国宝 千手観音像(部分)
平安時代・12世紀
本館 2室
2021年1月19日(火) ~ 2021年2月14日(日)
観音菩薩の人々を自在に救う力を、たくさんの手と掌(てのひら)にある眼で更に強調したのが千手観音です。この作品でも、観音の利益を象徴する様々な持物を手にした腕の間に、無数の小さな腕が見え隠れし、それらの掌には全て眼が描かれています。腕の表現は千手観音像のひとつの見どころといえるでしょう。この作品では、観音のからだ全体を覆う光背と一体化するように、きれいな円形にまとめられています。
観音の衣の文様には、金箔を髪の毛ほどの細さに裁断して貼り付ける截金(きりかね)という技法が用いられています。また、台座の蓮華の花びらの筋は、銀箔と金箔を重ねた箔を用いています。輝きの中にも色調の変化と奥行きを持たせた繊細な感覚をみせる截金と、柔らかな中間色の彩色が相まって観音像を荘厳しています。
品のあるふっくらとした姿や円形にまとめられた手、中間色の使用、細部の繊細な造形感覚には平安仏画の特徴が遺憾なく発揮されています。その一方で、観音像左側の婆藪仙人(ばすうせんにん)を描く太細のある描線、右側の功徳天(くどくてん)が着ける先のとがった肩当などの衣の形、はっきりとした色づかいには、鎌倉時代に好まれるようになる宋代仏画の特徴を取り入れた表現も見られます。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
おすすめ | 国宝 | 千手観音像 | 1幅 | 平安時代・12世紀 | A-10506 |