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幕末の怪しき仏画―狩野一信の五百羅漢図

  • 『五百羅漢図 第13幅 六道 鬼趣(部分) 狩野一信筆 江戸時代・19世紀 富美宮允子内親王・泰宮聡子内親王御下賜』の画像

    五百羅漢図 第13幅 六道 鬼趣(部分) 狩野一信筆 江戸時代・19世紀 富美宮允子内親王・泰宮聡子内親王御下賜

    本館 特別1室・特別2室
    2006年2月14日(火) ~ 2006年3月26日(日)

     知る人ぞ知る幕末の絵師・狩野一信(かのうかずのぶ)の五百羅漢図(ごひゃくらかんず)のすべてをまとめてご覧いただける絶好の機会です。一信は、仏画に秀でた画家で、その作品に千葉・成田山新勝寺(なりたさんしんしょうじ)の釈迦堂天井の龍図や増上寺(ぞうじょうじ)の五百羅漢図などが知られています。

     明治時代には、近代洋画の父といわれた黒田清輝をはじめ、一信の独特な画風に魅せられた画家や評者たちに注目されていました。その遺作にして畢生(ひっせい)の名作、東京・芝の増上寺に納められた五百羅漢図の100幅は、寺を訪れる人たちの目にふれ、感嘆の声を集めていました。戦後、人々の目にふれる機会がほとんどなくなり、一信の名も次第に聞かれなくなったようです。しかし、近年の調査研究によって、増上寺の五百羅漢図の全貌が広く知られることとなり、一信にあらためて熱い視線が注がれることとなりました。

     今回ご覧いただく当館の五百羅漢図の全50幅は、明治天皇の皇女である富美宮、泰宮から当館に下賜されたものです。増上寺のものとほぼ同じ図柄ですが、かなり小ぶりなもので、1幅に2画面ずつ配し、ひとつの画面に、仏教の修行において最高の段階に達した人である羅漢を5人ずつ描いています。羅漢や背景が、執拗(しつよう)なまでに描写されて、その鮮烈な色彩には目を奪われるでしょう。さらに大きな特徴として、当時、西洋からもたされた絵画制作技法である陰影法などを取り入れています。その科学的理論を、完全には理解して描いていなかったのか、画面に独特な感覚をもたらすことになりました。

     さらに、この度は増上寺に納められる五百羅漢図のうちの2幅も、あわせてご覧いただけることとなりましたので、狩野一信という画家の妖しくも不可思議な魅力をぜひ堪能して下さい。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
五百羅漢図 狩野一信筆 江戸時代・19世紀 富美宮允子内親王・泰宮聡子内親王御下賜
五百羅漢図 第二十五幅 六道 鬼趣 狩野一信筆 江戸時代・19世紀 東京・増上寺蔵
五百羅漢図 第七十二幅 龍供 狩野一信筆 江戸時代・19世紀 東京・増上寺蔵