東洋館 8室
2016年8月30日(火) ~ 2016年10月23日(日)
奈良時代から平安時代にかけて、日本には唐の優れた写本が舶載されました。それらの写本の中には、いつしか本来の価値が忘れ去られ、紙の裏が再利用されて貴重な文献が記録されたために、現在に伝えられた例があります。
平安時代から鎌倉時代にかけては、多くの禅宗僧侶が中国を訪れて修業を積みました。帰国に際して日本に将来した墨跡や、帰国後の往来によって贈られた作例の中には、本国ではすでに見ることのできない貴重な宋・元時代の名品が含まれています。
明治時代以降には、新たに中国本来の文人趣味を理想とする優れた収集家によって、中国伝世の精品が日本に伝えられました。日本に舶載された中国の書画は、日本人特有の美意識のもとに鑑賞され、日本ならではの独特な中国書画コレクションが形成されたのです。
この特集では館蔵品の中国書画コレクションの優品を公開するとともに、上海博物館の所蔵品から絵画的な染織の作例を展示いたします。中国では古くから、書画を染織で表現した壁掛を楽しむ習慣がありました。緙絲仙人図壁掛(こくしせんにんずかべかけ)は乾隆帝(けんりゅうてい)のコレクション、緙絲花鳥図壁掛(こくしかちょうずかべかけ)は清時代の中期に活躍した画家・李鱓(りぜん)にゆかりのあるものです。書画表現の奥深い世界をお楽しみください。