本館 14室
2016年4月12日(火) ~ 2016年6月5日(日)
七宝(しっぽう)は一般に金属製の器物の表面に、多彩なガラス質の釉薬を置き、窯で焼いて色を定着させる技法です。西アジア、中国、ヨーロッパでも古くからあり、日本では奈良県明日香村の牽牛子塚古墳(けんごしづかこふん)から出土した装飾金具(飛鳥時代・7世紀)や正倉院宝物中の作例(奈良時代8世紀)が早い例として知られています。仏典には仏の極楽浄土が金銀や瑠璃(るり)、珊瑚(さんご)など7種の宝で飾られていると説かれ、多彩な式面装飾を7つの宝の輝きになぞらえたのでしょう。その後中国やヨーロッパでは継続し、中世期にはそれらが舶載されることもありましたが、日本では長いこと途絶えてしまいます。工芸の素材・主題・技術全般が大きく発展した近世期、七宝の技法も復活し、引手(ひきて)や釘隠(くぎかくし)などの建具、刀装具、文房具などの小物に、日本的な情緒あふれる意匠を凝らした作品が登場します。のち再び途絶しますが、近代国家の仲間入りをした日本が、江戸時代いらいの命脈をつぐ工芸技術の高さを世界に知らしめんと、博覧会出品や海外輸出を旺盛に志向する中で、梶常吉(かじつねきち/1803~83)と尾張七宝に代表されるように、七宝も技術・表現ともに高度な発達をとげ、並河靖之(なみかわやすゆき/1845~1927)などの名工を輩出するとともに、作品は世界の舞台で驚嘆と賛美をもって迎えられました。
この特集では、正倉院宝物の模造や江戸の多彩な引手・釘隠、明治期の七宝作品を展示し、日本の七宝の魅力をご紹介します。
※ 東洋館第5室「清時代の工芸」では、7月3日(日)まで、中国清時代・19世紀の七宝作品を展示しています。あわせてご覧ください。