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能《舟弁慶》-面・装束-

  • 『唐織 浅葱地松皮菱花熨斗模様 江戸時代・18世紀』の画像

    唐織 浅葱地松皮菱花熨斗模様 江戸時代・18世紀

    本館 9室
    2006年10月31日(火) ~ 2006年12月6日(水)

     能《船弁慶》は、室町時代中期から後期にかけて活躍した能作者、観世小次郎信光(かんぜこじろうのぶみつ:1435-1516)の代表作のひとつです。華麗な扮装や歌舞を取り入れた、風流性の濃い作風が特色です。平知盛(たいらのとももり:1152-1185)の怨霊(おんりょう)が華やかな装束で薙刀(なぎなた)を振り回し、源義経(みなもとのよしつね:1159-1189)の一行に襲いかかる場面は、スペクタクルで躍動感のあるシーンとして有名です。

      能の舞台では、兄の源頼朝と仲違いした義経が、武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい:?-1189)ら近臣と共に西国へと逃げていく場面から始まります。途中、摂津(せっつ)の大物浦(だいもつのうら)の船宿で、あとを慕(した)ってやってきた義経の恋人、静御前(しずかごぜん)に出会います。静御前の役は、唐織(からおり)を着流しに着用し、小面(こおもて)と呼ばれる若い女性の表情を持つ面を掛けて登場します。静御前は男装をして歌舞を見せる白拍子(しらびょうし)とよばれる芸人であることから、頭に金彩色を施した立烏帽子(たてえぼし)をかぶります。女性の身で義経らと共に落ち逃れる危険を思い、 義経は静御前に都に帰るようにさとすと、彼女は義経の前途の安全を祈って舞を舞い、涙ながらに立ち去ります。義経の一向が先を急ぎ船出すると、にわかに暴風が起こります。沖から、頭上に鍬形(くわがた)を生やし髪を振り乱して、金色に眼を光らせた三日月(みかづき)と呼ばれる恐ろしい形相の面を掛け、厚板の上から法被(はっぴ・上衣)と半切(はんぎり・袴)を着用した怨霊が現われ、薙刀を振り回して義経らの一行に襲い掛かってきます。それは、壇ノ浦の戦いで義経軍に破れて入水した平知盛の霊でした。怨みを募らせながら襲いかかってくる知盛の怨霊も、最後には弁慶の祈祷(きとう)の力に屈して退散するのでし た。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
唐織 浅葱地松皮菱花熨斗模様 江戸時代・18世紀
厚板 濃茶茶浅葱段雲龍鱗片輪車唐花模様 江戸時代・18世紀