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特別展「禅―心をかたちに―」10万人達成!

特別展「「禅―心をかたちに―」(10月18日(火)~11月27日(日)、平成館)は、11月18日(金)、10万人目のお客様をお迎えしました。
ご来場いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。

10万人目のお客様は、東京都内からお越しの新井恵さん。
本日は、お嬢さんの麗加さんとご友人の藤本恵美さんと一緒に、ご来館されました。

恵さんには、当館学芸研究部長 富田淳より、記念品として特別展図録と展覧会グッズの「トートバッグ」を贈呈しました。
贈呈式には当館広報大使トーハクくんも登場! お嬢さんの麗加さんも大喜びでした。


左から藤本恵美さん、新井恵さん、お嬢さんの麗加さん、当館学芸研究部長 富田淳、後ろにトーハクくん 


トーハクくんがお気に入りの麗加さん

美術館・博物館がお好きな恵さん。先入観なしで禅展を楽しみたい、とお話しくださいました。

特別展「「禅―心をかたちに―」も、残すところわずか1週間あまり。11月27日(日)までです。
雪舟筆の国宝「慧可断臂図」(愛知・齊年寺蔵)や、特別出品の伊藤若冲の作品など、後期展示も見逃せない作品ばかりです。(作品リストはこちら

まだご覧になっていない方、もう一度ご覧になりたいという方、ぜひ会場へお急ぎください!

カテゴリ:news2016年度の特別展

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posted by 宮尾美奈子(広報室) at 2016年11月19日 (土)

 

【禅展】研究員のおすすめ 「山楽の吼えるトラ」

 

阪神VS中日、ではないけれど・・・。

現在開催中の特別展「禅―心をかたちに―」に展示されている重要文化財「龍虎図屛風」(狩野山楽筆)の前に立つたびに、ついつい、こうつぶやいてしまいます。プロ野球のタイガースとドラゴンズの試合ではない、という単なるギャグなのですが、野球ではどちらのチームにも友達に熱烈なファンがいて、友達を失いたくない僕は、中立の立場をとるようにしています(笑)。

それはさておき、この屛風の龍虎も、なかなか熱い対決をくりひろげています。


重要文化財  龍虎図屛風 狩野山楽筆 安土桃山〜江戸時代・17世紀 京都・妙心寺蔵
展示期間:11月8日(火)~11月27日(日)

まず画面の大きさそのものに圧倒されます。裂・縁ふくめて天地は約2メートル。通常の屛風が等身大程度ですので、見上げるように背の高い屛風なのです。だから龍も虎もビッグサイズ。けれど、その大きさをさらに増幅させているのが、画そのものの迫力にほかなりません。  

右隻に天空から風雨を巻き起こしながら降りてくる龍、左隻に振り向きざまに咆哮する雄虎と雌虎(当時、虎は日本に生息しておらず、豹は雌の虎と思われていました)が描かれ、龍虎相撃つ図様となっています。さて、どちらが勝つのか!?

右隻のムチのようにしなり鋭く伸びる枝、切れるようになびく熊笹の動勢が、舞い降りる龍のスピード感と風の強さを増幅し、その風は、左隻に入って下草や左端の竹葉までなびかせています。でもその動勢は、振り返る虎の迫力によって、一挙に撥ね返されます。最強の虎の描写、これほどの迫力と存在感を放つ猛獣の絵は、ほかに狩野永徳の「唐獅子図」くらいしかないでしょう。大地を揺るがす巨大な虎の咆哮、それは、まるで絵の前に立つ我々を「一喝」しているかのようです。



構図や形態とともに、ここで特に注目しておきたいのが、右隻の天空から降りる龍の描き方です。


(右隻)

金箔地に水墨、つまり墨の濃淡を透して金地の輝きをみせるという手法が用いられています。金箔地水墨のかなり早い例で、実験的な手法がとられているわけですが、よく観察しますと、単純に金箔地の上で筆を走らせたのではないことが分かります。必ずしも水墨の偶然の効果をねらったのではなく、かなり手の込んだ描き方をしているのです。

まず濃墨線で龍の輪郭をつくり、その内側に薄く胡粉地を置いてごく淡い墨の面を重ねています。その上に濃墨で目鼻口の線を引き、ザラザラした皮膚を表わすべく、かすれぎみの短い中墨・淡墨線を無数にほどこし、金泥や胡粉を処々に置いてハイライトにしています。ハイライトとなる金泥は、顔にかなり多用されています。暗雲部にも、渦巻をしめすように金泥が用いられています。

(部分)

一見、金地に一気呵成、水墨のみで描かれているようでありながら、実はきわめて丁寧な作りこみがなされているのです。金地に墨という実験的な手法を用いると同時に、その効果を確かめながら、細部に手間をかける山楽の周到さ。もう舌を巻くしかありませんね。ずばり「一流の絵画」と呼びましょう。一龍だけに。

左隻の虎の目、口の中の生々しさを表わす実に細かな描写、微妙に諧調を変化させた体皮や、生えた場所によって墨・代赭・胡粉と使い分けた毛描きも同様です。豪放な画は、実はとても手の込んだ高度な技術に支えられていたのです。たまらなく、すばらしいですね。思わずスタンディング・オベーションしたくなります。


(左隻)

(部分)

一大禅宗寺院である妙心寺に、おそらく制作当初から伝わった狩野山楽の「龍虎図屛風」。この屛風が発する躍動感、生命力は比類がありません。この対決をライブで観てみませんか? 試合時間は、11月27日(日)まで、もう数日しかありません。ゴングは鳴りました。

さぁ、会場に向かいましょう!!

 

カテゴリ:研究員のイチオシ2016年度の特別展

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posted by 山下善也(絵画彫刻室主任研究員) at 2016年11月18日 (金)

 

特別展「平安の秘仏」10万人達成!

特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」(9月13日(水)~12月11日(日)、本館特別5室)は、11月4日(金)に10万人目のお客様をお迎えしました。
ご来館いただいた多くのお客様に、心より御礼申し上げます。

10万人目のお客様は、東京都八王子市よりお越しの田中和江さん。
本日は、お嬢さんの良実さんと一緒にご来館いただきました。
田中さんには、当館学芸研究部長 富田淳より、記念品として展覧会図録と本展オリジナルTシャツ(特設ショップで大好評販売中!)を贈呈しました。


特別展「平安の秘仏」10万人セレモニー
左から学芸研究部長の富田淳、田中和江さん、田中良実さん
11月4日(金) 本館エントランスにて


実は田中さん、櫟野寺(らくやじ)にいらっしゃったことがあるそうです!
記念すべき10万人目のお客様が、現地に行かれたことのある方だなんて、観音様がご縁を結んでくださったのかもしれません。
「正直、そんなにすごい仏像があるとは思わなかったので、行ってみてとても驚きました」と、田中さん。
お帰りになってからも、櫟野寺にまた行きたいと思っていた折、新聞記事で本展の開催を知り、ご来館くださったそうです。

展覧会での田中さんのお目当ては、本尊の十一面観音菩薩坐像。
「360度見られると聞いて、楽しみにしていました」とお話しくださいました。
本尊は普段は厨子に納められているため、ご開帳時でも全体を見ることはできません。
現地でも見られない本尊の横顔や背中など、ぐるりと360度ご覧いただけるのが、本展の大きなポイントです。
今だけの貴重な展示を、どうぞお見逃しなく!

特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」は、12月11日(日)まで。
皆様のご来館をお待ち申し上げております。

カテゴリ:news彫刻2016年度の特別展

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posted by 高桑那々美(広報室) at 2016年11月04日 (金)

 

【平安の秘仏】トーハクくん×研究員の仏像トーク(その2)

ほほーい! ぼく、トーハクくん!
前回に引き続き、特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」の仏像について、担当研究員の西木さんとお話しするんだほ。


「大観音の顔」
櫟野寺(らくやじ)のご本尊は、穏やかなお顔だほ。

衣や体だけではなく、この表情も10世紀の仏像らしい表現だよ。
お客様も「いいお顔の仏様ねぇ」って言っていたほ。
美術的にも良い仏像だと思うよ。とても洗練された作風で、都にあってもおかしくない出来映えだね。
さすが、仏像ワンダーランドの滋賀だほ!
前回、「ご本尊は延暦寺に関係のある工房でつくられたのかもしれない」と言ったけど、出来の良さも考えると、やっぱりこういったきちんとした技術のあるところでつくられたんじゃないかな。
なるほー。そうすると、櫟野寺にある他の仏像もみんな同じところでつくられたんだほ? なんとなくご本尊に似ている仏像もあるんだほ。
みんな同じ工房というわけではないんだ。でも、いい目のつけどころだね。
ふふん♪
じゃあ、じっくり仏像を見比べてみましょう。

「本尊に似てる? 似てない?」
 
左:重要文化財 十一面観音菩薩坐像(本尊、No.1) 平安時代・10世紀
右:重要文化財 観音菩薩立像(No.10) 平安時代・10世紀


ほーほー、似てるほ。目がキュッとつりあがっているほ。
特にNo.10の観音像は、ご本尊と似ているよね。ぷっくりとした下膨れの顔に太い鼻、厚い唇。
お、親子?!
そうだね。No.10はご本尊をお手本に作られた像だし、親子と言えるかもしれないね。


左:重要文化財 十一面観音菩薩立像(No.8) 平安時代・10~11世紀
右:重要文化財 
観音菩薩立像(No.7) 平安時代・10~11世紀

この2体は立ち姿がソックリだほ!
そうそう。そしてどことなく顔もご本尊に似ているでしょ?
 
つりあがった目が似ているほ!!
No.10より後の時代につくられた像だけど、この2体もやっぱり本尊をお手本にしているってわかるよね。
でも、No.10ほどはご本尊に似ていないんだほ。
ご本尊をお手本としつつも、時代を経てだいぶ独自性というかローカル色が強く出ているんだ。こういったご本尊の特徴を引き継いだつくりを「甲賀様式」と研究者は呼んでいるよ。
ウェブ投票でご本尊は一番人気! No.7の観音さまも5位だし、トーハクのお客様は「甲賀様式」が好きなんだほ。
でも、No.10はイマイチ票が伸びなかったんだよね。一番本尊に似ているんだけど・・・玄人好みなのかなぁ。
甲賀様式ならなんでも好きってわけじゃないのか・・・。ぼくは、はにわクッキーならなんでも好きなんだけど・・・ふしぎだほ。


重要文化財 薬師如来坐像(No.9)
平安時代・12世紀

さて、ご本尊についで大きいのが、こちらの薬師さんです。髪の毛の生え際までの高さが約1.9m、これは古代中国で用いられた尺度で一丈六尺にあたるから、これも丈六仏だよ。
仏像の理想のサイズだほ!
さすがトーハクくん、そのとおり!

この薬師さんは、なんだか眠そうなお顔だほ。
笑。今まで見てきたような厳しくつりあがった目とは、だいぶ表現が異なるね。
ご本尊とは似ていないほ。
じゃあ、次はこの薬師さんをテーマに話しましょう。
ほー!

~【平安の秘仏】トーハクくん×研究員の仏像トーク(その3)に続く~

※作品はすべて滋賀・櫟野寺蔵
※No.は会場内での番号。展覧会カタログの番号とは異なります

カテゴリ:研究員のイチオシ2016年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2016年11月01日 (火)

 

特別展「禅―心をかたちに―」 もうひとつの見かた

「禅の美術かぁ、わかりにくそうだなあ」と思っている方、いらっしゃいませんか?

そういう方には、第2会場からご覧になることをご提案いたします。  

この特別展は、第2会場に、「第3章 戦国武将と近世の高僧」「第4章 禅の仏たち」「第5章 禅文化の広がり」 と題して、予備知識なしで楽しんでいただけるような作品をそろえています。  

第3章では、まず織田信長や豊臣秀吉といった戦国武将とその活躍を陰で支えた禅僧たちの関係をその肖像画や遺品を通してご紹介します。

    
(左) 織田信長像 (部分) 狩野永徳筆 安土桃山時代・天正12年(1584) 京都・大徳寺蔵 
展示期間:~11月6日(日)
(右) 重要文化財 豊臣秀吉像 西笑承兌賛 狩野光信筆 安土桃山時代・慶長4年(1599) 愛媛・宇和島伊達文化保存会蔵
展示期間:11月8日(火)~11月27日(日)

そのあと近世禅画を代表する白隠・僊厓の作品を見ていただきます。
戦国武将や歴史に関心のある方、また白隠・僊厓の禅画を楽しみたい方は、まずこちらへどうぞ。  

第4章では独特の姿や表現を示す禅宗寺院の仏像や仏画をご紹介いたします。  


重要文化財  伽藍神像 鎌倉時代・13世紀 神奈川・建長寺蔵

  
(左) 重要文化財 宝冠釈迦如来坐像 院吉・院広・院遵作 南北朝時代・観応3年(1352) 静岡・方広寺蔵
(右) 重要文化財 十八羅漢坐像のうち 羅怙羅尊者 范道生作 狩野光信筆 江戸時代・寛文4年(1664)  京都・萬福寺蔵

   
重要文化財 達磨・蝦蟇・鉄拐図 吉山明兆筆 室町時代・15世紀 京都・東福寺蔵
展示期間:11月8日(火)~11月27日(日)

 
第5章は(1)唐物、(2)茶の湯、(3)水墨画、(4)障壁画という4つのコーナーからなります。

(1)中国からもたらされた豪華な工芸品


重要文化財 椿尾長鳥堆朱盆 中国 元時代・14世紀 京都・興臨院蔵
展示期間:~11月6日(日)

 (2)茶碗や茶入などの茶の湯の名器

  
(左) 国宝 油滴天目 建窯 中国 南宋時代・12~13世紀 大阪市立東洋陶磁美術館蔵
(右) 唐物文琳茶入 銘「玉垣文琳」 中国 南宋時代・12~13世紀 埼玉・遠山記念館蔵
展示期間:11月8日(火)~11月27日(日)

(3)中国と日本の水墨画の至宝

  
重要文化財 龍虎図 伝牧谿筆  中国 南宋時代・咸淳5年(1269)  京都・大徳寺蔵
展示期間:11月8日(火)~11月27日(日)


国宝 瓢鮎図 大岳周崇等三十一僧賛 大巧如拙筆 室町時代・15世紀 京都・退蔵院蔵
展示期間:11月8日(火)~11月27日(日)

  
国宝  秋冬山水図 雪舟等楊筆 室町時代・15世紀末~16世紀初 東京国立博物館蔵
展示期間:~11月6日(日)

(4)禅宗寺院の襖絵や屛風の絶品をご覧いただきます。

 
重要文化財 竹林猿猴図屛風 (部分) 長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀 京都・相国寺蔵
展示期間:11月8日(火)~11月27日(日)

 
重要文化財 南禅寺本坊小方丈障壁画のうち 群虎図 (部分) 狩野探幽筆  江戸時代・17世紀 京都・南禅寺蔵
場面替あり

禅宗寺院で育まれた美の広がりをご堪能ください。

そして、名宝でたどる禅の歴史の第1会場へ。
こんな見方をするのも、展覧会の楽しみ方のひとつかもしれません。

特別展「禅―心をかたちに―」は、11月27日(日)まで開催中です。(※会期中、展示替があります)
 

カテゴリ:研究員のイチオシ2016年度の特別展

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posted by 救仁郷秀明(列品管理課長) at 2016年10月31日 (月)