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版でつくる

  • 『「増上寺の雪」刷工程見本 昭和28年(1953)』の画像

    「増上寺の雪」刷工程見本 昭和28年(1953)

    本館 特別2室
    2007年11月27日(火) ~ 2007年12月24日(月・祝)

     日本美術の中で、版による表現といえば浮世絵を思い浮かべられる方が多いと思います。しかし、実は、もっと古くから多様な作品が版によって作られてきています。この展示は、そうした版で作られた作品の、多様な世界の一端に触れていただこうとする展示です。仏菩薩等の姿をスタンプにしてたくさん押し表した 印仏、大量の需要にこたえる為に作られた仏教版画、流麗な書を引きたたせる優雅な文様を摺り出した装飾料紙、また多色木版の制作過程を一覧できる順序摺りや、版木などを展示いたします。

      今回は親と子のギャラリーとして、作品を成り立たせている技法にも注目しています。古くは墨一色で摺られていたものが、時代を追って手で彩色を加えるようになり、江戸時代に入ると複数の色を版でつけるようになってきます。そして、錦絵とよばれる多色木版画が登場します。今回展示する「増上寺の雪」は昭和28年(1953)に伝統技術の記録のために制作したもので、42版もの工程から成っています。版を重ねるごとに色が深まる技術のすばらしさをご覧ください。

      併せて表慶館体験の間では、実際に版画を体験していただくことができます(会期中 11:00~16:00)。また、2007年12月1日(土)・2日(日)には、職人による摺りの実演(当日参加)と、ワークショップ(事前申込制)を行います。この機会にぜひ、版の世界の楽しさに触れてみてください。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
重要文化財 毘沙門天像印仏(毘沙門天立像像内納入品) 平安時代・応保2年 (1162) 川端龍子氏寄贈
小色紙 伝藤原公任筆 平安時代・12世紀 森田竹華氏寄贈
「増上寺の雪」版木 昭和28年 (1953)
「増上寺の雪」刷工程見本 昭和28年 (1953)
光悦謡本 江戸時代・17世紀 三上進氏寄贈
関連事業
ハンズオン体験コーナー「版で遊ぶ」
表慶館 体験の間 2007年11月27日(火)~2007年12月24日(月・休) 11:00~16:00 当日参加
浮世絵版画制作実演「北斎の冨士ができるまで」
表慶館 創作の間 2007年12月1日(土)、2日(日) 11:00~12:00 受付終了
ファミリーワークショップ「北斎の冨士ができるまで」
表慶館 創作の間 2007年12月1日(土)、2日(日) 13:00~17:00 受付終了
版のいろいろ
スタンプ
  重要文化財 毘沙門天像印仏(毘沙門天立像像内納入品)
平安時代・応保2年 (1162)  川端龍子氏寄贈

 仏像のスタンプがたくさん押されています。数が多いほどいいことがあるという考えから、一人で何枚も、または大勢で一度につくれるようにスタンプが使われました。
1色刷り、彩色
  両界曼荼羅図(胎蔵界)
南北朝時代・14世紀

 お寺でお祈りをするときに使う絵です。約束ごとの多い図柄を正確にたくさんつくるために、一色の輪郭線を版画ですり、あとからていねいに色をぬっています。
1色刷り、絵巻
  融通念仏縁起絵巻 上巻(部分)
江戸時代・享和元年(1801)

 仏教のえらいお坊さんの物語を伝えるためにつくられた絵巻物です。たくさんの人に見せるために版画ですったので、同じような絵巻が今も多く残っています。
多色刷り
  「増上寺の雪」刷工程見本
昭和28年(1953)

 42枚もの版を重ねて、複雑な色合いを表現しています。こうした版画は、版元というプロデューサーのもと、絵を描く人(絵師)、版木を彫る人(彫師)、紙にする人(摺師)が協力し合ってつくりあげられました。 会場では、完成に至る直前の9枚の摺り工程見本を展示しています。さらに、42枚の版を重ねて徐々に絵が完成されていく様子をパソコンのモニターで見ることができます。