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趙之謙とその時代─趙之謙生誕180年記念展─

  • 『楷書「小黄香い」横披 趙之謙筆 清時代・同治5年(1866) 青山杉雨氏寄贈』の画像

    楷書「小黄香い」横披 趙之謙筆 清時代・同治5年(1866) 青山杉雨氏寄贈

    平成館 企画展示室
    2009年8月4日(火) ~ 2009年9月27日(日)

     中国の清(しん)時代(1616-1912)も19世紀になると、学問の進展を背景に、新しい書風が生み出されました。その中心的な役割を果たした人物が、趙之謙(ちょうしけん)(1829~84)です。

      趙之謙は、紹興(しょうこう)の裕福な家に生まれましたが、少年の頃に家が破産し、貧しい生活を強いられます。その後、省の司法長官繆梓(ぼくし)のも とで見識を広め、官僚の登用試験である科挙の1次試験に合格します。しかし、太平天国の乱が杭州に及ぶと、繆梓は戦死、妻と娘も亡くなり、紹興の自宅も焼 失してしまいます。

      翌年以降、繰り返し科挙の2次試験を受験しましたが、ことごとく失敗、ついに中央政府の高級官僚となる夢を断念します。地方役人の地位を得た趙之謙は江 西(こうせい)省の南昌(なんしょう)に赴任、地方史『江西通志』の編集事業を完成します。その後は県の行政長官として、江西省の各地に赴任しますが、過 労がたたり56歳で病没しました。

     深い学識を持ちながらも、報われない境涯。理想と現実のはざまで、趙之謙は胸中の想いを、独特の詩情をたたえた書・画・篆刻に昇華しました。

      科挙を受験するため北京に赴いた際、胡じゅ(こじゅ)(1825~72)・沈樹鏞(しんじゅよう)(1832~73)・魏錫曾(ぎせきそう) (?~1881)らと出会い、当時脚光を浴びていた金石学(きんせきがく)に没頭し、趙之謙の作風は大きく変化します。とりわけ北魏(ほくぎ)時代 (386-534)の書に触発され、やがて「北魏書(ほくぎしょ)」という未曾有の表現を確立しました。中国古代の文字を学び、新しい書風を導いた碑学派 は、趙之謙の出現によって全盛期を迎えたといっても過言ではありません。

      この特集陳列は、趙之謙の生誕180年を記念し、趙之謙の作品に焦点をあてながら、清時代の書の後半を飾る碑学派の歴史を窺おうとするものです。東京国 立博物館と台東区立書道博物館との連携企画第7弾。後世に大きな影響を与え、今なお多くの人々を魅了する趙之謙の作品を紹介します。

      ※会期中、作品の展示替(2009年8月4日(火)~30日(日)、9月1日(火)~27日(日))があります。展示作品一覧の展示期間をご覧ください。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
楷書「小黄香い」横披 趙之謙筆 清時代・同治5年(1866) 青山杉雨氏寄贈
楷書五言聯 趙之謙筆 清時代・19世紀 個人蔵
行書七言古詩四屏 趙之謙筆 清時代・光緒9年(1883) 高島菊次郎氏寄贈
台東区立書道博物館にて同時開催

台東区立書道博物館 2009年8月4日(火)~9月27日(日)
台東区立書道博物館にて「趙之謙とその時代 ─趙之謙生誕180年記念展─」を同時開催いたします。こちらの会場では、趙之謙が学んだ古典の拓本と、その臨書を並べて展示し、比較いただくことができます。ぜひ両展示ともご覧ください。

※会期中、東京国立博物館で書道博物館の、書道博物館で東京国立博物館の半券をご提示いただければ、それぞれ団体割引料金で観覧できます(各種割引の併用はできません)。


 台東区立書道博物館のウェブサイト:http://www.taitocity.net/taito/shodou/
関連事業

月例講演会「趙之謙とその時代」
平成館 大講堂:2009/9/5 13:30~15:00 当日受付
講師:台東区立書道博物館主任研究員 鍋島 稲子 氏
        東京国立博物館調査研究課長 富田 淳


列品解説「趙之謙とその時代」
平成館企画展示室 2009年8月25日(火)14:00 受付終了
講師:東京国立博物館調査研究課長  富田 淳