本館 14室
2007年1月2日(火) ~ 2007年2月25日(日)
釈奠(せきてん)は、孔子とその門人を祀る祭儀で、わが国には奈良時代に中国から伝えられました。
釈は「置く」、奠は「据える」という意味の文字で、釈奠とは孔子やその門人の霊前にいろいろなお供え物を置き据えるお祭りなのです。この祭儀に用いられた器物を総称して、釈奠器と呼んでいます。
江戸時代には、全国各地に建てられた藩校や孔子を祀る聖堂において、春と秋の年2回、釈奠の祭儀が絶えず催されていました。幕府が建立した湯島聖堂では現在も、4月の第4日曜日に孔子祭として釈奠の儀式が行われています。
湯島聖堂は5代将軍徳川綱吉の命により、元禄3年に創建されました。しかし聖堂は造営以来度々火災に見舞われ、祭器や調度の類も、創建当初のものはごく僅かしか残っていません。現存する釈奠器のほとんどが安永年間以降に献納されたものですが、いずれも紀年銘があり、制作された年代が明らかです。精緻な蒔絵で飾られた器物が多く、近世の漆芸史を辿る上でも、貴重な作品群となっています。
また、明治維新後の一時、政府は湯島聖堂を博物館として使用していました。その際に釈奠器も国へ移管され、関東大震災や第2次世界大戦の戦禍を免れ、現在当館に保管されています。