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館蔵能面名品選 金春座伝来の面を中心に

  • 『重要文化財 能面 大天神 奈良・金春座伝来 室町時代・15世紀』の画像

    重要文化財 能面 大天神 奈良・金春座伝来 室町時代・15世紀

    本館 14室
    2012年9月19日(水) ~ 2012年10月28日(日)

    能楽は古くは猿楽(さるがく)と言って、社寺の祭礼にともなって行われるものでした。そのため古い社寺に能面が伝わっている例がしばしばみられます。南北朝時代、春日社と興福寺の猿楽を勤めた結崎座(ゆうさきざ)(観世(かんぜ)座)・外山座(とびざ)(宝生(ほうしょう)座)・坂戸座(さかどざ)(金剛(こんごう)座)・円満井座(えんまんいざ)(金春(こんぱる)座)を大和猿楽四座(よざ)といいます。このうち結崎座に観阿弥(かんあみ)、世阿弥(ぜあみ)親子が出て足利義満の寵愛を受け、世阿弥が能楽を芸能として大成しました。この後の将軍も能楽を愛好、やがて武家の式楽(しきがく)として各地の大名も能を催し、数多くの面を所蔵するようになりました。

    大和猿楽四座のうち坂戸座から喜多が分かれ、現在の能楽シテ方宗家が揃いました。この宗家には能楽の演目と演出にあわせて工夫された面が備えられました。南北朝時代から室町時代にはあらたな曲がつぎつぎ作られ、面の種類も増えてゆきました。いわば創造の時代と言うことができます。この時期に作られた面は造形的な魅力に富み、本面といってきわめて尊重されます。安土桃山時代以降は型を伝える模倣の時代で、能面も本面を模作するようになります。模作は形や彫りだけでなく傷や彩色の剥がれた様子も写します。これと比較すべき宗家の本面は容易に鑑賞や調査を許されないので、能面の時代判定には困難がともないます。

    東京国立博物館は200面を超える能面を収蔵しています。昭和25年に金春座に伝来した能面47面と能装束を購入しました。その中に造形的に優れた、創造の時代の所産とみられる面が少なからず含まれており、今回はそうした名品を中心に展示を構成しました。能面の造形の美しさをお楽しみください。
     

    担当研究員の一言

    日本彫刻史の中で室町時代は衰退期とされがちですが、能面を見るとそんなことはありません。室町彫刻は能面によって書き換えるべきでしょう。/浅見龍介

 主な出品作品
*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
重要文化財 能面 大天神 奈良・金春座伝来 室町時代・15世紀
重要文化財 能面 若曲見 「平泉寺/財蓮/熊大夫作」陰刻 奈良・金春座伝来 室町時代・15世紀
能面 翁 室町時代・15~16世紀 松永安左エ門氏寄贈
重要文化財 能面 猩々 奈良・金春座伝来 室町時代・15~16世紀
重要文化財 能面 大飛出 奈良・金春座伝来 室町時代・15~16世紀