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特別展「出雲-聖地の至宝-」展に荒神谷遺跡出土の銅剣がずらり!

島根県出雲市斐川町神庭の荒神谷遺跡から出土した銅剣は全部で358本。一遺跡からの出土数は全国最多です。
1984(昭和59)年、農道の建設に先立って行われた発掘調査によって発見されました。翌年の1985(昭和60)年には、7m離れたところから、銅鐸6個、銅矛16本が一緒に出土しています。

史跡 荒神谷遺跡 (銅剣発掘調査時の状況)
史跡 荒神谷遺跡 (銅剣発掘調査時の状況)

銅剣は、埋納坑(銅剣を埋めるために掘られた穴)に四列に整然と並べられていました。各列の本数は、写真手前からA列34本、B列111本、C列120本、D列93本です。出土状況をみるかぎり、木箱などに入れられた形跡はありません。

銅剣はすべて中細形銅剣c類と呼ばれている型式で、その圧倒的な数から「出雲型銅剣」と呼ばれることもあります。
出雲で製作された可能性が高く、製作年代は紀元前2世紀末から紀元前1世紀、埋納された時期は紀元前後から紀元後の1世紀と推定されます。

全長の平均は51.65㎝。最長はC109号の53.9㎝、逆に最小はC93号の48.1㎝(どちらも推定長)です。重量はおおむね500グラム程度です。

今回の展覧会では、358本の銅剣の中から、所有者の文化庁が平成22年度から行っている再保存修理の完了した42本を展示しています。下の写真の右側2本(右からA32号、A33号)も展示しています。

国宝 銅剣
国宝 銅剣 (右からA32,A33,B62)
弥生時代・前2~前1世紀
島根県・荒神谷遺跡出土 文化庁蔵


358本の銅剣のうち一本だけ研磨を施していない銅剣もありました。写真左端のB62号です。これと研磨を加えたその他の銅剣と比較すると、形状がほとんど変わらないことがわかります。

国宝 銅剣 荒神谷C67号
国宝 銅剣 荒神谷C67号
(今回は展示していません)


銅剣を詳細に観察すると、写真のように、茎にタガネ状の工具によって打ち込まれた「×」印の刻印が発見されました。荒神谷銅剣にはすべての銅剣に「×」印の刻印をしようとした意志が読みとれます。観覧の際は、是非銅剣の茎部分を目をこらしてみてください。


荒神谷遺跡の銅剣は、基となるモデルをそのまま写し取るのではなく、銅剣のもつ特徴を理念的に描きながら、比較的短期間のうちに製作されたと思われます。


島根県立古代出雲歴史博物館の銅剣展示

島根県出雲市大社町にある、島根県立古代出雲歴史博物館では、この荒神谷遺跡の銅剣の残りを展示しています。荒神谷遺跡出土の青銅器が、いつ、誰によって、なぜ埋納されたのか、実は今もその明確な答えは出ていません。まずは、特別4室で出雲の青銅器の特色に触れていただき、さらには、ぜひ出雲で荒神谷遺跡の現地や博物館の銅剣をみながら、その謎解きに挑戦してみてはいかがでしょうか。


特別展「出雲―聖地の至宝―」(2012年10月10日(水)~11月25日(日)) 本館特別5室・4室で開催中!

カテゴリ:研究員のイチオシ2012年度の特別展

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posted by 足立克己(島根県立古代出雲歴史博物館学芸部長) at 2012年10月26日 (金)