このページの本文へ移動

厚板

  • 『重要文化財 厚板 金紅片身替詩歌模様 奈良金春座伝来 江戸時代・17世紀』の画像

    重要文化財 厚板 金紅片身替詩歌模様 奈良金春座伝来 江戸時代・17世紀

    本館 9室
    2008年12月23日(火・祝) ~ 2009年3月1日(日)

     厚板は、もともと中国から舶載された高級織物のうち、錦や唐織など厚手の織物のことで厚い板に巻かれて舶載されたことから厚板と呼ばれます。室町時代には、武将たちが私貿易を通じて手に入れた中国裂(ちゅうごくぎれ)を能役者に下賜し、作らせた装束を厚板と呼ぶようになります。江戸時代になると、日本で平織の地に綾織で模様を織り出した織物が織られるようになり厚板と呼ばれましたが、それは帯地などに用いられ、能装束には用いられません。安土桃山~江戸時代以降、能装束にはもっぱら、日本で織られた綾織物を使用するようになりました。

      通常、能装束の厚板は、武将、神、鬼神など、男性のシテ(主役)を演じる際に、狩衣(かりぎぬ)や法被(はっぴ)など表着(うわぎ)の下に着用する着付として用いられます。表からはあまり見えないので、格子や段、縞など、幾何学的な反復模様が主流でした。ところが、徳川家康が天下を統一し、お能が江戸幕府の式楽となってから、厚板にも、役柄に合わせて、さまざまなデザインが創り出されます。高貴な武将役には、亀甲文や七宝文の地紋に桐紋や菊紋、巴紋といった家紋を散した典雅さが求められました。荒々しい神や鬼系の役を演じる際には、雷文や山道文といった大胆な幾何学形の地紋に打板(雲版)文、雲龍文、槌車文といった力強い模様を散したデザイン。一方、「敦盛」や「清経」などの主人公のように笛をたしなむ風雅な武将役 には、蝶や藤の花房、扇文などを唐織の技法で織り出した優美なデザインの厚板唐織が、用いられました。江戸時代における織物技術の発達とともに、厚板のデザインは、能の演出の一部として組み入れられていったのです。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
厚板 藍白段籠目唐草模様 奈良金春座伝来 江戸時代・17世紀
重要文化財 厚板 金紅片身替詩歌模様 奈良金春座伝来 江戸時代・17世紀