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うつす・まなぶ・つたえる

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    平成館 特別展示室第3室
    2005年7月20日(水) ~ 2005年9月12日(月)

     特別展「模写・模造と日本美術―うつす・まなぶ・つたえる―」と同テーマで、「うつす」「まなぶ」「つたえる」行為の尊さ、大切さを親子で実感していただく企画をお届けします。小・中学生のお子さんと親子で楽しんでいただけるプログラムです。

       模写・模造を、ホンモノよりも価値の低いニセモノだと思っている人はいませんか?

       とんでもない!あるモノをうつし、あたらしいモノをつくるのは、日本の美術の大きな伝統なのです。親と子のギャラリー「うつす・まなぶ・つたえる」では、日本美術のそんな一面をやさしく解説しながら、うつし、まなび、つたえることの楽しさ、難しさ、すばらしさを実感していただきます。

第1部 うつす
 ありがたい仏像にあやかるために、その仏像をうつす。仏像の歴史は、そのくりかえしです。鎌倉時代には善光寺(ぜんこうじ)の阿弥陀三尊像(あみださんぞんぞう)をうつすことが大流行し、数えきれないほど多くの「善光寺式阿弥陀三尊像」が制作されました。今も全国に200体以上がのこっています。ここでは、善光寺式阿弥陀三尊像を題材に、人がものをうつすという行為について探ります。
重要文化財 如来及び両脇侍立像 重要文化財 如来及び両脇侍立像 三国時代(朝鮮)・6~7世紀 法隆寺献納宝物   重要文化財 如来及び両脇侍立像 重要文化財 阿弥陀如来及び両脇侍立像 鎌倉時代・13世紀 福島・いわき市蔵   ● 仏像が3体並ぶ形式や手の形がそっくり!
 善光寺の本尊は今も秘仏とされ、ここ千数百年見たものはないといわれています。そこでこの像の姿を推理する有力な手がかりとなるのが、善光寺の本尊と同じく百済(くだら)から渡来した仏像(写真左)です。ここでは、百済渡来の仏像と後に善光寺の本尊を模して作られたとされる「善光寺式阿弥陀三尊像」(写真右)を比べてみましょう。

● 2つの像のそっくりな点を検証してみると・・・
  1. 本尊阿弥陀如来と両脇の菩薩の三尊がひとつの光背(こうはい)を背にしている
  2. 光背はハスの花びらの形をしていて、表面の雲の模様の中に7体の小さな仏像が付いている
  3. 如来は、左手は下げて人差し指と中指だけ伸ばしている。右手は挙げ、てのひらを前に向けて指を全部伸ばしている
  4. 両脇の菩薩は、胸の前でてのひらを上下に重ねており、頭に大きな冠をかぶっている
ワークショップ 関連ワークショップ
 
「探検ツアー 善光寺式阿弥陀三尊像を探そう!」  会期中毎日 13:30から開催 当日参加
 本館や法隆寺宝物館の平常展に善光寺式阿弥陀三尊像を探しに行きます。ワークシートを参考に善光寺式阿弥陀三尊像の特徴を自分の目で確かめてみましょう。
第2部 まなぶ
草書五言律詩軸   市川米庵による臨書    うつすことはまなぶことです。お手本を勉強して、自分のものにするのです。勉強のために有名な書や絵をそのとおりにうつすことも昔からおこなわれています。

 ここでは、中国の有名な書家、王建中の書とそれを模した江戸時代の書家市河米庵の書、さらに、江戸時代の絵師狩野晴川院が、絵の勉強のために鎌倉時代の絵巻をうつした作品を展示します。


● そっくりに、びっくり!

 お手本を傍らにおいて移した臨書(りんしょ)の作品。左がほんもので、右がうつしたもの。正確に写されていることに驚かされます。
左. 草書五言律詩軸 王建中筆 明時代・16世紀
右. 市川米庵による臨書 江戸時代・19世紀
(いずれも 東京国立博物館蔵)
   
ワークショップ 関連ワークショップ
 
「まねてまなぶ書」  会期中毎日 11:00~16:00 当日参加
 筆を使って実際に書を書きます。手本を見ながらまねる臨書、手本の文字の輪郭を縁取ってから中を塗る籠字(かごじ)を体験。あなたも王建中の書をまねて、その極意を学んでみませんか。
第3部 つたえる
国宝 灌頂幡 国宝 灌頂幡   模造 灌頂幡 模造 灌頂幡    うつすことはつたえることです。うつされたものによって、いまはなくなってしまったもの、いまは見られないものがわたしたちの前にあらわれ、未来の人たちも見ることができます。

 ここでは、通常は法隆寺宝物館で展示している国宝の灌頂幡の模造の一部を展示します。灌頂幡とは頭上高くに吊り下げる寺院装飾で、わが国の飛鳥時代の金工品を代表する名品といえるでしょう。精緻な文様をそのままにうつした模造作品は、私たちに当時の技術の高さと文様の美しさをつたえてくれます。

 また、修復によってかつての輝きをとりもどした平泉・中尊寺金色堂の、修復前の姿をつたえる「実写図」を紹介します。これもまた、明治時代の金色堂の姿を今に伝える貴重な資料です。
(いずれも 東京国立博物館蔵)
   
ワークショップ 関連ワークショップ
 
「アナログ・プリント」  会期中毎日 11:00~16:00 当日参加
 灌頂幡の部分模造を使ったフロッタージュ(こすり絵)が体験できます。模造板の上にのせた箔や紙をこすると、天女や唐草文様の細かい文様が薄い紙に現れます。
 
「彫金技法の実演」
2005年8月6日(土)、13日(土)、20日(土)、27日(土) 14:30~ 当日参加
透彫りなど彫金技法の実演を行います。
ワークショップ
「描いてみよう!日本の美術」 受付終了
  本館 2階展示室 2005年7月30日(土)、8月24日(水) 16:30~19:30 
定員:50組(親子で参加)
閉館後の本館2階「日本美術の流れ」展示室で国宝や、重要文化財など、日本美術の名品をスケッチします。