国宝 円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書(部分)
小野道風筆 平安時代・延長5年(927)
本館 2室
2024年5月14日(火) ~ 2024年6月9日(日)
天台宗(てんだいしゅう)の僧侶円珍(えんちん、814~891)は、中国・唐への留学を経て、のちに延暦寺の第5世座主(ざす)となり、園城寺(おんじょうじ)の再興に寄与しました。没後36年の延長5年(927)、醍醐天皇(だいごてんのう)は偉大な功績を残した円珍に対して、「法印大和尚(ほういんだいかしょう)」という僧侶にとって最高の位と、「智証大師(ちしょうだいし)」という名誉ある号を贈りました。これは、そのときの天皇の命令(勅)を伝える文書です。
歴代天皇の治世を記した『帝王編年記(ていおうへんねんき)』巻15の延長5年11月27日条には、「11月11日に亡くなった延暦寺第10世座主の増命(ぞうみょう、843~927)に『静観(僧正)』の号を、増命の師である円珍には『智証大師』の号を贈り、小野道風(おののとうふう、894~966)が宣命(せんみょう、天皇の命令を伝える文書)を書いた」という内容が記載されています。この勅書には署名はありませんが、書風の特徴からも、当時34歳にして、勅書などの起草にあたる少内記(しょうないき)の任にあった、小野道風の筆跡であると考えられています。
罫線を施した縹(はなだ)色の紙には、筆にたっぷりと墨を含ませ、しなやかな筆致で書かれた様子が見てとれます。道風の書は、書聖(しょせい)と称えられる東晋(とうしん)時代の能書(のうしょ)、王羲之(おうぎし、303~361)の書法を基調としながらも、より太く厚みのある点画を、柔和な筆使いで書き上げ、ふくよかで均整のとれた造形をしています。「王羲之の再生」(『天徳(てんとく)三年八月十六日闘詩行事略記』)と評され、和様(わよう)の祖、つまり日本風の書の創始者と称えられる、小野道風の優美な書風を伝えています。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
おすすめ | 国宝 | 円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書 | 1巻 | 小野道風筆 | 平安時代・延長5年(927) | B-2405-1 |