本館 2室
2023年1月2日(月・休) ~ 2023年1月29日(日)
東京国立博物館は、令和4年(2022)に創立150年を迎えました。この150年の歴史のなかで収集された文化財のなかには、国指定の国宝や重要文化財となっていなくとも素晴らしい作品が数多く収蔵されています。
「150年後、もしくはその先の未来、この国宝室にはどのような作品が展示されているのだろう」。
こういった問いかけから、今年度は「未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―」というテーマで展示を行なうことにしました。私たち研究員が選び抜いたイチ押しの作品を「未来の国宝」と銘打って、年間を通じてご紹介していくという試みです。
数万件に及ぶ絵画、書跡、歴史資料のなかから選び抜いた、東京国立博物館コレクションの「逸品」をどうぞご堪能下さい。
玄圃瑤華
伊藤若冲自画自刻
江戸時代・明和5年(1768)
伊藤若冲(1716~1800)は、江戸時代に京都で活躍した画家です。色鮮やかな花鳥画で知られていますが、本作のようなモノクロームの世界にも、そのセンスを遺憾なく発揮しました。
「玄圃瑤華」は全48図、種々の草花と野菜、昆虫などを組み合せた、若冲53歳の時の作品。賛は相国寺の梅荘顕常(大典)によるものです。正面彫りした版木の上に濡らした紙を貼り、紙の上から墨をほどこすと、彫って凹んだ部分が白く残る「拓版画」という特殊な技法で制作されています。若冲自身が版を彫り、版木を管理していたことでも貴重な作品です。漆黒の背景にモチーフが白く浮かび上がる劇的なコントラストにより、若冲特有の大胆な構図がより際立ち、各図ともに植物や虫の特徴を的確に捉えた生き生きとした画面に仕上がっています。「玄圃」は仙人の居どころ、「瑤華」は玉のように美しい花の意を持ちますが、本作はまさに、そうした美しさをそなえた作品といえるでしょう。
江戸時代後期に活躍した琳派の画家酒井抱一(1761~1828)の作品や、現在の当館のポスターにも取り入れられ、時代を越えて人々を魅了し続けている名品です