本館 14室
2023年11月21日(火) ~ 2024年1月14日(日)
ここに展示した文化庁所蔵の能狂言面は、平成21(2009)年度に文化庁が購入した「鐘紡(かねぼう)コレクション」の一部です。能面123面、狂言面43面を数えるこのコレクションは、昭和20年代中頃に、三井家から鐘紡に移りました。
このコレクションの中の「能面 泣増(なきぞう)」に「前田子爵(ししゃく)家」と記した札が付属します。前田子爵とは、加賀藩の支藩である大聖寺藩(現在の石川県加賀市周辺)最後の藩主で、能をよくした前田利鬯(としか)のことです。三井家には大聖寺藩の能面、能装束を預かっていたと記す記録もあり、このコレクションはもともと大聖寺藩前田家のものだったと考えられます。室町時代の古面も含む一方、多くは江戸時代の面で、宝生(ほうしょう)家の面の写しが多いのが特徴です。これは、加賀藩前田家が、初代の利家以来能楽を深く愛好し、5代・綱紀が能のシテ方の流儀である宝生流を採用したのを、支藩である富山藩、大聖寺藩も倣ったからでしょう。
現在、加賀藩や富山藩の能狂言面は流出し、全体像を把握するのが困難ですが、大聖寺藩の面はまとめて残っていることが貴重です。能を愛好した大名家のコレクションをお楽しみください。