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140周年ありがとうブログ

たくさんの本にありがとう

出版企画室に勤務する立道惠子と申します。
東京国立博物館が編集、発行する出版物関係の仕事をしています。

出版は博物館の草創期から大切にされてきた事業の一つで、創立の年には早くも17件の刊行物が計画されています。
140年の伝統を受け継ぐこの仕事に携わることをとても嬉しく、とてもありがたく思っています。

私が初めて出会った東京国立博物館の出版物は、1977年春「日本の山水画展」の展覧会図録。東京国立博物館初体験でもあります。
次は1978年初夏「日本の考古学―表慶館改装記念―」。あの有名な志賀島の「金印」(福岡市博物館蔵)の実物にお目にかかりました。
そして同年夏、レンブラントの「ダナエ」に会いたくて「エルミタージュ美術館秘宝展」へ。
初めて眼にする17世紀オランダの巨大な絵画(185×203センチ)に圧倒されました。展示室にはほとんど人だかりがなく、不思議に思ったことも記憶に残っています。
これら三つの展覧会図録から今日にいたるまで、東京国立博物館のさまざまな出版物と出会い、それぞれに思い出があります。
その中から一冊をご紹介いたしましょう。


東京国立博物館パキスタン発掘調査隊編 『ザールデリー―パキスタン古代仏教遺跡の発掘調査―
453ページ、他に実測図74図、写真図版401図、付属図2枚、
A4サイズ(297×210ミリ)、厚さ約6センチ! 2011年3月発行。


1992年に東京国立博物館とパキスタン考古局共同による分布調査が始まり、1995年からはザールデリー遺跡の発掘調査を実施、1999年に大量の石造彫刻が出土して話題になりました。
2002年、日本・パキスタン国交樹立50周年を記念する「パキスタン・ガンダーラ彫刻展」に特別出品された彫刻群を、記憶されている方も多いでしょう。
そして調査開始より20年近くを経た2011年、たくさんの方のたいへんなご尽力により、ついにこの貴重な大著が刊行されたのでした。ありがとうございます。
当館のミュージアムショップで販売中です。ご来館の折にご覧いただければ幸いです。

カテゴリ:2013年1月

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posted by 立道惠子(出版企画室) at 2013年01月11日 (金)

 

金原亭馬生さんにありがとう

総務課で主に寄席やコンサートなどのイベントを担当しております河島です。
大学の事務から異動してきましたトーハク職員3年生です。

みなさんは寄席を聞きに行かれたことはありますか?
身振りと語りのみで物語を進めてゆく独特の演芸であり、高度な技芸を要する伝統芸能でもあります。
トーハクでは「東博寄席」と題し、年に2回「新春・納涼・春爛漫」などのタイトルをつけて季節に応じた寄席を開催しております。

正統派落語家として人気の高い十一代目金原亭馬生師匠とその一門のみなさんに加えて、毎回違ったゲストをお迎えして丁寧な運びで客席を古典落語の世界へいざないます。


金原亭馬生師匠です。

馬生師匠は普段はもの静かで口調がとても優しいのですが、高座にあがるとより粋で、上品な語り口としぐさの馬生ワールドに客席も自然とひきこまれます。
にじみでる男の色気満載です!女性ならず男性ファンが多いのもうなずけます。
会場内はちびっこから大人の方まで幅広いファンの方で埋めつくされ、馬生師匠の追っかけと称する数多くの常連さんがいらしてくださいます。

そんなダンディーで魅力的な馬生師匠が平成16年から毎年欠かさず出演を心よく引き受けてくださっています。
出会えたことにありがとうの気持ちでいっぱいです。
お客様とトーハクをつないでくれている馬生師匠に心から感謝しています。

さて、来る1月13日(日)の「新春東博寄席2013」は、馬生師匠・古今亭菊春師匠による新春にふさわしい「寿獅子舞」や「操三番(あやつりさんば)」をはじめ「大喜利」など盛りだくさんの内容をお届けします。
ご家族揃って“博物館で初笑い”はいかがでしょうか?


一門のみなさんも会場を盛り上げます。

カテゴリ:2013年1月

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posted by 河島淑美(総務課) at 2013年01月08日 (火)

 

寄贈者の方にありがとう

新年明けましておめでとうございます。
東洋工芸、おもに陶磁器を担当している今井と申します。
トーハクに着任してからまもなく26年になります。

収蔵庫の中には、展示場に出ている数の何十倍もの作品が保管されています。
もちろん保存上の観点から作品を休ませる必要もあるのですが、展示場にある作品はいわば「氷山の一角」に過ぎません。
収蔵庫では、数多くの作品が、制作時期や作者、適切な評価など、正しい位置づけを待っているのです。

学問の世界は日進月歩です。
写真1は、12月3日の三笠景子さんのブログにも触れられている横河民輔博士の寄贈品。
耀州窯は宋時代の代表的な青磁窯であり、オリーブグリーンの釉色ときびきびとした彫り文様で知られますが、典型的な作風が確立する前の10世紀には、このような淡い緑色で文様のない青磁が焼かれていたことが明らかになりました。


(写真1) 青磁碗 耀州窯 中国 五代時代・10世紀 横河民輔氏寄贈
(展示の予定はありません)


写真2は、薬学および陶磁器の研究家である内藤堯宝氏(1883~1970)の寄贈品です。
寄贈者自身のメモには「高麗末期乃至李朝初期作にて井戸の原始的作風をなすものか」とありますが、実は高麗青磁最初期の作であることが明らかになりました。


写真2) 青磁輪花鉢 朝鮮 高麗時代・10世紀 内藤堯宝氏寄贈
(2013年1月2日(水)~3月31日(日)東洋館 第10室 朝鮮の陶磁にて展示)


作品を購入する際には当然のことながら歴史上の位置づけの明らかなものが選ばれますので、このような研究の発展に資する作品は篤志家の寄贈品によるところが大きいのです。
確かな眼と高い志、そして学問に対する深い理解をもっていた寄贈者の方々に感謝です。


リニューアルオープンした東洋館で展示されている陶磁器といっしょに。

カテゴリ:2013年1月

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posted by 今井敦(博物館教育課長) at 2013年01月05日 (土)

 

たくさんのことにありがとう

振り返れば、博物館で仕事をさせて頂いてずいぶん月日が経ちましたが、(月並みですが・・・)アッという間であったという気も致します。

まず想い起こされることは、何よりも仕事として(生活はもちろん・・・)あらゆる活動の基盤が与えられたことへの感謝です。
また、多様で魅力的な収蔵品(コレクション)に触れる環境に恵まれたことへの感謝です。
着任時に、後輩から「宝の山に・・・」との少々“手荒な”祝福が寄せられたことを想い出します。

二つ目は、収蔵品が体系的に維持・管理されていることへの感謝です。
当館の収集活動は明治4年(1871)に溯りますが、100年以上前の収蔵品が現在も展示や調査等に活用されているところが重要です。まさに、不断の整理・登録と維持・管理の賜物です。
収蔵棚や収蔵箱、付属の札やラベルなど、さまざまな“痕跡”に看て取ることができ、警備・事務はもちろん、黙々と携わってこられた先輩職員の皆様のご苦労を実感しています。
先の戦争の空襲を避けるための疎開を含め、収蔵品の構成・データが実に多くの方々の努力で守られてきたことに感謝です。


1994年、平成館発掘現場で(背景の住宅は旧文化庁官舎)。

三つ目は、修理や公開の仕事で、ご支援頂いた多くの方々への感謝です。
収蔵品を公開するまでには、さまざまな調査・研究が必要です。よく知られた展示品(いわば“レギュラー選手”)の陰に隠れがちですが、“控え選手”の健康状態を整えることも博物館の大切な仕事です。
調査・修理とその過程の記録・展示・出版など、いずれも館内外の技術担当者(技術者)の方々の奮闘と努力を得て、はじめて実現できたものです。
専門外の撮影・計測・修理技術に関してもさまざま教えて頂き、また無理な注文(難題?)にその都度、予想もしなかった手法で新たな地平を見せて頂いたことは云うまでもありません。
本当にありがとうございました。

最後は、収蔵品をめぐる出会いへの感謝です。
展示・出版等への批評はもちろんですが、とくに列品解説などで熱心に耳を傾け、質問して頂いた皆様は大きな刺激となり(新人の頃には実は肝を冷やしたことも・・・)、励まされ支えられました。
また、魅力ある存在には人が集まります。
機関の研究者や出版・報道関係者との貸出・調査・撮影などを通じた交流では、十分な準備の上、熱意をもって真摯に接するその姿から、実に多くを学ぶことができました。
博物館の職員としてなすべきことや研究・社会的ニーズの水準を教えられ、また人間的な魅力も目の当たりに出来たことは幸いでした。


2010年特集陳列での列品解説の様子。
列品解説を通して、私がほうが学ぶこともたくさんありました。


このような仕事を通じた実に多くの方々から戴いた贈り物に、心から感謝しています。

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posted by 古谷毅(主任研究員) at 2012年12月27日 (木)

 

過去の、未来の、名もなき「守り手」たちに、ありがとう

絵画・彫刻室で日本絵画の担当をしております金井と申します。
いわゆる学芸員(当館では研究員と呼びます)として、
東京国立博物館が収蔵している日本絵画作品全般の
展示や保存、研究、普及活動などの業務に携わっています。


毎年秋に展示する国宝「観楓図」の前で。
国宝 観楓図屏風 狩野秀頼筆 室町~安土桃山時代・16世紀
(2013年11月12日(火)~12月8日(日)本館2室 国宝室にて展示予定)

作品たちと向かいあっていると、ふと、
歴代の「名もなき守り手」たちの存在を感じることがあります。

私たちが普段扱っている日本絵画の作品たちはとても繊細です。
例えるなら、ちょっとしたことで風邪をひき、
事故に遭ってしまう幼い子どものようです。
けれど、多くの人の心を惹きつけ、魅了するという、
素晴らしい魅力とたくさんの可能性を秘めています。
そしてきちんと見守っていれば、
私たち人間よりもずっと長生きをしてくれるのです。

江戸時代以前に制作された作品のほとんどは、
その伝来が正確には明らかになっていません。
つまり記録にない「名もなき守り手」たちによって
愛され、慈しまれ、守られてきた結果、
何十年、何百年という時間を旅して今目の前にあるのです。

守り手とは、なにも持ち主や学芸員だけを指す言葉ではありません。
作品を愛するすべての人たちが、何らかの形で「守り手」になり得るのです。

作品からみれば、私たちが関われる時間はほんの少しのことでしょう。
でもいつか、この世から自分がいなくなり、忘れ去られたとしても、
自分がかかわり愛した作品たちが次の守り手たちによって永らえ、
100年後、1000年後の人々に感動を与えてくれるのならば、
こんなに嬉しく幸せなことはありません。

これまで作品を伝えてくれたたくさんの守り手たち、
そしてこれから先、
守り手になってくださるであろうすべての方々に、
心からの「ありがとう」の気持ちをお伝えしたいです。

カテゴリ:2012年12月

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posted by 金井裕子(絵画・彫刻室) at 2012年12月24日 (月)