1089ブログ「3.11大津波と文化財の再生」 展覧会の見どころなどを紹介しています。
東京国立博物館 資料館 特別展「3.11大津波と文化財の再生」関連図書コーナー設置
展覧会のみどころ
主な展示資料
石川啄木歌碑拓本(いしかわたくぼくかひたくほん)
金田一京助筆
昭和時代・20世紀
岩手・陸前高田市立博物館蔵
(右)NPO法人文化財保存支援機構とともに奥州市埋蔵文化財センターで行った拓本の安定化処理作業の様子
岩手県出身の歌人、石川啄木の歌碑の拓本です。石碑は、大津波により流失してしまったため、拓本は碑文を伝える貴重な資料です。表具も含めた全体が塩と汚泥にまみれ、糊浮きが進んでいました。本紙を安定化処理の後、現在は全ての拓本の本格修理が進められています。
絹地染小紋型長着(高田歌舞伎)(きぬじそめこもんがたながぎ(たかたかぶき))
昭和時代・20世紀
岩手・陸前高田市立博物館蔵
(右)修理途中の中綿
衣装のほか、かんざしやかつらなど、地芝居「高田歌舞伎」関連資料を展示します。衣装は海水損によって全体に染料が滲み、中綿には内部で偏りが生じ、元の形が分らないほどに皺だらけになっていました。表裂、裏地、中綿には大量の塩分と汚泥が残留しているため、全体を解体した後、色落ちしないように水洗を繰り返しながら安定化処理を行いました。それから破れやほつれた箇所を一つひとつ丁寧に繕い、中綿を再生して、元の形状に戻しました。

修理前の毛抜形蕨手刀

修理後の毛抜形蕨手刀
毛抜形蕨手刀(けぬきがたわらびてとう)
平安時代・9世紀
陸前高田市小友町岩井沢出土
岩手・陸前高田市立博物館蔵
もともと、被災前に保存処理が施されていたため、展示室で津波の直撃を受けながらも、柄の一部が欠損したことを除き、顕著な劣化を免れました。救出後に安定化処理が施され、欠失部は過去に作成されていた実測図をもとに復元が行われました。
リードオルガン
三省堂機械標本部製造
明治時代末期~大正時代初期・20世紀
岩手・陸前高田市立博物館蔵
三省堂機械標本部が明治末年からの限られた期間、海保オルガン社に委託して製造・販売していた吸気式オルガンです。陸前高田市における幼児教育の先駆者である村上斐(むらかみあや)氏が購入し、使用していたものです。本館大階段踊り場に展示します。
実習船かもめ
昭和時代・20世紀
岩手・陸前高田市立博物館蔵
画像提供:東海新報社
大津波で流され、アメリカの西海岸に漂着した岩手県立高田高校の実習船「かもめ」が、現地の高校生の呼びかけにより、2013年に返還されました。また、陸前高田市を視察したケネディ駐日大使により、実習船に付着していたエボシガイとムラサキイガイの標本が、友好のしるしに贈呈されました。本展覧会では、実習船を本館前に、贈呈された標本を本館特別4室に展示します。
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パネル展示(本館特別4室)

陸前高田市立博物館での文化財レスキューの様子
(2011年4月21日)
文化財レスキュー
2011年4月に「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援委員会(レスキュー委員会)」が発足し、全国の博物館などが参加して、被災地で文化財の救出活動を行いました。レスキューは資料を被災現場から安全な場所へ移動する一次、安全な場所で必要最小限の処置を資料に施す二次の2段階からなります。福島県では今も一次レスキューが続いています。この活動について、パネルで紹介します。
木製民具の安定化処理
安定化処理
海水に浸かった文化財は、海底のヘドロ、様々な雑菌類、海水に含まれる塩類などにまみれているため、急激な劣化の恐れがあります。そこで、救出された文化財には、まずクリーニングをして劣化を止める「安定化処理」を行い、そのうえで本格的な修理が施されます。陸前高田市では56万点の資料のうち46万点が救出され、現在までに16万点に安定化処理を行いました。安定化処理の方法についてパネルで紹介します。
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