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国宝“風神雷神”5年ぶりに参上

「国宝“風神雷神”5年ぶりに参上」というコピーを引っさげて、平成館で開催されている特別展「栄西と建仁寺」の会場に登場したのが、俵屋宗達が描いた「風神」と「雷神」。


国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 江戸時代・17世紀 京都・建仁寺蔵

同じ平成館で開催された「大琳派展」にもこの屏風が出品されていたことを思い出し、「あれから、5年か!」と思われた方も多いことと思います。当館職員の中にも「5年ぶりに宗達筆の国宝「風神雷神図屏風」が当館に参上です。」と説明をしている人がいました。
「大琳派展」が開催されたのは、2008年の秋でした。だから、当館での公開は5年半ぶりになるのです。5年ぶりというのは、2009年8月に、岡山県立美術館で開催された特別展「建仁寺」で1週間だけ展示されていますから、それ以来約5年ぶりの公開で、当館だけでなく、人前に姿を現したのが5年ぶり(その間は、誰も見ることが出来なかったのです)ということなのです。展覧会の準備をしていたスタッフは、チラシやポスターは全国に配られますから、「この世に参上!」5年ぶり!のつもりだったのです。
誤解の無いようにと思い、博物館に設置した展覧会看板では「5年ぶり」を取ってもらいました。ところが、上野駅や、館内にもポスターは貼られています。これを見ると、当館での公開が5年ぶりと思われても仕方がないなあと思うのです……。書籍や映像でよく目にする作品ですから、簡単に見ることが出来るように思いますが、実際の作品は、5年間、京都国立博物館の収蔵庫でお休みになられていましたから、建仁寺の方々もその姿を見てはいなかったので す。

登場によって「上野に嵐を呼ぶ」とも言われたのですが、楽しげに天を駆けているようにも見えます。かつて特別展「天神さまの美術」(2001年夏)が行われたときには、連日午後になると雷鳴が轟きました。宗達の「風神雷神」は、怒りの神ではないようです。


特別展「天神さまの美術」(図録表紙)

現在、本館7室「日本美術の流れ」では、尾形光琳が描いた重要文化財「風神雷神図屏風」が展示されています。


重要文化財 尾形光琳筆 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵

「大琳派展」では、宗達、光琳、酒井抱一、鈴木其一の琳派の4人による「風神雷神図」4作品が一堂に並びましたが、それ以来の同時展示です。抱一の作品は、出光美術館で(5月6日まで)、其一の「風神雷神図襖」も、東京富士美術館で(6月29日まで)公開され、この春は「風神雷神祭」のようです。

ある方から「宗達の風神雷神は怖くないですね。」と言われました。さて光琳はどうでしょう?


風神雷神図屏風 雷神表情(左・宗達筆、右・光琳筆)

黒雲が重く描かれ、顔の彩色も違います。目線も違います。そして線の質も違います。宗達の白一色の雷神は、実は、頬と耳を少し紅に染めています。さらに風神は、ひょうきんな顔つきとも言われます。日本の誇る「ゆるキャラ」として宗達は楽しみながら描いていたのかもしれません。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ2014年度の特別展

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posted by 田沢裕賀(絵画・彫刻室長) at 2014年05月04日 (日)