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ユネスコ「世界の記憶」国際登録決定を受けて
館長メッセージ

この度、ユネスコ「世界の記憶」において、東京国立博物館と園城寺(滋賀県)の所蔵作品で構成された「智証大師円珍関係文書典籍ちしょうだいしえんちんかんけいもんじょてんせき」が登録されたことを大変嬉しく思います。

国宝「円珍関係文書」(東京国立博物館所蔵)や国宝「智証大師関係文書典籍」(園城寺所蔵)など全56件で構成された本件は、智証大師・円珍(814~891年)という9世紀に中国(唐)へ留学した一人の日本の僧侶の求道の軌跡を示し、日本と中国の文化交流、そして日本における仏教の深化と信仰を、一次史料によって物語る史料群となります。円珍自身が収集して残した本史料群は、円珍が再興した園城寺に伝えられ、円珍を信仰する人々によって1100年以上にわたって守られてきたものです。

円珍が唐から日本に持ち帰った文書の中には唐政府が発行した文書の原本が含まれ、円珍という僧を通じて、日中の多様な文書典籍が、原本の状態でまとまって伝来したことは、宗教史上のみならず世界史的なアーカイブの観点からも稀有な例と言えることが、今回の登録にあたり国際的に高い評価を頂いたものと考えます。

当館では、8月1日(火)より、国宝「円珍戒牒えんちんかいちょう(円珍関係文書の内)」を、8月27日(日)まで、本館・国宝室にて、展示公開いたします。この機会に、国民の大切な財産である文化財をご観覧いただき、文化財を守り、未来へ継承するための取り組みに対して、ご理解とご支援をいただけますようお願いいたします。
 

令和5年5月24日
東京国立博物館長 藤原 誠