本館 特別1室
2018年5月8日(火) ~ 2018年7月1日(日)
「高野切(こうやぎれ)」は、『古今和歌集(こきんわかしゅう)』を書写した現存最古の写本です。20巻の巻子本だったものが分割され、巻九の巻頭の断簡を豊臣秀吉(とよとみひでよし)が高野山に与えたため、「高野切」と呼ばれるようになりました。筆者は、紀貫之(きのつらゆき)と伝称されてきましたが、実際は、3人の筆者が分担して揮毫する寄合書(よりあいが)きの作品です。3人の筆者を、第一種、第二種、第三種と呼び分けて研究が進められてきました。そして、第二種筆者が源兼行(みなもとのかねゆき、1023~74)であることが解明され、「高野切」は平安時代・11世紀中ごろに制作されたことが現在は定説となっています。
「高野切」は、平安時代の仮名の逸品で、日本の書の歴史の基盤を支える名筆です。その仮名の美しさは最高峰に位置づけられ、各時代の人々が愛好してきました。また、現代の私たちが使うひらがなの形は、「高野切」がもとになっていると考えられます。
今回はまず、「高野切」の第一種、第二種、第三種、3人の仮名をじっくりご覧いただきます。次に、「高野切」の3人の筆者による別の作品と、「高野切」に類似する書風の作品、そして、「高野切」と同じ時期の平安時代・11世紀の仮名の名品をご紹介します。美しい形が完成した11世紀の仮名の数々を、ご堪能ください。