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私のお気に入りの1点(「アラビアの道ーサウジアラビア王国の至宝」より)


香炉、タイマー、ナバテア王国時代・前1~後1世紀頃、タイマー博物館蔵(本展No. 149)

「アラビアの道」展のほとんどの展示室に登場するもの──それは香炉です。この展示には古代から現代の約20点の香炉や香を焚いた祭壇が展示されています。
アラビア半島のオアシス都市タイマーで出土したナバテア王国時代のこの香炉は、砂岩を彫ってつくられたもので、わずかに丸みを帯びた形状が砂岩の質感と相まって温かみのある趣を醸し出しています。
アラビア半島では既に青銅器時代には香が焚かれていました。鉄器時代以降(前1200年頃~)の隊商都市からは、さまざまな香炉や香を焚いた祭壇が出土しています。古代の代表的な香は、アラビア半島の南西部に生育する低木からとれる樹脂香料、乳香と没薬(「アラビアの道」展第3章にて展示中)でした。これらは古代オリエント世界各地の神殿で神々に捧げられる神聖な香でもありました。新約聖書には、キリストの生誕に際して、東方三博士が黄金とともに乳香と没薬を贈り物として持参したことが記されています。
 

香炉、カルヤト・アルファーウ出土、1世紀頃、キング・サウード大学博物館蔵(本展No. 186)
前面にはクスト(インドなどが原産のオオホザキアヤメ科コストゥス属の植物の根茎か)という香料の名が刻まれている

No. 149のように四隅に角のある香炉や祭壇は青銅器時代よりレヴァント(シリア・パレスティナ)によくみられますが、アラビア半島の香炉にこのような角が作られるようになるのは、前6世紀頃の北西アラビアで、ちょうど新バビロニアの王ナボニドスが北西アラビアのオアシス都市タイマーに滞在した頃にあたります。この時、ナボニドスとともにやって来た人々の中には、ユダヤ人などレヴァント出身の人々も含まれていたようです。
 

タイマー出土の香炉(前6世紀頃、タイマー博物館蔵) ※本展には出品されていません。

その後、No. 149の香炉を作ったナバテア人が前4世紀頃に北西アラビアに台頭し、前2世紀には独自の王国を築いて香料貿易で栄えました。ナバテア王国は106年にローマ帝国の属州に組み込まれますが、そのローマ帝国の神殿でも、オリエント世界の影響を受けた角のある香の祭壇が使われていました。
イスラーム時代以降の香炉については、さまざまな形状・材質のものが残されています。モスクでも香が焚かれますが、古代のように神に香を捧げるという意味合いはありません。
 

香炉、ラバザ出土、7~10世紀、キング・サウード大学博物館蔵(本展No. 319)

 
香炉、ラバザ出土、8~10世紀、キング・サウード大学博物館蔵(本展No 318)

現在サウジアラビアで一般的に使われている香炉も、No. 149の香炉と同様、四隅が角状の形をしています。角は、香炉の見栄えを良くするだけでなく、誤って服などが火皿に入ってしまうのを防ぐ大切な役割を担っています。
 

香炉、リヤド、19世紀、サウジアラビア国立博物館蔵(本展No. 406)
現在も同様の香炉が使われ続けている


香炉の使い方は古代も現在も変わりません。まず、火皿の中に着火済みの炭を用意し、その上に少量の樹脂香料や香木をそのまま置くだけで、すぐに香り高い白い煙が立ち上ります。乳香と没薬、とりわけ前者は現在でもよく使われますが、最も好まれているのは、インド洋世界から輸入される伽羅と沈香です。その他、複数の香が調合されてつくられたものを含め、現在の家庭では多種多様の香が楽しまれています。


香を焚く準備─香炉の火皿に着火した炭を用意する(現代のサウジアラビアの香炉) ※本展には出品されていません。

 
現代のサウジアラビアで最も好まれている沈香(その高級品が伽羅と呼ばれるが、アラビア語では両者ともに「ウード」と呼ばれる) ※本展には出品されていません。

 
現代のサウジアラビアの香の店(リヤド)─香木などとともに、香油や香水も扱う

曜日・時間限定で開かれている表慶館前のアラブ イスラーム学院による遊牧民テントでは、香炉を含むアラビアの民具を手に取ってご覧いただくことができます(テントが開かれている時間はこちら)。こちらも是非どうぞ。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」

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posted by 徳永里砂(アラブ イスラーム学院研究員・金沢大学国際文化資源学研究センター客員准教授) at 2018年03月05日 (月)

 

「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝-」10万人達成!

「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝-」(表慶館)は、3月2日(金)、10万人目のお客様をお迎えしました。ご来場いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。

10万人目のお客様は、千葉県からお越しの鈴木万里子さん。

鈴木さんには、当館副館長 井上洋一より、記念品として本展図録とサウジアラビア国家遺産観光庁作成の展覧会ポスターを贈呈しました。
贈呈式には当館広報大使トーハクくんも登場、セレモニーを盛り上げました!


左から当館広報大使 トーハクくん、鈴木さん、当館副館長 井上洋一

鈴木さんは当館にはよくお越しになるそうで(ありがとうございます)、今回はアラビア文字にご興味をお持ちで、本日本展を見に来られました。

また展示会場の表慶館も大好きだそうで、会場内の雰囲気も楽しみにしているとのことでした。ありがとうございます。


美しい表慶館ホールの天井装飾

そして、10万人突破のタイミングで重大発表です!
「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝-」の会期が、3月18日(日)閉幕のところ、5月13日(日)まで延長することが決定しました!

また、ミュージアムショップで販売している図録を、3月9日(金)から金曜・土曜・日曜限定で、9時30分から16時30分までの間は表慶館内でも販売いたします(税込2,800円)。こちらもぜひお買い求めください。

これからどんどん暖かくなり、春には当館自慢の桜も咲き始めます。上野にお花見がてら、総合文化展料金でご覧いただける本展にもどうぞ足をお運びください。
 

カテゴリ:news「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」

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posted by 武田卓(広報室) at 2018年03月02日 (金)

 

私のお気に入りの1点(「アラビアの道ーサウジアラビア王国の至宝」より)

「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」展はオープンして3週目。
連日多くのお客様にご観覧いただいております。どうもありがとうございます。

この展覧会、総合文化展チケット、仁和寺展チケットで見ることができ(!)、
すべての展示品が撮影可能です(フラッシュ、三脚はNG)!
ということは、表慶館の内部も撮影できます!

 
表慶館内部

さて、今回は、じっくりご鑑賞いただきたい展示品を1つご紹介いたします。
「カァバ神殿の扉」です。


カァバ神殿の扉  オスマン朝時代・1635または1636年  サウジアラビア国立博物館蔵

時の経過とともに表面の金色はだいぶ剥がれてしまいましたが、
展示室で鈍く輝く扉には重厚感があり、その歴史を感じさせます。
イスラーム教徒でもなく、考古学を専門とする(普段、発掘品や古代のモノばかりに興味を示します・・)僕にとっても、最も印象的な展示品の一つで、
前を通りかかるたびに、立ち止まって見入ってしまいます。

イスラームの聖地、マッカ(メッカ)の聖モスク。
その中心にある1辺が10mちょっとの、立方体に近い外観の石造建築がカァバ神殿です。
イスラーム教徒にとって最も重要な聖地であり、
たくさんの巡礼者がひしめきながら神殿の周囲を回ります。
マッカ巡礼(ハッジ)はイスラーム教徒の5つの義務の一つであり
巡礼者個人にとっては、人生の一大イベントでもあります。


キスワ マッカ 1992年 サウジアラビア国立博物館蔵

カァバ神殿はキスワと呼ばれる黒い布で覆われています。
キスワは金糸による刺繍で彩られています。実物をみると立体感があります。

扉にもどります。


上部にある優美な書体の銘文は、イスラームの聖典クルアーン(コーラン)の一節と、
オスマン朝のスルターン、ムラト4世による扉の設置を記したもの。


マッカの聖モスクは1630年に発生した洪水で大きな被害を受けました。
カァバ神殿の扉の中央付近まで水が押し寄せたことが記録されています。
その後、カァバ神殿はムラト4世による大改修が実施され、現在の姿となりました。
新しい扉は、オスマン朝の都イスタンブールで、
おそらく王室直属の工房で製作されたものと考えられています。
扉の設置(1635または1636年)は、大改修工事の締めくくりとなったようです。
以降この扉は、およそ300年にわたって使われ、多くの巡礼者たちを迎えました。


1937年に撮影されたカァバ神殿の写真。同じ扉がまだ使われています


カァバ神殿の扉 中央部分

扉のアクセントになっているのが、中央を飾る印象的なマンダラ装飾。
よく見ると、その周囲にも精緻な植物文様が打出されているのがわかります。
こうした装飾は、扉が製作された17世紀前半にはほとんど類例がないもので、
おそらく、「先代の扉」に施されていた文様を受け継いだものとみる研究者もいるようです。


カァバ神殿の扉 裏面

ちなみに、人目に触れることのない扉の裏側にも、装飾が彫り込まれています。
写真のように、「カァバ神殿の扉」は左右2枚の扉で構成されています。
見た目以上に重量があり、展示作業では、力持ち6人で片方ずつ慎重に運びました。

イスラームの2大聖地である、マッカの聖モスク、マディーナの預言者モスクを管理し、
多くの巡礼者を保護することは、イスラーム世界の有力な君主が代々務めてきた重要かつ名誉ある役割。
現在はサウジアラビア国王が「二聖モスクの守護者」の称号を受け継ぎ、
聖地のモスクを管理しています。


現役の「カァバ神殿の扉」は装飾のデザインが一新され、金色に輝いています

ということで今回の展覧会、
なかなかお目にかかることのできない「カァバ神殿の扉」を、間近で見ることができる大変貴重な機会です!
展示室で、イスラームの聖地マッカ(メッカ)に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」

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posted by 小野塚拓造(東洋室研究員) at 2018年02月05日 (月)

 

開幕! 「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」

本日23日、「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」がついに開幕しました。


本展覧会会場の表慶館(重要文化財)。22日の報道内覧会は大雪に…

古代より人々と諸文明の文物が行き交ったアラビア半島。本展は、その歴史と文化を示すサウジアラビア王国の至宝を日本で初めて公開するものです。

展示は「道」をキーワードに5章構成。第1章は「人類、アジアへの道」。100万年以上前にさかのぼるアジア最初期の石器、5000年前に砂漠に立てられた人形石柱など、先史時代の人々の活動をご紹介します。


人形石柱 カルヤト・アルカァファ出土 前3500~前2500年頃 サウジアラビア国立博物館蔵
本展のメインビジュアル 

第2章は「文明に出会う道」。前2500年頃からメソポタミア文明とインダス文明をつなぐ海上交易で反映したアラビア湾(ペルシャ湾)沿岸地域の出土物を展示します。


祈る男 タールート島出土 前2900~前2600年頃 サウジアラビア国立博物館蔵
メソポタミア美術の特徴を示す表情やポーズ 

第3章は「香料の道」。前1000年以降に香料交易で賑わったオアシス都市の出土品を展示します。


テル・アッザーイルで出土した黄金製品の数々

第4章は、「巡礼の道」。マッカ(メッカ)、マディーナ(メディナ)という2大聖地を擁するアラビア半島への文字通り巡礼がテーマ。17世紀から聖地マッカのカァバ神殿で実際に使われていた扉やクルアーン(コーラン)の写本などを展示。アラビア文字が刻まれた墓碑の美しい書体も必見です。


カァバ神殿の扉 オスマン朝時代・1635年または1636年 サウジアラビア国立博物館蔵
鈍い輝きに歴史の重みを感じずにはいられない  

最後の第5章は、「王国への道」。現在のサウジアラビア王国の初代国王となったアブドゥルアジーズ王の豪華な遺品を展示します。


アブドゥルアジーズ王の刀 20世紀 キング・アブドゥルアジーズ財団蔵
黄金に輝く刀! 

以上、全5章構成で展示件数400件超。そのすべてがサウジアラビア王国からの作品で、かつ日本初公開のものばかり。実は…それがなんと総合文化展料金でご覧いただけるんです!!ということは、現在開催中の「仁和寺と御室派のみほとけ」展のチケットでもご覧になれるということです。「仁和寺と御室派のみほとけ」展、総合文化展目当てで来られる方も、ぜひ表慶館にもお立ち寄りください。
なお、2月4日(日)まではアラブ・イスラーム学院のご協力により、「アラビア体験」と題して、表慶館前にてアラビアの遊牧民テント内で、アラブ世界で楽しまれているアラビックコーヒーに関する民具や、香炉、ナツメヤシの葉で編んだ敷物やかご、毛織物、伝統衣装などを展示します。さらにアラビックコーヒーとデーツ(ナツメヤシの実)を無料でご提供します!(※)


アラビアの遊牧民テント


アラビックコーヒーとデーツ

それから最後にもう1点注目ポイント!なんとこの展覧会、展示作品すべて撮影OKなんです!明治末期の洋風建築を代表する表慶館(重要文化財)は基本的にはイベントや展覧会の開催中しかお入りいただけません。ということは、この素晴らしくフォトジェニックな館内も撮り放題ということです。とっておきの1枚をカメラにお収めください!


エントランスを見上げると美しいドーム天井が


階段手すり。その曲線美!

というわけで注目ポイント満載のこの展覧会、会期は3月18日(日)まで。ご来館の際は、表慶館にもぜひ足をお運びください!

※ アラビア体験は1月23日(火)~2月4日(日)、アラビックコーヒーとデーツの無料配布は各日先着1,000名となります。

カテゴリ:news「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」

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posted by 武田卓(広報室) at 2018年01月23日 (火)

 

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