本館 14室
2023年1月2日(月・休) ~ 2023年2月26日(日)
「天下一」は、鋳物師、陶工などに与えられた称号で、能面の作者である面打にも与えられました。能が大成した室町時代には様ざまな能面が創作されました。武家が能を愛好し、嗜みとなっていく安土桃山時代、江戸時代には、次第に名物とされる古い面を写すことが盛んに行われる写しの時代となっていくのです。
文禄2年(1593)、豊臣秀吉が、面打としては初めて角坊に「天下一」号を授けました。その後、大野出目家の是閑吉満(~1616)、友閑満庸(~1652)、洞白満喬(1633~1715)、近江井関家の河内家重(~1657)、その弟子大和真盛(~1672)、児玉家を興した近江満昌(~1705)が「天下一」を称しました。しかし天和2年(1682)には「天下一」号の使用が禁じられます。つまり、「天下一」はたった90年ほどの間に活躍した、写しの名手である面打だけに与えられたものなのです。後世、天下一たちの作品もまた尊ばれ、写されました。 能面の写しは顔立ちだけでなく傷や面裏の彫り、作者のサインともいえる焼印までそっくりに写すことが多く興味深い点でもあります。そのなかにも垣間見える天下一たちの個性をご覧ください。