本館 14室
2016年12月20日(火) ~ 2017年2月19日(日)
掛袱紗(かけふくさ)は、祝い事で贈り物をする際に、お祝いの品の上に掛ける覆いのことです。年始の挨拶や節供、中元や歳暮、婚礼や長寿のお祝いなど、日本の伝統的な行事や祝い事に合わせてあつらえました。江戸時代前期から中期にかけて武家において、掛袱紗に美しい装飾がなされるようになりました。日本の刺繡(ししゅう)技術の進歩と共に、折々の祝儀にふさわしい吉祥模様を刺繡した袱紗が制作されました。江戸時代後半になると、掛袱紗の習慣が裕福な町人にも普及しました。武家方が用いる様式的な模様とは異なり、世情で人気のある説話を模様とした袱紗や、身近な風物を大胆に模様化した袱紗なども制作されるようになりました。刺繡だけではなく、友禅染(ゆうぜんぞめ)や綴織(つづれおり)など絵画的表現に適した技術も活かされるようになり、そうした染織模様には、江戸時代の人々の、吉事を祝う心が込められています。
お正月に合わせて、当館所蔵の江戸時代の袱紗を「物語・説話絵」「吉祥模様」「武家模様」「神仏と祭り」の4つのテーマに分けて紹介します。模様の意味を通して江戸時代における祝う心の表現をご覧ください。