TOP
 >> 1089ブログ

1089ブログ

フランス人間国宝展 作家インタビュー

今回のブログでは、展示中の様子や、出品作家に聞いた作品に関するエピソードをいくつかご紹介しようと思います。(前回のブログはこちら

今回いらした作家さん、展示が出来上がった状態を見に来るというより、ほぼ自ら展示をした人が多く、このように主体的に展示に関わるところもまた「フランス人間国宝」ならでは、なのだそうです(監修者のエレーヌ・ケルマシュテールさん曰く)。

ル・グエンさん ジレルさん
基本的に、自分の作品は自分で展示します。
左は扇「香り立つポップアップ」を整えるル・グエンさん
右は、「茶碗 Tenmoku(天目)」の展示順序や表裏の配置を検討しているジレルさん



さて、本展に出品している作家15人のうち、一番先に来日したのは、フランソワ=グザヴィエ・リシャールさん(壁紙)とピエトロ・セミネリさん(折り布)のおふたり。どちらも室内装飾分野に関わっているためか、お互いの部屋(リシャールさんは第3室、セミネリさんは第5室)を行き来し、「どんな感じ?」など話しながら展示作業を進めていたのが微笑ましかったです。

リシャールさんに「今回の展覧会で挑戦したところは?」と尋ねたところ、「初めて和紙を使ってみたよ。とても感じがいいね」とのお答えでした。木版の木型は主に18世紀のものですが、当時5色・10色と多色刷りされていたものを、和紙に白色だけで刷ってみたところ、その透け具合が気持ちよかったので今回の展示品ができたのだそう。
なおこの部屋、彼の展示が終わらないとル・ベールさんの真鍮とドゥ・コーヌさんの麦わら象嵌チェスト(150kg近くあります!)が置けないので、かなり頑張って急いでくれましたが、どの順にどう掛けていくか、垂直に下がっているか、など細かくチェックしながらだったため、結局5日がかりとなったのでした。

リシャールさん
写真左:自ら脚立に乗って展示するリシャールさん(右)と、手伝う日仏スタッフ
写真右:巻き上げの最終仕上げも自分で



セミネリさんの作品は、タイトルが「隠遁者」とか「深き淵より」と、なんだか重た~い感じだったので、ご本人もそういう人だったら話しかけづらいな。。。と思っていたのですが、全くそんなことはなく、静かで物腰柔らかなとっても優しい方でした!
展示室中央に置かれた作品「トレーン」は、ミャオ族から物々交換で入手した18メートルもある布を、アシスタント含め4人で2か月かけて折った作品だそう(その他の作品は一人で制作)。手順としては、図面を引き、布にテープで折り位置の目処をつけ、端から手で折っていくそうで、折り方にもよりますが、出来上がりの2~3倍の布が必要になるそうです。布が掛けられている木の支持具もセミネリさんのデザインなので、作品と統一のとれた支持具にもご注目ください。

セミネリさん
作品を整えながら、全体的な配置にお悩み中のセミネリさん
でも写真をお願いすると笑顔で対応。ありがとうございます!



その後エマニュエル・バロワさん(ガラス)が来日し、そのあとは次々と作家さんたちが来て、会場内の人口密度と賑やかさは一気に上がりました。

バロワさんは、ご自身とアシスタントさんとの2人だけで「探求」を黙々と組み立てていたのですが、最後に大工さんたちと総がかりで鉄の枠組みを外した時の、揺れたガラスの美しさ(と怖さ!)は圧巻。この壮大なガラス作品は、東博構内で屋外展示されている黒門(重要文化財)からインスピレーションを受けて制作されたそうなので、展覧会からの帰り道に、ぜひ黒門もご覧になってくださいね。

バロワさん
一枚ずつ丁寧にガラスを磨きながら並べていくバロワさん
ちなみに並んでいるガラス板の数は約80枚



ジェラール・デカンさん(紋章彫刻)には、かねてより疑問だったガラスへの刻印方法を質問。すると「まず初めにいくつも動物の石膏型作って、それを石膏版に押していく。そのあとそこにガラスを流し込んで作っているんだよ」とのことでした。水平状態で制作されているのですね!いわれてみれば当たり前なのですが、紋章というとなんだか “上から押し付ける”という先入観があったので、目から鱗でした。。。

デカンさん
作品について説明してくれるデカンさん
(お隣は制作パートナーのソフィー・ルノワールさん)



また、傘の展示はまさに協同作業。12人がそれぞれ1本ずつ傘を持ち、作家のミシェル・ウルトーさんが「君はあっちへ、君はこっちでしゃがんで、あと君はもっと腕を伸ばして!」と傘の配置を指示。そして監修のエレーヌさん、空間デザイナーのリナ・ゴットメさんに相談するのですが、傘持ち部隊から「早く~!」「しびれてきた~!」「壁になっちゃうよ~」などとヤジが次々。ようやく場所が決まって「オーケー決まったよ!皆ありがとう~」となった後、皆が適当な場所に置いたので、いざ大工さんが支持具を取り付ける時にまた場所がわからなくなるというコメディな一幕も。。。(ウルトーさん自身もよく覚えてなかったのに、しっかり者のリシャールさんが写真を撮っていたので事なきを得たのでした。良かった!)

ウルトーさんと仲間たち
傘の展示でわいわい相談中。左からボネさん(鼈甲)、一人置いてウルトーさん(傘)、
ケルマシュテールさん(監修)とほぼ隠れてしまったル・ベールさん(真鍮)、
リシャールさん(壁紙)、そして後姿のゴットメさん(空間デザイン)



先に展示が終わった作家は他の展示を手伝ったり、似た技術の作家同士「ここどうやって作ってるの?」とか「これ何の素材?」などお互いに吸収しあおうとする姿が印象に残った展示作業期間。彼らの人柄の良さと、更なる進化を求める作家としての前向きな姿勢を感じることができた1週間強でした。
 

フランス人間国宝展チラシ


「フランス人間国宝展」は、2017年11月26日(日)まで開催中

15人の匠による美と技の嬌艶。卓越した技と伝統、そして未来へと繋がる華麗な美の世界を展示室で体感してください。

詳しくはこちら

 

カテゴリ:「フランス人間国宝展」

| 記事URL |

posted by 熊谷美和(特別展室アソシエイトフェロー) at 2017年10月04日 (水)

 

フランス人間国宝展 リナさんインタビュー

やっと開幕した。。。というのが、正直な感想の「フランス人間国宝展」(2017年9月12日(火)~11月26日(日))。もうすでにご覧いただけましたでしょうか?いつものトーハクとは全く違った雰囲気の会場を。

今回会場の空間デザインをされたのは、フランスで活躍する建築家のリナ・ゴットメ(Lina Ghotmeh)さん。細かなところまで目を配り、微細な修正指示を出し、時には大胆にプランを変更。夜を徹しての作業という日仏双方のスタッフの努力あってこその完成となりました。そんな中、90%くらい会場が出来上がった9月9日の夜、リナさんに今回の会場における空間演出について解説してもらいました。

リナ・ゴットメ(Lina Ghotmeh)さん
リナ・ゴットメ氏 
(c)Hannah Assouline



第1室のテーマは「géométrie(幾何学的構造)」と「minéral(鉱物)」。中央と周囲に展示台を設け、作品を規則正しくきっちりと区切って配置。そのうえで茶碗が置かれたステージには、じっと見ていないと分からない程度の微かな光の明滅プログラミングが施されており、星が瞬く宇宙のイメージが投影されています。その宇宙を取り囲むのは、茶碗と同じく土から生み出された四季を感じさせる作品であり、部屋全体を通して季節に抱かれた宇宙の姿を現しているのだそうです。

茶碗の煌めきは星の瞬き。第1室展示台の茶碗
茶碗の煌めきは星の瞬き。第1室展示台の茶碗


第2室のテーマは「trésor(宝物)」ということで、まさに希少な素材を用いた最高級品と呼ぶべき作品が並べられています。第1室の整頓された展示とは異なり、この部屋は凸凹とした不規則な展示台が特徴。これにより、一つの作品をあらゆる角度から見ることが可能になっています。

宝物感満載な第2室の展示風景
宝物感満載な第2室の展示風景


第3室は「intimité(親密)」「légèreté(軽やかさ)」をテーマに、小さな部屋を構成しています。壁紙をめくると、まるでそこがアパルトマンの外であるかのような気持ちになれる部屋にしたかったとのこと。室内の光が朝から夜へと一日の流れを追うように変化していきますので、時間の流れを感じながら楽しんでいただきたいお部屋です。

第3室、夕刻。癒されます
第3室、夕刻。癒されます。。。


第4室は「animé(活き活きした)」「ouvert(開いた)」がテーマ。第3室が閉じた個人の空間だとしたら、ここは開けた世界です。傘と扇という、物理的に“開く”ものを展示することで、その活力を示したかったとのことでした。

第4室の展示作業風景。リナさん指示出し中
第4室の展示作業風景。リナさん指示出し中


第5室についてリナさん、「布の中って潜り込みたくならない?」とニッコリ。潜るにはちょっと作品が荘厳すぎるんですけど~と返すと、「そういうものに潜るほうが、スリルがあっていいのよ」だそうです。ちなみに壁に張られている布も、同じ作家さんが手掛けたものです。展示作業中、潜ってみようと思いましたが、できませんでした。。。

これは潜ったら痛そう。。。?第5室「トレーン」(部分)
これは潜ったら痛そう。。。?第5室「トレーン」(部分)


第6室は、前室の暗さから一転、白く浮遊する世界。白といっても壁紙の色をわずかにクリーム色にすることで、ノスタルジーを表しているのだそう。「古い技術の新しさや革新性を示す部屋にしたかったのよ」とのことでした。

第6室展示風景、アイボリーが優しい印象です
第6室展示風景、アイボリーが優しい印象です


第7室は、作品の「surréel(超現実)」な雰囲気に合わせ、幻想的な照明を施した白い世界にしたそうです。実は羽根細工の作品、ケースなしで展示するのは今回初めてだそうなので(リナさんの説得に作家さんが折れたのでしょうか?)、間近で見られる大変貴重な機会でもあります。

第7室で、木を差す位置を指示しつつ手伝うリナさん
第7室で、木を差す位置を指示しつつ手伝うリナさん


最後の第8室のテーマは「dynamique(力強さ、動き)」。この部屋の作品は、かなりぎりぎりまで作品の全容がわからず図面も引けなかったそうなのですが、結果的にリナさんが望んだ「工芸界のダイナミズムを象徴するような作品で締めたい」を見事に現実化してくれるものとなりました。

インパクト大!な第8室のガラス「探求」
インパクト大!な第8室のガラス「探求」

ちなみにリナさん、最近ではパリにあるパレ・ド・トーキョーのレストランも手掛けていて、日本となんとなく縁があるもよう。洋服も日本のメーカーのものを着ていることが多く、その話を振ると「日本のクリエイターの洋服が大好きなのよ」と語ってくれました。いつもと違うフレンチスタイルのトーハクを、ぜひ楽しんでくださいね!
 

カテゴリ:「フランス人間国宝展」

| 記事URL |

posted by 熊谷美和(特別展室アソシエイトフェロー) at 2017年09月21日 (木)

 

開幕!「フランス人間国宝展」

9月12日(火)、「フランス人間国宝展」がついに開幕しました。

開幕に先立ち、前日に行った開会式と内覧会にも多くのお客様にご出席いただきました。


開会式会場は本館特別5室、多くのお客様にご出席いただきました


主催者等によるテープカット

日本のいわゆる「人間国宝」(重要無形文化財保持者)にならい、1994年、フランスの伝統技術の継承者に対し、人間国宝(メートル・ダール〈Maître d’Art〉)という称号がつくられました。
本展は「メートル・ダール」の認定を受けた13名と、次期「メートル・ダール」と目される2名、計15名の工芸作家による作品およそ230件を紹介するフランス国外では初となる展覧会です。

見どころは15分野15人の匠たちそれぞれにあるのですが、本ブログではその中から何点かをピックアップしてご紹介。

まずは日本でもなじみの深い扇子と傘。しかしフランス人作家にかかれば素晴らしくエレガントになります。


扇作家、シルヴァン・ル・グエン作の「イソギンチャクの夕べ」


傘作家、ミシェル・ウルトー作の傘の数々

また7年間エルメスのケリーバックを手掛けた作家による美しい発色の鞄や、フランス伝統工芸である羽根細工作家の色鮮やかな作品、またガラス作家による吸い込まれそうになる巨大なオブジェなども大変見応えがあります。


革細工作家、セルジュ・アモルソ作の、「クフ王」シリーズ


羽根細工作家、ネリー・ソニエ作の「窪み」


ガラス作家、エマニュエル・バロワ作の「探求」

本展の会場となるのは明治末期の洋風建築を代表する建物、表慶館(重要文化財)。その展示空間をデザインしたのは、世界的に注目される建築家、リナ・ゴットメ氏。リナ氏が来場者の皆様を別世界へと誘う会場デザインも見どころです。


表慶館エントランスを抜けて展示空間へ

フランスの伝統工芸に現代の息吹を加え、フランス工芸界を牽引する匠たちの作品世界、会期は9月12日(火)~11月26日(日)までです。今後、作家へのインタビューなど本展の見どころを、このブログで紹介していきます。どうぞご期待ください!

カテゴリ:news「フランス人間国宝展」

| 記事URL |

posted by 武田卓(広報室) at 2017年09月13日 (水)

 

「フランス人間国宝展」報道発表!

東京国立博物館では、9月12日(火)~11月26日(日)、表慶館にて「フランス人間国宝展」を開催します。



日本には重要無形文化財に指定されている伝統工芸の最高の技術者に与えられる称号として、通称「人間国宝」というものがありますが、フランスの文化・通信省では、これにならい1994年、フランスの伝統技術の継承者に対し、人間国宝(メートル・ダール〈Maître d’Art〉)という制度を創設しました。
その「メートル・ダール」の認定を受けた13名の作家と、メートル・ダールにまだ認定はされていないものの、それにふさわしい創作活動をしている作家2名の、合計15名の工芸作家による革、鼈甲、羽細工、傘、扇、壁紙など珠玉の作品、およそ 200件を紹介する海外初の展覧会です。


日傘 イシス  ミシェル・ウルトー 2013年 個人蔵  
©Greg GONZALES



扇 ホワイト・ウェディング シルヴァン・ル・グエン 2008年 個人蔵
©Stephen Jackson


5月17日(水)、開催に先立ちご後援いただいているフランス大使館の大使公邸にて、報道発表会を行ないました。


フランス大使公邸の報道発表会場。たくさんのメディアの方にお集まりいただきました。

当日は、駐日フランス特命全権大使 ティエリー・ダナ閣下、また主催者を代表して井上洋一 東京国立博物館副館長からの挨拶のあと、本展を監修いただいたキュレーターのエレーヌ・ケルマシュテール氏から見どころについてご紹介いただきました。


ティエリー・ダナ駐日フランス大使


井上洋一 東京国立博物館副館長


映像を使いながら見どころを解説するエレーヌ・ケルマシュテール氏


報道発表会では、本展に出品される世界的に著名な陶芸作家、ジャン・ジレル氏の作品のフォトセッションも行われました。

展示会場は明治末期の洋風建築を代表する建物として重要文化財にも指定されている表慶館。展示空間をデザインするのは世界的にも注目されている建築家、リナ・ゴットメ氏。どんな展示空間となるのかも見どころです。

フランス伝統工芸という至福の芸術世界を堪能できる「フランス人間国宝展」、皆様どうぞお楽しみに!

カテゴリ:news「フランス人間国宝展」

| 記事URL |

posted by 武田卓(広報室) at 2017年05月19日 (金)

 

最初 前 1 次 最後

 

はじめに

展示のイチオシやバックヤードの出来事など、トーハクスタッフによる最新情報をお届けします。

 

1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    

 

他のブログを見る

更新情報