本館 16室
2012年1月2日(月・休) ~ 2012年2月12日(日)
現代の日本人は一年を通じて様々な行事に囲まれながら生活をしています。弥生と端午の節句に雛人形や武者人形を飾り、七夕で短冊に願いを込め、お月見でお団子や冬至で南瓜を食べるなど、今でも残る風習は、古くは平安時代にまで遡るものもあります。
貴族による支配が確立した平安時代の政治の特徴は、いわば繰り返し行われるこうした儀式にありました。日本人の生活は農耕が中心であり、儀礼は農作業に関わるものが多く、比較的四季の変化が明確な風土での時系列である“暦”と重なったイメージが形成されました。そして季節を区切る年中行事として宮中儀礼が作られました。後には武士に取り入れられ、さらには庶民へと波及し、その暮らしに吸収されていきます。
現代にまで続く日本人の年中行事の原型が形成されたのは江戸時代です。それまでの担い手であった貴族や武家に代わり、民衆が社会の原動力として勢いを増していったこの時代に、年中行事の普遍化、地域化が進んで行きました。
本展示では、本来の年中行事である宮中儀礼を示すものから、今に残る行事を伝える資料までを陳列して時代毎の変遷を追い、また「東都歳時記」や浮世絵・錦絵で代表される江戸の風物詩を紹介することで、これらの年中行事が庶民の生活に溶け込んでいった様子をご覧いただきたいと思います。そして、次第に失われつつあるわれわれ日本人が伝えてきた、”四季を感じる心”に思いを馳せていただければと考えています。