このページの本文へ移動

みどりのライオン体験コーナー 
国宝「紅白芙蓉図」ができるまで―東洋絵画の絵の具のひみつ―

  • 『国宝「紅白芙蓉図」の見本(部分)』の画像

    国宝「紅白芙蓉図」の見本(部分)

    本館 19室
    2019年9月18日(水) ~ 2020年2月21日(金)

    東洋絵画では、鉱物・植物・動物・昆虫など、自然界にあるさまざまなものを加工して、絵具として使用してきました。

    原材料が異なると、加工された絵具も色調や使い勝手が異なります。それぞれの絵具の特性を理解し、使い分け、組み合わせることにより、絵画の表現も多様に広がります。中国の南宋時代・慶元3年(1197)に宮廷画家の李迪によって描かれた国宝「紅白芙蓉図」も、絵の具の特色を巧みに活かした作品のひとつです。2幅の掛軸のうちピンク色の花を調査に基づき再現しました。材料の特徴を説明するために染料と顔料の2つの異なる材料で彩色を再現しています。材料別に描き分けられた作品を見比べることで、多彩な東洋絵画の絵具についてご紹介します。

    制作当時の素材や技法については未だよくわからないことも多いのですが、現在の状況を注意深く観察して忠実に再現した、工程見本や参考資料を通して、東洋絵画に親しんでいただければ幸いです。
     

    制作:平成23年度東京藝術大学学生ボランティア 石井恭子(敬称略)
    制作:石井恭子(敬称略、平成23年度東京藝術大学学生ボランティア) 
    国宝 紅白芙蓉図
    国宝 紅白芙蓉図 中国・南宋時代(慶元3年(1197)) 李迪筆 [2019年10月29日 ~ 2019年11月24日 東洋館8室にて展示予定]
     

工程1 準備~輪郭線を写す

工程1 準備~輪郭線を写す


まずは、原寸大の「紅白芙蓉図」の写真を下絵として、輪郭線を和紙の上に墨で描きます。 このように線だけを抜き出して描くことで、花弁のひだや葉の葉脈などが、繊細な線で描かれていることがわかります。

 

 

 

工程2 準備~絹に絵を描くために

工程2 準備~絹に絵を描くために(1)


「紅白芙蓉図」が描かれている絹は、現代の絵絹(絵を描くための絹)よりも糸の数が多く、密度が高いものであることがわかっています。当時の絵絹を再現し、それを木枠にピンと伸ばして張り、にじみ止めをします。 下に工程1を置き、透けて見える線描を墨で写します。

 

 

 

彩色例1 染料
動植物から作られる染料の絵具を用いた例です。 水に溶けるため、色を混ぜ合わせることができます。 葉の部分のように、藍(青色の植物性染料)と藤黄(黄色の植物性染料)を混ぜる事で、青味の緑から黄色味の緑まで自由に作ることができます。 また、花部分のように、絵具を水で薄めて描くことも容易です。 絵具が透明なので、乾燥すると絵と絵絹の後ろが透けて見えます。

彩色例1 染料 彩色例1 染料


彩色例2 顔料
鉱物から作られる、顔料の絵具を用いた例です。 細かく砕いた原料の粒子の乱反射の違いから、色調に濃淡があるように見えます。原料によって比重も異なるので、自由に混色できないものもあります。 葉部分の緑色の濃淡は、絵具の粒子の大きさを使い分けることで表現します。 鉛白(鉛を原料とする白色の絵具)や朱(水銀と硫黄を原料とする赤色の絵具)は混色が可能なので、花部分にピンク色の濃淡をつける事が出来ます。 絵具が不透明なので、乾燥すると絵が背景から浮き上がるように見えます。
 

彩色例2 顔料  彩色例2 顔料
 

 

工程3 彩色(顔料と染料)

科学調査の結果を基に、葉の部分には緑青(藍銅鉱を原料とする緑色の顔料)の上から染料の藍と藤黄を混ぜた絵具を塗りました。 花の部分には顔料の鉛白を塗り、ピンク色には臙脂(昆虫の分泌物を原料とする赤色の動物性染料)を塗りました。 このように、様々な原料の絵具を使い分ける事で、絵が透けることなく、幅広い色調を持った絵を描く事ができます。

工程3 彩色(顔料と染料)  工程3 彩色(顔料と染料)

工程3 彩色(顔料と染料)  工程3 彩色(顔料と染料)

 

チラシ

国宝「紅白芙蓉図」のできるまで 東洋絵画の絵の具のひみつ チラシ
国宝「紅白芙蓉図」のできるまで―東洋絵画の絵の具のひみつ―

会期中、本館19室みどりのライオン体験コーナーにて配布しています。
※なくなり次第、配布は終了します。

PDFPDF, 2.08MB)