱まで」、第3章「唐時代の書、顔真卿の活躍」では、安史の乱で唐時代を区分し、唐時代の書を紹介します。
そして、第4章「日本における唐時代の書の受容」、第5章「宋時代における顔真卿の評価」、第6章「後世への影響」では、顔真卿の書や唐時代の書が、日本や後世へどのような影響を与えたのかを紹介します。

6章構成の本展のみどころは3つあります。
①楷書の美しさを徹底解析!
②天下の劇跡「祭姪文稿」[さいてつぶんこう]の魅力に迫る!!
③王羲之神話の崩壊をたどる!!!

まず、1つ目のみどころ「楷書の美しさを徹底解析!」


孔子廟堂碑 虞世南筆 唐時代・貞観2~4年(628~630) 三井記念美術館蔵
碑は唐末に失われ、原石拓本はこの一つしかありません。とても貴重な作品です。

 
九成宮醴泉銘 欧陽詢筆 唐時代・貞観6年(632) 台東区立書道博物館蔵
欧陽詢76歳の作で、楷書の最高傑作として知られています。


楷書に至るまで、公式の書体は篆書から隷書へ、隷書から楷書へと進化してきましたが、楷書が完成してから1000年以上経た現在においても公式の書体は楷書のままです。数々の名品で、読みやすさ、書きやすさ、美しさの要素を満たす「楷書の美しさ」をぜひご堪能ください。

次のみどころ「天下の劇跡『祭姪文稿』の魅力に迫る!!」


作品に込められた顔真卿の思いを解説

今回、台北 國立故宮博物院所蔵の「祭姪文稿」を日本で初めて公開いたします。所蔵先の台北 國立故宮博物院でも2012年に展示して以来公開していないため、本展で見逃すと当分の間見ることはできないであろう貴重な作品です。
この「祭姪文稿」は顔真卿が亡き親族を供養した文章の草稿で、悲痛と義憤に満ちた心情が紙面に溢れています。最初は平静に書かれていますが、感情が昂ぶるにつれ筆は縦横に走り、思いの揺れを示す生々しい推敲の跡が随所に見られます。実際にご覧になったら、その迫力に圧倒され、きっと「祭姪文稿」に釘付けになるはずです。
唐時代の名家が書いた肉筆がほとんど失われたなか、歴代皇帝の庇護のもと、奇跡的に残された「祭姪文稿」は、世界の頂点を極めた唐時代の文化の精粋をまざまざと伝える名宝として、ひときわ大きな存在感を示す書です。ぜひご覧ください。


千福寺多宝塔碑 顔真卿筆 唐時代・天宝11載(752) 東京国立博物館蔵
りりしい書きぶりの作品もあります。こちらは書の初心者が手本としてきたものです。


最後のみどころ「王羲之神話の崩壊をたどる!!!」

 
行書五言聯 趙之謙筆 清時代・咸豊8 年(1858)個人蔵
顔真卿を学んだ趙之謙は、野趣あふれる書風を創出しました。


顔真卿の書の評価は、北宋時代になると、王羲之のそれに比肩しうる人物として定着しました。さらに時代が進むと、顔真卿の肉筆は少数ながら伝わるものの、王羲之の肉筆は皆無となってしまいます。次第に肉筆が存在しない王羲之の書法を学ぶよりも青銅器や石碑の文字を学ぶようになるという、王羲之神話が崩壊する過程を紹介いたします。
このように王羲之神話が崩壊したことと、顔真卿の楷書が書の入門として多くの支持を受けるようになったことを考え合わせると、展覧会タイトルの副題のとおり、顔真卿は「王義之を超えた名筆」と言うことができると考えられます。

書はわからない、読めないから、作品に興味が涌かないという方もいらっしゃるかもしれません。ですが、「祭姪文稿」をはじめ、作品には筆者の魂、形を超えたオーラが込められています。書が読めなくても、真剣に見れば何かを感じ取れるはずでしょう。

このように、本展は書を知っている人にはもちろん、書を知らない人でも、書の美しさやそこに込められた思いを感じ取れる貴重な機会となります。特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」は来年の新春開幕です。どうぞお楽しみに!

 
ご期待ください!

カテゴリ:2018年度の特別展

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posted by 柳澤想(広報室) at 2018年08月01日 (水)

 

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