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特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」10万人達成!

特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」(2013年1月12日(土)~4月7日(日)本館特別5室)は、
2013年3月5日(火)午前、10万人目のお客様をお迎えしました。
多くのお客様にご来場いただき、心より御礼申し上げます。

10万人目のお客様は、東京都板橋区よりお越しの瀧澤 麗さんです。
記念品として、東京国立博物館長 銭谷眞美より、本展図録と展覧会オリジナルグッズの賓頭盧尊者坐像を贈呈いたしました。


円空展10万人セレモニー
左から、銭谷眞美館長、
瀧澤 麗さん
3月5日(火) 東京国立博物館本館にて


瀧澤さんは、トーハクには特別展を見に時々ご来館いただいているとのこと。
「これほどたくさんの円空仏が一同に会する機会はなかなかないと聞きました。特に千光寺の「秘仏 歓喜天立像」を見るのが楽しみです」とお話いただきました。

特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」は、会期終了まで残すところあと約1ヶ月です。
円空屈指の名作「両面宿儺坐像(りょうめんすくなざぞう)」をはじめ、初出展の「金剛力士(仁王)立像 吽形(こんごうりきし(におう)りゅうぞう うんぎょう)」などどれも必見です。
ご来館を心よりお待ちしております。

カテゴリ:news2013年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2013年03月05日 (火)

 

円空展 人気ショップグッズの紹介

特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」(2013年1月12日(土)~4月7日(日)本館特別5室)は、
会期の半分を過ぎました。

展示室は連日多くのお客様にお越しいただいていますが、
展示室をでたところにある円空展のミュージアムショップもお客様でにぎわっています。

今回はミュージアムショップの人気商品をご紹介します。

全商品の中で今一番売れているものがこちら!

  
A4ダブルクリアファイル 特別展 飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-オリジナルグッズ
650円(税込)

表・裏面はたくさんの円空仏、中面は森をイメージしたデザインとなっています。

シングルクリアファイル(400円(税込))もあります。

つづきまして人気商品はこちら!

  
円空仏スタンプ 特別展 飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-オリジナルグッズ
各630円(税込)

左から狛犬、両面宿儺、如意輪観音、宇賀神と全4種類あります。
どれがいいか迷いますね。

また、こちらは4分の1のスケール(約10cm)の賓頭盧尊者坐像(びんずるそんじゃざぞう)。

  
賓頭盧尊者坐像 特別展 飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-オリジナルグッズ
3950円(税込)

茶筒のような箱に入っており、強化プラスティック樹脂製で全て職人の手作業による仕上げで彩色は一体一体手塗りです。
限定数1000個ですが残すところあとわずかのようです。

やはり素材は「木」の方ががよいという方はこちらをどうぞ。

   

さまざまな種類があり、3780円からご用意しています。
手作りのため、ただいま製作中のものもあるようです。

もちろん、図録もおすすめです!


図録 1800円(税込)

表紙は木目調で温かみがあります。
また、展示ではご覧いただけない背面や底面の写真も掲載しており貴重です!
展覧会担当者が心をこめて作った1冊、ぜひ手にお取りください。

このほかにも、様々なグッズを販売していますので展覧会の記念、思い出にいかがでしょうか。

*ショップのグッズは売り切れる可能性もあります。ご了承ください。

カテゴリ:2013年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2013年03月03日 (日)

 

円空と木の関係

円空仏は素材である木が造形に大きく関わっています。木の形や質感を最大限生かして造った像は円空と自然の合作と言ってもいいでしょう。
たとえば三十三観音の顔に注目してください。木目が等間隔に通っている柾目(まさめ)の顔と隙間が多い板目(いため)の顔では印象が違いますね。
板目(左から2つめと4つめ)の方がのんびりしていて、柾目の方はまじめそうです。
 
三十三観音立像 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵
三十三観音立像(部分) 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵


木目の間隔によっても印象は異なります。宇賀神と弁財天を比べてみましょう。
 
(左)弁財天坐像および二童子立像のうち弁財天坐像 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵 (右)宇賀神像 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵
(左)弁財天坐像および二童子立像のうち弁財天坐像(部分) 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵
(右)宇賀神像
(部分) 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵

左の弁財天の方が目が詰んでいて木目が目立ちません。宇賀神の木目も同様だったらその魅力は少し減るのではないでしょうか。


円空が彫り進めている時に節が現われたため、姿を変えたと思われる例がこちら。

僧形立像 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・熊野神社蔵
僧形立像 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・熊野神社蔵

胸の前の宝珠が中央から少しずれているのは右胸に節があるからでしょう。からだを左にひねった分、顔は右を向いています。動きが出て面白い像になりました。


木を断ち割った時の断面がとても効果的に見えるものもあります。
 
龍頭観音菩薩立像 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・清峰寺蔵
龍頭観音菩薩立像(部分) 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・清峰寺蔵

木の繊維のつくる曲線が龍の頭に動きを加えています。ここには一切鑿は入れていません。

今回出品作中最大の金剛力士(仁王)立像は横から見ると肩甲骨が出っ張って、腰に向かってすぼまっていく背中のラインがみごとに表現されているように見えます。
しかしこれはもともとの木の形です。円空はこれを見越して仁王像を造ることにしたのでしょう。

金剛力士(仁王)立像 吽形  円空作 江戸時代・17世紀  岐阜・千光寺蔵
金剛力士(仁王)立像 吽形  円空作 江戸時代・17世紀  岐阜・千光寺蔵


円空は木にカミや仏がこもっていると考えていました。だから木の質感、あるいは個々の木が持っている姿にあまり手を加えずに完成としたのです。 

東京国立博物館140周年 特別展「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」(~4月7日(日)、本館特別5室)

 

カテゴリ:仏像2013年度の特別展

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posted by 浅見龍介(東洋室長) at 2013年03月01日 (金)

 

二人の王氏

王羲之の没後、多くの人々が王羲之の書を理想とし、摸本や拓本を通してその書を学びました。ここでは、明末清初に活躍した王鐸(おうたく)(1592~1652)と、乾隆の三筆の一人に挙げられる王文治(おうぶんじ)(1730~1802)をご紹介しましょう。

王鐸は、明王朝が瓦解し、清王朝が天下を支配した激動の時代に生まれました。明の官僚であった王鐸は、清朝に投降し、明と清の両朝に仕えたので、後世から不節操な人物を意味する「弐臣(じしん)」のレッテルを貼られ、歴史の上ではとても低い評価を与えられています。そのため、王鐸の書は長い間、等閑に付されてきました。

王鐸の書をご覧ください(図1)。典雅な美しさをたたえた王羲之の書とは異なり、いかにも書きなぐった、無粋な書に見えませんか?しかし、じっくりと王鐸の書を眺めていると、王鐸の図抜けた素晴らしさが見えてきます。実は王鐸、同姓の王羲之を殊のほか敬愛し、執拗なまでに王羲之の書を学んでいるのです。

行書五言律詩軸(部分) 王鐸筆 明~清時代・17世紀 東京国立博物館蔵
図1: 行書五言律詩軸(部分) 王鐸筆 明~清時代・17世紀 東京国立博物館蔵

図2は、王鐸が自らどのような書を学んできたかに言及した文章です。世の人々は、私は宋時代の米芾(べいふつ)を学んだとか、さらに遡って唐時代の虞世南(ぐせいなん)を学んだとか言っているけれど、彼らの書も王羲之・王献之(おうけんし)に源を発していることに気付いていない。私は50年このかた、王羲之・王献之の書を学んできた…。

臨淳化閣帖 書画合璧巻(部分) 王鐸筆 清時代・順治6年(1649) 大阪市立美術館蔵
図2: 臨淳化閣帖 書画合璧巻(部分) 王鐸筆 清時代・順治6年(1649) 大阪市立美術館蔵

王鐸の書の魅力は一言で語り尽くせません。当時の知識人たちは、書を学ぶには学問を修めるべきであると考えていました。枝葉末節の技法の習得にうつつを抜かすのではなく、物事の本質をつかもうとしたのです。臨機応変に文字の姿を変えながら、グイグイと書き進め、紙面全体からは見事なオーラが立ち昇っています。


一方、乾隆25年(1760)に第3位の成績で進士に及第したエリート官僚の王文治も、王羲之の書をこよなく愛しました。王文治は、まず王羲之の拓本をとことん鑑賞することが大切であると言っています。

図3は、元時代の呉炳が収蔵していたことから、呉炳本として知られる定武蘭亭序です。その拓本の後ろには、王文治が幸運にもこの名品を鑑賞しえた際の感懐を書き記しています(図4)。

定武蘭亭序-呉炳本- 王羲之筆 原跡=東晋時代・永和9年(353)  東京国立博物館蔵
図3: 定武蘭亭序-呉炳本- 王羲之筆 原跡=東晋時代・永和9年(353)  東京国立博物館蔵

定武蘭亭序-呉炳本-に書き記した王文治の識語
図4: 定武蘭亭序-呉炳本-に書き記した王文治の識語

王文治は、友人が所有する定武蘭亭序が、あまりに素晴らしいので借用し、三日にわたってずっと鑑賞しました。王文治は、拓本の来歴などをあれこれ考証するのではなく、あくまでも自らの直感を大切にするタイプでした。そして三日後、王文治は王羲之の書の素晴らしさを感得します。ためつすがめつ、じっくりと定武蘭亭序を鑑賞することで、王文治の感覚が王羲之の書と共鳴し、形を越えた奥深さを理解したのでした。

王鐸と王文治、ともに王羲之の書を何十年にもわたって学び続けることで、自分の理想とする書を見つけ出しました。王羲之の書のどこが素晴らしいのか。そもそも、どのような書が理想であるのか。自問自答を繰り返すことで、あなたにしかたどり着けない桃源郷を見つけてください。

日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「書聖 王羲之」(~3月3日(日)、平成館)

 

 

カテゴリ:2012年度の特別展

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posted by 富田淳(列品管理課長) at 2013年02月28日 (木)

 

書を楽しむ 第32回「短冊」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第32回です。

短冊(たんざく)、というと、
一番身近なのは、七夕でしょうか。
7月7日、
笹の枝に、願い事を書いた短冊を結びつけましたよね。

いま、本館3室で、
短冊をたくさん貼り付けたアルバム、
「短冊手鑑」を展示しています。

短冊手鑑
短冊手鑑  鎌倉~江戸時代・14~18世紀(本館3室・宮廷の美術にて 2013年3月24日(日) まで展示)

ひとつひとつの短冊に装飾がされていて、
きらびやかです。



短冊の右側には、
小さめの紙に人の名前が書いてあり、
これを極札(きわめふだ)と呼びます。
筆跡を鑑定する古筆家(こひつけ)が、
筆者名を書き、印(「琴山」) を捺しています。

短冊の一番上に書かれた大きい文字は、
和歌の題です。
その下に二行に分けて和歌が記され、
左下に和歌を詠んだ人の名前が小さく書かれています。
(天皇の短冊の場合、親王時代には名前を書きますが、
天皇になってからのものは署名をしません)

和歌の会では、
題名だけ書かれた短冊を渡されて、
その題に合わせた和歌を書きます。
だから、歌会での短冊の場合は、
題と和歌は、ちがう人が書いていることになります。


さて、この「短冊手鑑」は、
江戸時代の浦井有国(うらいありくに、1780~1858)が
編纂したものです。

浦井有国は、刀剣の柄糸(つかいと)を扱う商人ですが、
俳句や和歌を学んでいて、短冊収集に熱心でした。
そのため、
その時期の『甲子夜話』(かっしやわ)という本の中で、
浦井有国は「短冊天狗」(たんざくてんぐ)と呼ばれています。

「短冊天狗」、
なんだか、いい呼び名ですね。

「短冊天狗」の集めた「短冊手鑑」、
ぜひ御覧ください。

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2013年02月27日 (水)