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1089ブログ

「つくり方」都々逸-リョウシシッポウニンギョウカガミ 見方がわかる 見方が変わる

いよいよミンミンゼミが鳴きはじめ、夏真っ盛りといったこのごろ、今年もやってきました、「日本美術のつくり方」シリーズ。伝統的な日本美術の技法をとりあげ、実際の作品とともに、作品ができあがってゆくプロセスを追った工程見本や、道具・材料などを展示し、日本美術にいっそう親しんでほしい。そういう願いで始まったこの展示も、第4弾目をかぞえることとなりました。今回のテーマは、料紙装飾・七宝・人形・銅鏡の4つ。(タイトルの都々逸-どどいつの意味、おわかりになりましたか?後半がちょっと、字余りですけど)その中から、いくつかご紹介しましょう。

まずは、ずらっと並んだ首たち。「人形の胡粉仕上げ」の工程見本です。木を彫って形をつくり、カキの貝がらを粉末にした胡粉(ごふん)を、ていねいに塗りかさね、色を付け毛を植えるなどして、顔がしだいに整えられていきます。有名な人形師であった、原米洲(はらべいしゅう 明治26~平成元年 1893~1989)さんが制作した技術記録。これまであまり展示されることのなかった、貴重な記録です。恐がらなくても、大丈夫。このお顔は、五月人形でもおなじみ「神武天皇(じんむてんのう)」。子供の成長をしずかに見守る、力づよい表情が、表わされているのです。

人形の胡粉仕上げ 工程見本
人形の胡粉仕上の技法製作工程見本  原米洲作  昭和42年(1967)

次は、銅鏡とその鋳型(いがた)。平安時代後期(12世紀)ころの鏡づくりを、復元したものです。数年前にその存在に気付き、それいらい注目していたものでした。というのも、鏡には「秀真」の文字が記されており、作者が香取秀真(かとりほつま 明治7~昭和29年 1874~1954)さんと考えられるからです。香取氏は、金属工芸の作家や、研究者たちにとっては、知らない人がいないだろうというほどの、金工の研究、制作、収集の大家です。これらの資料も、従来ほとんど展示されたことがなかったようですが、当時の鏡鋳造(ちゅうぞう)を、かなり忠実に復元しているように、私には思われます。


雙鳥芍薬鏡鋳型  香取秀真作  昭和時代・20世紀

会場には、江戸時代の柄鏡(えかがみ 取っ手のついた鏡)も展示しています。今のガラス鏡と違って、むかしの鏡は銅でつくられていました。ホントに顔が映るのか?ぜひ、確認しにきてください。


映っているかな?
南天樹柄鏡 平安城住青盛重作 江戸時代・18世紀 徳川頼貞氏寄贈




親と子のギャラリー「日本美術のつくり方IV」(本館特別2室、2013年7月17日(水)~8月25日(日))

 

カテゴリ:教育普及

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posted by 伊藤信二(教育普及室長) at 2013年07月23日 (火)

 

今年はサル。さて、来年は・・・

5月19日(日)、上野動物園国立科学博物館、東京国立博物館を1つのテーマでめぐるイベントを開催しました。

上野の山でサルめぐり

今年のテーマは「サル」。
小学校4年生から大人まで、大勢の参加者の方が朝の上野動物園に集まりました。

まずは動物園からスタート。
動物解説委員の小泉祐里さんと一緒に「生きたサルの観察」です。

上野動物園

ケージの中を活発に動き回る姿や、毛並み、手や足の動きについて、みんなで観察していきます。ひとことで「サル」といってもとてもたくさんの種類。特徴もさまざまです。

猿

エサを食べたり、ケージの中を飛び回って遊んだり…
すっかりサルの動きに見入ってしまいつつ、続いての国立科学博物館へ向かいます。
科学博物館では動物研究部の川田伸一郎さんに「サルの骨格」をテーマにお話を伺いました。

動物園で見たサルそれぞれのちがいについて、実物の骨格を前に説明していただきました。

科学博物館で骨格を見る


実際に骨格に触ってみます。

科学博物館で骨格に触る

思ったよりすべすべして、ずっしり。もちろん骨格も種類によって大きさや特徴がちがいます。


お昼ごはんのあとは、最後のトーハクへ。
教育講座室の小島有紀子さんが、平成館企画展示室(特集陳列「猿」 2013年6月16日(日)まで)などで「美術の中のサル」についてお話しました。

特集陳列 猿

動物園や博物館で見たサルの特徴がとても分かりやすい作品もあれば、イメージで作られたものも。古くから続く日本人とサルとの特別な関わりがよく分かります。


猿の作品2件
(左) 猿印籠牙彫根付 線刻銘「正民」  江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵
(右) 猿蟹  礒田湖龍斎筆 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵



作品の説明だけでなく、小泉さんと川田さんも交えて作品の中のサルについても観察し、作品の見方がまた広がりました。

猿の見方



上野ならではのこのイベント。来年はどんな動物をテーマにするか、鋭意計画中です。
どうぞお楽しみに。

 

 

カテゴリ:教育普及催し物

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posted by 長谷川暢子(教育講座室) at 2013年05月23日 (木)

 

ちびっこ探検隊がいく!

今年のゴールデンウィークはお天気に恵まれ、上野公園もトーハクもにぎやかでした。
そんなトーハクで、ちびっこ探検隊が活躍していたのをご存知でしょうか?
探検隊は5月3日と4日、東洋館に集結しました。
その任務は、東洋館にいる動物を探すこと。今日は彼らの活躍をご紹介します。

探検隊とは、子どもツアー「トーハク探検 アジアの動物??編」に参加した子どもたち。
隊員たちは4歳から11歳。東洋館エントランスからはりきって出発です。

作品にかじりつくように見ている隊員たち
ピチャヴァイ(礼拝用掛布)クリシュナ図金更紗 インド・マチリパトナム 18世紀 (2013年6月9日(日)まで東洋館13室で展示)
作品にかじりつくように見ている隊員たち


まずはクリシュナという神様の描かれた、インドの大きな布のなかに動物を発見!
さかな! ワニ! ウシ! カメ! 孔雀!
みつけた動物の名前を言いながら隊員たちは満足気。
トーハクの動物は、作品をじっくり見ないと見つからなかったり、実は神様だったりするので注意深く探さなければいけないことも実感し、早速ひとつめのミッションへ。

「東洋館の地下1階にいるゾウを全て探せ!」制限時間は5分。
隊員たちは東洋館地下1階をめぐり、ゾウやゾウらしきものを捜索してきました。
その後それぞれどんなものなのか、アフリカゾウでなくアジアゾウの特徴を持っているゾウが表されていることなどを学びます。
そしてほかの動物の写真をみせ、「この動物があらわされた作品みつけた?」と聞くと「あれかな?」「あれだ!」と隊員みんなで探し、ヘビやサルの神様じっくり見て、しっかり覚えました。

「見つけたよ!でも体が人間だった」「あれはゾウ?」 報告や質問が多く飛び交うにぎやかなワークショップでした。
「見つけたよ!でも体が人間だった」「あれはゾウ?」 報告や質問が多く飛び交うにぎやかなワークショップでした。

好奇心旺盛なちびっこ探検隊はヘビの神様ナーガもじっくり鑑賞しました。
好奇心旺盛なちびっこ探検隊はヘビの神様ナーガもじっくり鑑賞しました。

つづいてエレベーターで2階へ。
次のミッションは上級編「写真の動物を探せ!」制限時間は10分。
隊員には西アジアやエジプト、西域などの展示のなかにひそむ15の動物の写真を渡し、その作品を探してもらいました。
最後にみんなで確認し、解説を聞きます。
自分では見つけられたかったものを見つけたら「あ~、これかぁ」とメモをする隊員たち。
質問も飛び交います。最後まで気合も集中力も元気も十分。

捜索中の隊員、解説を聞く隊員。真剣です。
捜索中の隊員、解説を聞く隊員。真剣です。

ここで今日の探検は終了! 
・・・のはずでしたが、東洋館のエントランスへ帰る途中に1室の中国の彫刻でも足を止め動物を探す隊員たち。
最後には、動物の頭を持つ神様がいるなんて知らなかった、同じ石でできた像でも色が違うという言葉から、ちびっこ探検隊がいろんな発見をしてきたことがわかりました。
疲れたけど楽しかった、もっと見たいという言葉も。博物館を楽しんでくれたようです。
そしていつのまにか隊員同士、小さな隊員をサポートしたり、友達になったりしていました。
こんな成長や出会いもワークショップならでは、なのかもしれません。

博物館にはまだまだたくさんの発見があります。
次回はどんな探検をしましょうか。元気な隊員たちの参加をお待ちしています。

カテゴリ:教育普及

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年05月07日 (火)

 

ワークショップ「円空にちかづく」を開催しました!

特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」(~4月7日(日)、本館特別5室)もにぎわう暖かな日曜日、ワークショップ「円空にちかづく」をこども向け、おとな向けの計2回開催しました。

円空仏には、その前に立つ者を微笑ませる独特の雰囲気がある一方、彫るときのスピード感、力強さも感じられます。これをつくった円空への興味は尽きません。
円空と同じ体験をすれば、円空にちかづき、展覧会をより深く楽しんでいただけるはず。
円空と同じ体験… それは木を割ることです。

はじめて見る鑿(のみ)に興味深々
はじめて見る鑿(のみ)に興味深々

仏師・明珍素也さんのお話を聞き、デモンストレーションを見ていると、なんだかできそうな気がしてきたようです。早速挑戦!
直径12cm、高さ20cmほどの杉の材を、鑿(のみ)、楔(くさび)、かなづちで割ります。
慣れない手つきで鑿とかなづちを手に取り、木を打つ音が響きます。
でもすぐに、「あれっ」「できない!」という声がして木を打つ音が止まってしまいました。
一瞬心配しましたが大丈夫。明珍さんのアドバイスの声のあと、木を打つ音が聞こえてきました。

木を割る体験。おとなも子どもも真剣そのもの
木を割る体験。おとなも子どもも真剣そのもの

気づくと初対面の参加者同士が協力し合い、笑い声まで聞こえてきます。
「割れた!」という明るい声、「あと少し!」という励ましの声が増え、木を打つ音が完全に消えたとき、自然と拍手がおこりました。

割れた断面。そっくりな部分を円空仏に発見!
割れた断面。そっくりな部分を円空仏に発見!
右:三十三観音立像(部分)  円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵

続いて円空仏のかたちにした小さな材に顔を彫ってみます。
こちらも簡単にはいかなかったようですが、できた仏像の笑顔と同じくらい、参加者の皆さんもいい笑顔でした。


みんなが小刀で彫った顔。つくった人の性格があらわれているような…

割った木の断面や彫った顔を見せ合いながら、「コツをつかむまでは円空も大変だったでしょうね」「年をとっても円空は自分で割ったのかな」「これだけ思い切りよく鑿をいれられる円空は細かいことにはこだわらない性格だったのかも」「できたての円空仏ってきっといい木の香りがしたんでしょうね」などと会話がはずみます。

こどもの回はお天気がよかったので、木を見に庭園へいきました。
「台風などで枝が折れてしまうと傷ができるよね。その傷を治そうとしてできるかさぶたが、この丸いところなんだよ」という説明に「大きい円空の背中!」という声が。
そう、展示されている仁王像にもこうした跡がありましたよね。


庭園の木と仁王像の背中
右:金剛力士(仁王)立像 吽形 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵

いろいろな木を見たあと、庭園で解散。みなさんもう一度、円空仏を見にいくと本館へ向かいました。

円空や円空仏にまつわる想像が膨らんだり、会話がはずんだりするのは、円空のすがた、見たもの、感じたものに一歩ちかづいた証拠。
きっと今までよりも円空仏を楽しんでいただけますよね。
もう少しすると、庭園には桜が咲き誇ります。
季節の移ろいを感じれば、また違う感覚で円空仏を見てもらえるのかもしれません。
ワークショップで感じたことが、円空にちかづき、仏像を楽しむきっかけになりますように。願いをこめて見送りました。

カテゴリ:教育普及2013年度の特別展

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年03月12日 (火)

 

円空にちかづく 木の音、森の声

特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」(~4月7日(日)、本館特別5室)、ご覧いただきましたか?

100体の円空仏が飛騨の森にいるかのような会場に、私はいつも癒されます。
「円空の仏像は仏像としてみるというよりそのかたちをみて楽しめるのでしょうね」
展覧会を担当した研究員の言葉通り、円空の仏像の前に立っても難しいことを考えたり、勉強しているという気分になったりはしません。
むしろ円空その人への関心がわいてきます。

全国をまわり、出会った人々のために仏像を作った円空。木という素材を大切にした円空。
円空にちかづくために、円空が感じ魅せられた木の力をテーマにイベントが開催されます。
それは3月9日(土)11時30分から平成館ラウンジで行われる「芸大生の打楽器コンサート 木の音、森の声」(申込不要)。

円空が歩いた飛騨の山にはどんな音があったと思いますか。その音に円空は何を感じたのでしょうか。
風で木がゆれる音、キツツキが木をつつく音、きこりが木を打つ音・・・
あるいは円空が仏像を造るときには木を割り、叩き、彫る音がしたはずです。
響く円空をとりまく木の音は、どれも円空仏のように素朴で温かい音のような気がします。
その音を聴いた円空は、それを木霊の響きのように感じたのかもしれません。

今回お聴きいただく打楽器の調べも同じように温かみを感じさせてくれます。
たとえば今回演奏する《木片のための音楽》ではクラベスという拍子木のような木の棒を5人の奏者が打ち鳴らします。
皆さんにはどのように聞こえるでしょうか。


ただいま練習中。ご期待ください。

なお、円空と同時代に活躍したバッハやダカンの曲も演奏します。
皆さんも、上野の山で木の音、森の声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

カテゴリ:教育普及催し物2013年度の特別展

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年03月08日 (金)