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能「兼平」の面と装束

  • 『能面 平太 是閑作 安土桃山時代・16世紀』の画像

    能面 平太 是閑作 安土桃山時代・16世紀

    本館 9室
    2009年5月26日(火) ~ 2009年7月20日(月・祝)

     能「兼平」は平安時代末期の武将・木曾義仲(きそよしなか)と、その家臣・今井兼平(いまいかねひら)の物語です。

      信濃国木曾(きそ)から近江国粟津(あわづ)を目指す旅の僧が、矢橋(やばせ)の浦にたどりつくと、舟を漕ぐひとりの老人が姿を現します。僧は老人に頼 み、舟で琵琶湖を渡り、粟津に到着します。しかし、着いたときには老人の姿はどこにもなかったのです。不思議に思っていた僧にその土地の船頭は、ここがか つて義仲と兼平が敵に追い詰められて悲惨な最期を遂げた場所であることを告げます。僧が供養のために経を唱えていると、甲冑をつけた兼平の霊が現れます。 兼平の霊は舟の老人も自分であると告げ、主君・義仲の最期を物語り、義仲の霊を弔ってほしいと僧に頼みます。そして、壮絶な自害を遂げた自分の最期を語る と、兼平の霊は消えゆくのでした。

      能舞台では、旅の僧は、頭頂が三角にとがった角帽子(すみぼうし)を被り、薄地の上衣である水衣(みずごろも)を着用します。兼平の霊は、甲冑のかわり に、金襴(きんらん)や金入(きんいり)錦(にしき)でできた法被(はっぴ)と、半切(はんぎれ)と呼ばれる袴を着用し、度重なる合戦で日焼けした勇壮な 武将の表情を写した「平太(へいた)」という面をつけて登場します。

      能には、「兼平」のように合戦に負けた武将の物語を主題にした「負修羅物(まけしゅらもの)」と呼ばれる演目が数多くあります。死者を弔うという特性を持つ能ならではといえましょう。能「兼平」は滅びゆく人々の美学を感じさせる名曲のひとつです。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
能面 平太 是閑作 安土桃山時代・16世紀
厚板 浅葱淡茶段格子葡萄模様 江戸時代・18世紀